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両手の指は、黄金の山。

と、ミサオさん(93)は言った
(先日の『プロフェッショナル 仕事の流儀/
餅ばあちゃんの物語〜菓子職人・桑田ミサオ〜)。

ミサオさんの両手が、米粉にこし餡を混ぜた母譲りの餅を
量らずとも2個でちょうど100gになるように形にし、
笹で上手にくるむと、
「桑田さんの笹餅/170円(税別)」として
地元スーパーの店頭で、電車内で売りに出される。
スーパーでは売り切れ必至、
電車内で乗客がそれだけを待つ笹餅を、
真夜中に起きて、つくり続け
著書「おかげさまで、注文の多い笹餅屋です」の如くなった。


ミサオさんが笹餅づくりを始めたのは、
60歳で保育所の用務員を定年退職してからだ。
たまたま老人ホームの慰問活動でつくった笹餅に二人の女性が涙したのを
きっかけに、もっと美味しい笹餅をつくろうと 努力し始める。
そして販売をすすめる周囲の声におされて、
許可を得る目的で、何と75歳で起業したのだ。

冒頭の言葉は「10本の指があれば、お金に不自由しない」
という母の口癖から来るが、
世の中でこんな台詞を口にできるのは、
芸術家とミサオさんだけではないか。
つまりもう、その笹餅は芸術なのでは、と思うのだ。
逆に言えば、芸術家でなくとも芸術を残せる。

「もっともっと美味しいって言われるよう、研究しなくちゃ」。

これが、現在の93歳の意気込みなのである。
もう、唸るしかない。
いや、唸ってばかりいられない。

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