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「ご迷惑、ご心配をおかけしておりますことを」という常套句に逃げる謝罪。

■「迷惑」と「心配」という血の通わない言い方

「お客様をはじめステークホルダーの皆様に
ご迷惑、ご心配をおかけしておりますことを、
深くお詫び申し上げます」。

日野自動車、ダイハツ工業、豊田自動織機と、
グループ内での相次ぐ不正発覚を受けて、
トヨタ自動車株式会社の豊田章男会長が謝罪会見で述べた言葉だ。

これは政治家の謝罪会見にも全く同じことが言えるのだが、
通り一遍の慣用句でおざなりに伝えた誠意のない言い回しだった。
          

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「迷惑」とは「その人のしたことが元になって、相手や回りの人がとばっちりを受けたり、嫌な思いをしたりすること」
(『新明解国語辞典』〈第三版〉)とあり、間接的な意味合いが感じられる。
しかしダイハツ工業は新車の安全性能を確認する認証試験での不正であり、運転者の安全に直接影響を与える。その他2社の不正も、
新車の選択基準に関わる数値で、とても「嫌な思い」では済まされない。

「心配」に至っては「先行きによくない結果が起こった時のことを考え、あれこれ心を悩ます」
(同辞典)ことで、果たしてトヨタの車を買った人たちは、
自身の安全を考える前にトヨタの先きを心配するだろうかと
強く疑問に思う。

あるいは、
ドライバーとして将来的に事故を引き起こす心配をする事態を言うのなら、
車をつくった側のトップがこのように安易に口走ってよいのかと思うし、
仮に口走るのなら
「そんな心配はいらない」と説明する方が先ではないかと思うのだ。

■「迷惑」と「心配」という国民を小馬鹿にした言い方

政治家も
「ご迷惑、ご心配をおかけしておりますこと」
と言う謝罪は日常茶飯事だが、
全く同じ構造が成り立つ。

政治活動に使っていない政策活動費を
何と無記載で、
しかも使途不明として
懐に入れている悪行に、
国民は「迷惑」以上に「怒り」を覚えている。

なぜ謝罪の言葉には、

「お怒りのことと存じますが」

という言葉がないのだろうか。

「心配」については、よくも言えたものだと思う。


しかしメディアはこれについて何も言わない。
他ならぬ自分たちがその言い回しを使う
張本人だからだ。







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