見出し画像

シリーズ「将来なんの役に立つの?」問題を解決しよう(4)

4回目です。
引き続き、

「この勉強、将来何の役に立つの?」

という中二の疑問に対する完全回答を探って行きます。
*****

中2に理科の授業をしていると、たまに虚しくなったりする。

例えば電流。

「ボルトとかアンペアとかオームとか、ワシらの人生に何の関係がおまんねん?」

という顔で超つまらなさそうに授業を聞いている生徒が一定数いる。

だからといって、

「学ぶの嫌なら電気使うなよ!」

と吠えるのは三流講師で、身の回りのものに電気が使われていることと、電気を学ばなければならないことには因果関係がない。
車の仕組みを知らなくても車は走る。
牛の育て方を知らなくても牛肉は食べられる。

だいたい最近は先回りして

「ええと、先に言うておきますが、電流について学んでも将来なんの役にも立ちませんので。そこにイライラしても無駄ですよ。ナンプレ的なそういうゲームだと思って楽しもうね」

とか言うたりしてる。
普通に生きてて、電化製品の抵抗が何Ωかを計算しないといけないことなど無い。
無理に「役立つ」と言いくるめるよりかは、誠実な態度だとは思う。

ただ、これで問題が解決するわけではない。

単なるゲームだ、と割り切れたとしても、次に、
「では、なぜその電流とか電圧とかいうゲームに興じないといけないのか?」という疑問が生じてくる。

そのもやもやまで解消しないとプロとは言えない。

しかし、なぜ数ある自然現象から、わざわざ電流の話を取り上げて学ぶのか。

それはたぶん、ゴールから逆算しないと実感出来ない種類のものだと思う。

そこに教育を提供する側と、教育を受ける側の大きなギャップがある。

例えば理科に関して、物理で言うなら
古典力学
熱力学

電磁気学
原子物理
こう言うのが高校物理の範囲で
さらに大学に入れば
流体力学や量子力学という先へと進める。

物理学全体を見渡せば、中学の教科書に
力、光、音、電流、磁界、運動、エネルギー
このようなジャンルを選んで学ばせるのは当たり前と言えば当たり前すぎることである。

スポーツでいうウォーミングアップであるので、
「なぜこんなことをさせられるの?」
という問いには、
「これからスポーツするから怪我しないようにorいいプレイができるように」
と答えることもできよう。

しかし、中ニにはおそらくピンとこない。
サッカーであれば、サッカーが走り回るスポーツであるので、その前に体を温めておく価値を感じられるが、
物理学の全体像など想像できない中学生の前に
はい、オームの法則です、と
V=IR
を置いても、それに価値を感じろという方が無理がある。

自分がここ数年採用しているのは
「お試しセット」
という言い方で、

「中学理科というのはお試しセットなのです。いろんな商品、試供品が詰め合わせで入ってます。物理、化学、生物、地学、それぞれ味見してください、ということ。少し食べて、おいしければまた買ってね、と。不味ければもうたべなくていいです、と。これ面白いな、と気に入ったら高校、大学と続けて学んでいけばいい。どんどん深めていけます。つまらない、お口にあわないならそのジャンルはもう高校大学では学ばなくていいです。深く学ぶと、どれもめちゃくちゃ面白いものなので、中学生にいちお紹介してるだけだから。紹介の挨拶なので、あんま嫌ってやるのもかわいそうだよ。嫌いなら嫌いで適当にあしらって、そっと閉じる、でいいでしょ」

こんな感じで伝える。

なぜ学ぶの?将来役立つの?

単なる紹介・予告編・味見なので、理由はない

というスタンス

これは結構大切だと感じていて、
今目の前にある教科書が、ど偉いご本尊で光り輝いている、と感じると反抗的になってしまう。
そうじゃなく、いま向かい合っているこれは、学問の本体ではなく試供品、サンプルでしかない、という認識は、学びにスムーズに入っていくには有効かと思える。

予告編すらいらない、余計なお世話、というのも最後の反論としてあるかもしれないが、学問の面白さを中学生に伝える(伝えようと試みる)ことは放棄してはいけないと感じる。

あとは、その提供の仕方。
教師がどれだけその試供品を魅力的に提供するのか。=面白い授業ができるのか。

そこが下手だから、みんな電流嫌いになるんだよ。
自分でも、まだまだ課題ではある。
電流の授業面白くするのはどうしたらいいものか。

スタンガンを持ち込んで自分に当てて気絶とかしてみるかな。
即刻逮捕&ニュースだな笑

「塾講師、行きすぎた授業で逮捕」
「教室内でスタンガン使用」
「『電流の面白さを伝えたかった』などと供述」

自分が生徒なら大爆笑だけど、人生かけてすることじゃないな。

[2020.01.22 facebookから]

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?