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【連作短歌】バナナワニにうってつけの日

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百日後死ぬわけがない鰐たちの記録代わりに記憶をたどる

齢五十超えた人魚が垢擦りを終えるのを待つ低い水位で

童話には雄の人魚は出てこないよほど都合が悪いのですか

ワニ捕獲器具いつ使うか聞けぬまま控え室に引っ込む飼育員

もう直すことができない遊戯場の鰐を忍んでシートをかける

お土産屋バナナとワニが競ってるどちらが園の看板なのか

カバはうがい薬ライオン歯磨き粉 ワニの歯石を取ってあげたい

「古代から鰐はいたんだ」待ちかねていた感嘆か語らぬ化石

人は死して名を残(……残す?)名も知らぬ鰐の革など要りませんので

平らげるバナナフィッシュを数えては日ごと愁いるバナナワニの目

コロソマが貪欲に荒く吐く気泡 やつらバナナフィッシュにはならない

伊豆急の線路園路の横走り鰐の午睡はしばし途切れる

すれ違うから燃えるのか 噛み合わぬ吻で接吻する鰐夫妻

わたくしは何者だろう混血の鰐は応えずまばたき返す

後ろ足四本指ってやっと知る 見上げなければ見落としていた

千成の芭蕉 フェイジョア カカオ豆 もぎ取れずともこころはゆたか

温室に第何号って振ってある 順路地図にはない生真面目さ

睡蓮の池に浸かって手入れする庭師の背には鰐描かれず

完璧な休日費え パフェ食べて見た大島の写真は消えた

カガミミテ/シー・モア・グラース、いつ死ぬかなんて夢にもみてはいけない