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映画『ドリアン・グレイ/美しき肖像』(1970年)のザックリとしたあらすじと見どころ

映画タイトル:ドリアン・グレイ/美しき肖像
原題:The Secret of Dorian Gray
製作年:1970年 イギリス・イタリア・西ドイツ
監督:マッシモ・ダラマーノ

映画『ドリアン・グレイ/美しき肖像』は、

オスカー・ワイルドの長編小説『ドリアン・グレイの肖像』を、舞台を1970年代のロンドンに置き換えた映画化作品です。現在までに3度の映画化と舞台やドラマで多くの俳優が演じてきたドリアン・グレイ。当時26歳のヘルムート・バーガーがまさに当たり役という1本です。

キャスト

・ヘルムート・バーガー(ドリアン・グレイ)
美青年

・リチャード・トッド(バジル・ホールウォード)
画家 ドリアンの肖像画を描く

・ハーバート・ロム(ヘンリー・ウォットン)
画廊経営

・マリー・リシュダール(シビル・ヴェイン)
女優

・マーガレット・リー(グェンドリン・ウォットン)
ヘンリーの妹

・マリア・ローム(アリス・キャンベル)
ドリアンの学友アランの妻

・ベリル・カニンガム(アドリアンヌ)
アフリカ系の女性写真家

映画『ドリアン・グレイ/美しき肖像』の見どころと感想

友人の画家バジルに肖像画を描いてもらった美青年ドリアン。その美しさは画廊経営のヘンリーにも絶賛され、ドリアン自身もこのまま歳をとりたくない、肖像画のほうが老いを引き受けてくれたらいいのにー、と考えるようになります。

ヘンリーの勧めで自由奔放に生き、女性とも男性とも関係をもつドリアン。
女優のシビルと婚約したものの、恋によって演技に身が入らなくなったシビルをドリアンは見限り、ショックを受けたシビルは自殺してしまいます。

そんなある日、あの肖像画が醜く老い始めていることに気づくドリアン。たまらず布を被せ屋根裏部屋に隠しますが、その後も怖いもの見たさで肖像画を確認します。そこには深いシワや大きなシミが刻まれた醜い老人姿がー。

それから20年、一向に老けないドリアンを不信に思ったバジルはドリアンを訪ねます。そこで肖像画を見せられ驚くバジル。2人は口論となりー。

評)ヘルムート・バーガーの退廃美に見る「老い」に対する不安と恐怖と笑い

原作者 オスカー・ワイルド(1854年-1900年)の偶像的存在のドリアン・グレイ。若さと外見の美しさに固執し、そのためなら悪魔に魂を売る、というドリアン。オスカー・ワイルドはそんなドリアンを哀れな存在として描いたのでしょうか。

「老い」の問題は今も昔も厄介なもの。いくら「年相応が一番」といっても、ふと鏡に映る自分の姿に言いようのない不安と恐怖を感じてしまう。こんな自分は自分じゃない、とスマホの自撮り画像のシミを消したり、肌ツヤを良くしたりー。

やってることはドリアンとそう変わりはないんですよね、現代の私たちも。

問題は若さを保って何をするかー。
ドリアン・グレイは男とも女ともまぐわいます。その多彩なプレイはヘルムート・バーガーの美しさを超えて笑いを誘うほど。 学友の妻、アリスの前に全裸で登場したドリアンに「正気なの!?」というアリス。このシーンには爆笑。 若さを保ってやることって......。

一方、ドリアンを散々そそのかしてきたヘンリーは順当に老け、ゲスいオヤジになっていく。この描き方も容赦ない。

老いってそんなに「罪」ですか?

とにかくヘルムート・バーガーが破壊的に美しい。ルキノ・ヴィスコンティ監督(1906年-1976年)の公私にわたるパートナーだったバーガーは、ヴィスコンティの死去後キャリアは低迷。この映画の頃(『地獄に堕ちた勇者ども』(1969年)『ルートヴィヒ』(1972年))が美しさもピークです。

これだけ美しかったら、そりゃ朽ちていくことが怖いだろうな、あれこれやってみたくなるだろうな、という納得感しかありません。

映画『ドリアン・グレイ/美しき肖像』、お勧めです。

追記)2023年5月 ヘルムート・バーガーさん死去 78歳。ご冥福をお祈りいたします。

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