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自分の感情を正しく理解するための3つの方法_ハーバードビジネスレビューより

 HBR勉強会では、ビジネス誌”ハーバードビジネスレビュー”の特集を取り上げて、毎月勉強会を開催しています。このnoteでは、2022年11月号に掲載された「自分の感情を正しく理解するための3つの方法」という論文を紹介します。

 自分の感情は自分が一番わかっているようでいて、案外モヤモヤして言葉にすることが難しいことも多いですよね。心理学では、自分の感情に名前をつけることをラベリングと呼ぶそうです。

 ニーナは会議に出ている。ジャレドが腹立たしい発言を繰り返している。ニーナの発言を何度も遮るだけでなく、彼女が担当したプロジェクトの失敗を他の参加者の前であげつらう。本当に頭に来る。

「自分の感情を正しく理解するための3つの方法」より

 仕事をしているとそんなこともあるよね、と共感する人もいるかもしれません。この時にニーナが感じたのは「怒り」ですが、怒りという一言で片付けず、もっと感情を丁寧に見ていくと、後ろにもっと繊細な思いが隠れていることがあります。
 
 もしかしたら、プロジェクトが失敗した事が悲しくて、悔しくて腹立たしいのかもしれません。自分のキャリアが傷つくかもしれないという、将来に対する不安の感情が立ちこめているかもしれません。あるいは、自分で自分を肯定してあげられない絶望感を感じているかもしれません。

 こうした繊細な感情を全部丸めて「怒り」という一言で片付けてしまうと、時に対処を間違えることがあります。あるいは、感情を見ないフリをして何もせずに放置して長く引きずったり、時には体に不調が現れる場合もあります。筆者によると、そんな時に自分の感情をもっと細かい目の網で丁寧にすくいあげてあげることが、ラクに生きる上で助けになるのです。

 論文では、自分の感情を正しく理解するために、具体的に3つの方法が紹介されています。

1.感情を表現するボキャブラリーを増やす

 論文の中で紹介されている「感情を表現する言葉のリスト」は、ある感情に紐づく、解像度の高い別の言葉を挙げたものです。

「自分の感情を正しく理解するための3つの方法」より

この表のように、意識の表面に浮上した感情を手がかりに、自分の気持ちをより正確に表している言葉を探っていきます。言葉の解像度を上げることで、自分自身の感情をより丁寧に理解してあげることができます。

2.どれぐらい強い感情なのかを考える

 痛みの強さは他の人に伝わらないので、医療の世界では「耐えきれない痛みを10として、今の痛みを1〜10で表すといくつ位ですか?」と患者に聞く事があるそうです。感情も同じです。「怒り」や「ストレス」がどれくらいのレベルかを自分に問いかけることによって、その感情への対処が急を要するのか、放っておいては危険なレベルのものなのか、過去の自分の経験と比べてどれほどのストレスなのか、判断が付きやすくなることがあります。

3.感情の名前を書き出す

 頭の中で考えるだけではなく、書き出してみることも効果的です。書くという作業を通じて、自分の感情を新たな視点で捉えることができるのだそうです。
 辛い時や、嬉しい時に、日記をつける人も多いですよね。私自身も振り返ると、書くことによって(ある程度)ストレスとうまく対処したり、客観的に自分のモヤモヤを見つめ直す事ができた経験があります。

 最初に登場したニーナの場合、表面に現れた「怒り」に任せて、ジャレドを攻撃したり、同僚にジャレドがいかにひどいかを力説したりすることは、多くの場合、問題を大きくしたり、別の問題を生むだけで、彼女の状況を改善しません。頭の中でジャレドが嫌味を言うシーンを何度も映画のように再生して、怒りの復習をしていると、その「嫌なこと」に彼女の大切なエネルギーを割かれてしまいます

 それよりも、自分の「怒り」の裏にもし「キャリアに対する不安」があることに気づくことができれば、自分のキャリアにとってプラスになる経験が積める部署に移動するなど、前に進む上でより具体的な対応が取れるでしょう。

 もちろん自分の感情だけではなく、他の人の感情を解像度高く汲み取ることも重要です。マネジメントの観点からは、怒っている人の裏にある不安や不満を理解し、対処する事は欠かせません。仕事の場ではなく、家族や地域での人間関係をうまく築くためにも、助けになるでしょう。
 
 ところで、人の力を借りて、自分の感情を言語化していく手法として、コーチングがあります。コーチングは、対話を通じてコーチが色々な問いかけやフィードバックをすることで、相談者本人の中にある言葉や考えを引き出していくものです。相談者は、自分では考えていなかったような方向から投げかけられるコーチの問いかけに答える過程で、自分の思いを整理し、言語化し、自分でも理解していなかった思いに気づいたり、思考の癖を自覚することができます。

 一説によると、日本のコーチング市場は2015年には50億円程度だったのに対し、2019年には300億円と、4年間で6倍の成長を遂げているらしいです。
また、アメリカのコーチング市場は更に大きく、なんと日本の50倍の約150億ドル(約1兆6千億円)なんだとか。

 世の中の流れが早く、成功のロールモデルが定義できない現在では、多くの人が今までよりも自分の感情に向き合って、行動する必要性を感じているのかもしれません。

 自分の感情は、誰にとっても一生付き合っていかなくてはいけないものです。アンガーマネジメントで失敗して立場を失ったり、落ち込みから立ち直れずにムダな時間を過ごしてしまったり、自分の感情とうまく付き合えず、本来持っているはずの自分の可能性を発揮できないリスクは誰にでもあります。
 
 この論文が掲載されているハーバードビジネスレビューは「これからの経営者の条件」というテーマが特集の号でした。この論文は特集の中には入っていませんが、経営者も1人の人間です。この号に論文が掲載されたということは、経営を語る上で、人としてのベーシックな部分について、みんなが自分の感情をきちんと理解する必要があるということを意味しているのかもしれません。

 ハーバードビジネスレビュー勉強会(HBR勉強会)は、毎月第2土曜日にZoomを使用したオンラインで開催しています。事前準備ゼロで参加できるので、お気軽にお申し込み下さい。

詳細はリンク先のPeatixからご確認ください。皆様のご参加をおまちしています。
今回紹介した論文を読みたい方はこちらからどうぞ(Amazonリンクへ飛びます)


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