見出し画像

DXとは?DX(デジタルトランスフォーメーション)を誤魔化さずにわかりやすく説明する。DXとは「アプローチ」のこと。

ハンコを廃止して電子署名にしました」という話。これってDXでしょうか?

人によってはDXと言うかもしれないし、別の人はそうじゃないというかもしれないです。

ふとそんなこと思ったので、DXに関わる人として「DXとは何か?」 をまとめてみました。説明する以上はなるべく誤魔化さずに、わかりやすく。

***

デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)略して、DX です。 DT ではなく DX と言います。Transformation を X と略すのは Trans と類義語の Cross = X が元なのだそうです。

***

最初に言いたい「DXではないもの」は何か?

DXを考える前に、まず「DXではないもの」を考えてみるのが理解しやすいと思います。

DXという言葉が出てくる以前の一般的な「IT化」と何が違うの?

今までIT化と言われるものは、いわゆる OA(Office Automation)を指すことがほとんです。簡単に言うと人が今まで紙と鉛筆でやってきたことを「デジタル技術(IT/システム/サービス/ソフトウェア/Web/アプリ…)」で置き換えて自動化や効率化する、オフィス作業のオートメーション化です。紙と鉛筆がかしこくなることを指す言葉です。どれだけ高度な技術で紙と鉛筆を作り直したところで本質的には何も変わっていないというのがポイントです。これがDXではないものです。

紙の書類に鉛筆で書いてたものがパソコンにキーボードで書くようになって誤字や計算ミスが減ったところで本質的に変化はないです。

それではDX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か?

DXではないものがわかったところで、まずは世の中のDXの定義から。

ほとんどが他資料からのコピペなので読み飛ばしてもよいです!・・・時間あったら「エリック・ストルターマン」の定義だけでも見てください。

---IPAの文章から読み解く定義

色々書いていますが要約すると「デジタル技術を活用して新たなビジネス・モデルを創出・柔軟に改変すること」と間接的に言ってます。

---IDC Japan による定義

「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンス(経験、体験)の変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」

---エリック・ストルターマンによる定義

DXという言葉を初めて使った(らしい)大学教授のエリック・ストルターマンの定義です。 「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させ」、以下の特徴があると言われています。
・ デジタルトランスフォーメーションにより情報技術と現実が徐々に融合して結びついていく変化が起こる。
・ デジタルオブジェクトが物理的現実の基本的な素材になる。
・ 固有の課題として、今日の情報システム研究者が、より本質的な情報技術研究のためのアプローチ、方法、技術を開発する必要がある。
また他の文章では「それらを個別に分析したり、還元的な方法で分析することは不可能である」とも言われています。

***

簡潔に「DXとは何か?」を説明する

急いでいる方はここだけ読んでください。シンプルに言うとこれです。

人とデジタルの両方が連携することで成り立つビジネスやサービスを行うこと/創り出すことがDX

少し回りくどく言うとこんなかんじです。
・ デジタル技術を使う事。 ソフトウェアやインターネットやデータを活用すること。
・ デジタルとリアルの両面で変化を起こすこと。 デジタルとリアルの両方の連携を前提にすること
・これらを使ってビジネスを行う or 生活を良くすること。

大事なポイントは、作られた結果の「サービス」「アプリ」「システム」をDXと言うのではなく、それを「行うこと」「創り出すこと」つまり「アプローチ」や「プロセス」のことをDXと言います。

DXの事例として「Amazon」がよくあげられますが、AmazonのWebサイトがDXなのではなく、AmazonのアプローチがDXです。

人とデジタルが連携するサービスって…そんなの当たり前では?

例えば、「電話注文のお店がインターネットで注文をとるようにしました」これは最初に説明したいわゆる OA です。

例えば、Amazonのように「インターネットで注文をうけて販売するよう設計されたサービス」これが DX です。

結果的にはほとんど同じECサービスが出来てしまうのですが、アプローチがまったく異なります。

前者の例は、今までやっていたことを別の道具に置き換えただけなので本質的に何も変わっていません。いわゆるOAです。後者のAmazonの例では、インターネットを使う事を前提としてサービスの設計がされています。

定義のところで話したように、デジタルとリアルの両方を前提としたビジネスを行う/作るアプローチのことを DX と言ってます。リアルの世界の何かをデジタルに置き換えるのではなく、両方が最初から存在している世界を作ろうとするアプローチがDXです。

ではDXによって何が変わるか?なぜみんな騒いでいるか?

DXと言いながら出来上がるサービスはいたって普通のWebサービスやスマホアプリやIoTデバイスだったりします。 ではDXによって何が変わってくるのでしょうか? なぜみんなそんなに騒いでいるのでしょうか。

安っぽく聞こえてしまいますが、アジャイルやデザイン思考を使おう、組織改革をするのが大事、ということです。ただこれは単なるバズワードではありません。

少し細かく説明します。

DXでは、トラディショナルな「要件定義」「分析」「設計」という(ウォーターフォール的な)手法はまったく有効ではありません。

IT化でこの工程作業が有効だったのは、業務のエキスパートであるユーザーが今やっている業務について聞き出して仕組みにすることで「今持っている課題≒今やっている作業」を効率化していたからです。

もちろん、システム化にともなって単なる道具のリプレースではなく、ビジネスフローなども変わることも多々ありました。ただそれは現実うまく行かないことも多かったです。それはシステム化・デジタル化した後の変化した世界をユーザーが想像できず、今の課題だけを解決対象にしてしまったからです。本来DX的アプローチをとらないといけなかったのにOAで済まそうとしたということです。

DX はリアルとデジタルが前提になっているものです。

これから作ろうとしているものは当然まだ存在しないものです。当然ユーザーもまだその答えを知らない状態です。 なのでユーザーに欲しいシステムを聞いても答えは持っていません(悪い場合は知っているふりをして…)。 そこで「デザイン思考」のようなアプローチを使い「表面的な課題」ではなくユーザーを巻き込んで「本質的な課題」を見つけ出し、デジタル前提で新しいソリューションを考えだし、それが本当に自分たちに適切なものかをアジャイル(というよりリーン)に試行錯誤を繰り返す必要性が出てきます。

DXとはある種のアプローチであり、それによりシステムを作る方法も大きな変化が必要になってきます。

結果的に作られるものは単なるWebサイトかもしれませんが、それは、後から付け足しで何となく作ってみましたというWebサイトではなく、ビジネスになくてはならないWebサイトになります

おわりに

なんとなくDXの輪郭がつかめてきたでしょうか。

最後に、最初の問題提議について。

「ハンコを廃止して電子署名にしました」という話。これってDXでしょうか?

DXとはアプローチなので、結果だけ見てこれに YES/NO を言うのは難しいです。

けれど、ハンコを電子署名にしただけなら単なる道具の置き換えです。ハンコをやめてサインにしても実質何も変わらないですよね…それと同じで ハンコ → サイン → 電子署名に置き換えていっても実は何も変わってないです。個人を証明するものが「紙に押されたハンコ」しかなかった時代の手順をベースに、ハンコという道具を電子証明にしても、本質的には何も変わらずそれはDXとは言いづらいと思います。

「個人を証明して何がしたかったのか」「なぜ目の前に本人がいてもハンコという証明が必要だったのか」「なぜ複数人の承認を紙に表現しなければいけなかったのか」……そもそも何が課題だったのかに立ち戻って考えて、今の技術をベースに考えなおしてみたらどうでしょう。(結果的に電子署名になるのかもしれませんが)そもそも「申請書」みたいな概念から外してしまえばその上で必要だったハンコもサインも電子署名も要らなくなるかもしれませんよね。

DXというのはそういう破壊的なイノベーションを生み出す可能性もあります。

おわりに…その2 … とはいえOAとDXの境界は紙一重

上でいろいろ書きましたが、どうしても1つだけ言いたいこと。

ものすごい量はいつか質の変化に変わっていきます。

「紙とハンコ」が「スプレッドシートと電子署名」になっても本質的な変化はないです。ただ、それでも、1日10枚しか処理できなかったものが、1日10000枚できるようになれば(単なる効率化とは言え)それはすごい変化です。そこから本質的な変化が生まれてきます。

単なるバズワードであっても、バズる意味はあります。言葉の定義なんてなんでもいい、と言う人もいますが、ちゃんと言葉の意味やバズった意味を考えるもの楽しいものなのでまじめに自分なりでも「DX」考えてみるのもいかがでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?