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2月イベント『Happy Valentine ! 2015』

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2月1日より14日までの間、バレンタインに告白をしようか迷ってる人を応援するnoteを募集いたします。#ハピバレ2015
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#小説

沈丁花

沈丁花

 あれは。

 香田は買い物客でごった返す祝日の大型ショッピングモールに来ていた。姉がバレンタインガールズパーティをやるとかで、その材料を買い込むのに荷物持ち要員として召喚されたのだ。どうせなんのおすそ分けも感謝もしないくせに、つくづく姉というのは弟を小間使いか何かだと思っているらしい。
 赤や金のハートが踊り、製菓材料やキットがところ狭しと並べられたコーナーは、女性客で埋め尽くされていた。姉

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バレンタイン前日

私には娘がいる。

もうすぐ高2だ。

妻は現在、海外出張している。

妻も娘もとても可愛い。

二人とも多少、元気が良すぎるが…

その二人がバレンタインが近づくにつれ、様子がおかしくなっていた。

娘はまるでアスリートのような顔になり、妻は電話を掛ける度にテンションが上がっていった。

異様な空気に我が家は包まれていた。

私は意を決して娘に聞いてみる。

「明日はバレンタインだよね?誰かに渡

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【小説】シェッズ先生の酔狂なバレンタイン

【小説】シェッズ先生の酔狂なバレンタイン

 バレンタインデー。男女が愛を告白し、贈り物をする日。近年では、女性が意中の男性にチョコレートを贈るスタイルが流行していた。

 煉瓦を壁に敷き詰めたビルの二階の事務所に一つだけある窓から、下に広がる大通りを行き交う人々が見える。この中のいったい何人が、今日という日に一世一代の大事を成し遂げるのだろうか。

「先生。リサちゃん、上手くいきましたかね」

 田中は自分の師匠であり雇い主の探偵、シェッ

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