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乳頭温泉郷 湯めぐり旅 in秋田(6)

木の風呂を堪能し、石の風呂は覗くだけにして、少し休憩をした。実は頭が痛かった。睡眠不足で長距離を移動し急に熱い湯に入ったからだろうか。自販機で普段はまず飲まないオロナミンCを選ぶ。染みた。休憩して少し元気を取り戻し、混浴露天を見に行くことにした。 混浴露天は、建物を出て少し歩いた森の中にある。出入口で、先ほど廊下ですれ違ったご高齢の女性と中年の女性に会った。私「混浴露天行かれたんですか?」娘「入らなかったです。おばあちゃんの見せるの申し訳なくて。皆さんに”何か違うなぁ”て思

    • 乳頭温泉郷 湯めぐり旅 in秋田(5)

      数年前に来たとき、湯めぐり号はハイエースのようなワゴン車だった気がする。それが小さめのバスにアップデートされていた。バスの頭には湯桶がちょこんと乗っていて、各宿の温泉と山並みがラッピングされている。ハイエースより断然それっぽい。でもこの窓に貼られた山並みラッピングが、車窓からの風景を見えなくしていた。個人的にはせっかくの景色を楽しみたいと思ったが、UVカットか何かの要望でもあったのだろうか。 鶴の湯から乗る客は多かったが、途中下車で皆いなくなり、貸切になった。運転手さんの後

      • 乳頭温泉郷 湯めぐり旅 in秋田(4)

        「秋田新幹線はローカル線と同じ線路を走るんだよ」「唐松神社は子宝で有名で知り合いにも子供が生まれたんだよ」「秋田は自動車がないとどこにも行けないって言ってた意味がわかったでしょう」。エアポートライナーは他愛のない会話をのせて田舎道をひた走る。冬枯れた何もない風景も、友人には水墨画の世界のようで新鮮らしい。 角館の武家屋敷、田沢湖畔の土産店でぽつぽつと乗客が下車し、いよいよ温泉郷が近くなる。「だいぶ上がって来たねえ」「テンションが?」「ううん、標高」。たざわ湖スキー場を通り過

        • 乳頭温泉郷 湯めぐり旅 in秋田(3)

          二月のある木曜日。何重にもかけたアラームの音で一泊二日の旅がはじまった。ノーメイクのままタクシーをつかまえ、朝5:40発の羽田空港行きリムジンバスに乗る。車内に目を走らせると、2列シートの片側はすべて埋まっていて、となりに荷物を置いている人が多い。荷物のない痩せた男性の隣に座り、空港までの小一時間、身を縮めてぼんやりと東京タワーや湾岸の景色を眺めた。 羽田空港に着き、逆方向の電車に乗って待ち合わせに少し遅れた友人と無事に落ち合う。JALカウンターで特殊チケットを発券してもら

        乳頭温泉郷 湯めぐり旅 in秋田(6)

          乳頭温泉郷 湯めぐり旅 in秋田(2)

          続いての手配は、行き帰りの交通。なにせ秋田の山あいの温泉郷。交通の便はいいとは言い難い。が、それが秘境感を盛り上げているとも言える。 乳頭温泉郷の最寄は、秋田新幹線が停まる田沢湖駅。東京駅からは片道三時間弱。そこからローカル路線バスや、宿の送迎バスを利用して、一時間弱で乳頭温泉郷に着く。 鶴の湯で朝風呂が一緒になったご婦人は、深夜バスが安くて便利だと熱弁していた。藤沢・鎌倉・横浜・浜松町から田沢湖駅まで、フルフラットの三列シートで八千円ほどらしい。 飛行機の場合、羽田空

          乳頭温泉郷 湯めぐり旅 in秋田(2)

          乳頭温泉郷 湯めぐり旅 in秋田(1)

          秋田育ちゆえ、温泉といえば乳頭(にゅうとう)温泉郷がまず頭に浮かぶ。子どもの頃に家族で泊まったことはなんとなく覚えているし、ここの温泉に入ると心も体も芯からほぐれ温まり、象牙のようにしっとりなめらかな肌が手に入るので、大人になってからも何度か足を運んでいる。 乳頭温泉は秋田県の西側、奥羽山脈のふもとにある秘湯で、鶴の湯をはじめ七つの宿があり、それぞれ異なる源泉を持つ。もちろん効能も異なるため、湯めぐりすれば体のあちこちがじわじわと喜んでいく。 二〇一九年二月。十数年の付き

          乳頭温泉郷 湯めぐり旅 in秋田(1)

          温泉とアートの週末旅行 in佐賀

          ONSEN Saturday9:00 リムジンバスは予想どおり40分早く羽田空港に到着した。旅に必要な細々としたものを買うためドラッグストアに入ると、日焼け止めを両手に持ったアジア人の女性に「which is better?」と聞かれる。わたしは人に何か尋ねられるのが好きで、それが海外の方ならなおさらだ。旅先に日本を選んでくれてありがとうという気持ちからだと思う。「i like this one.」アネッサと即答したけど、あとで「アネッサとウォータージェルの安価な日焼け止めは

          温泉とアートの週末旅行 in佐賀

          日本の民藝館めぐり(2)出雲民藝館

          *2015年10月に訪問。一年以上前の記憶を思い起こしながら…。 出雲市駅から電車でおよそ15分。西出雲駅のやけに広い空はすき間なく雲でおおわれている。雨に濡れた長傘を持て余しながら10分ほど歩くと、住宅街の切れ目にちいさな瓦屋根の立て看板が見えた。駐車場の奥には赤茶色の壁が続いている。出雲民藝館だ。なんだか忍者にでも狙われているような気分で建物をめざす。 入館料500円を払うと、受付の女性が鍵を片手に最初の展示室へ案内してくれた。蔵を改装したらしい。電気をつけ、目ぼ

          日本の民藝館めぐり(2)出雲民藝館

          日本の民藝館めぐり(1)松本民芸館

          二月。雪国育ちのわたしにとって、東京の冬は晴れて過ごしやすくも、乾いた空気がつらい季節です。そのうえ今年は、年明けすぐにかかったインフルエンザが体というより心に深くダメージを残し、なかなか癒えてくれません。 わたしは心身を潤そうと、特急あずさ松本行きに乗りました。車窓の景色は徐々に都会を離れ、山梨県を過ぎたあたりでしょうか。ちぎり絵のように山が幾重にも重なって、水分をたっぷり含んだ灰色の雲がどん帳のように降りてきています。どこまでが地上で、どこからが空なのか。曖昧な世界に時

          日本の民藝館めぐり(1)松本民芸館

          器の里を訪れる旅(1)小鹿田焼 唐臼祭

          大分県日田(ひた)市。 九州の内陸部に位置し四方を山に囲まれた盆地で、まるで下流のように大きい川がゆったりと流れている街。 旅の下調べで飲料水や酒類の工場があると知ったが、なるほど豊富な水に恵まれ発展したということがよくわかる。 訪れたのは5月の頭。下旬からはなんと鵜飼いが始まり屋形船で鑑賞できるという。 (写真 宿泊した温泉旅館の6階から望む三隈川。鵜飼いシーズンのにぎわいはどれほどだろうか。) 旅の目的は「小鹿田焼 唐臼祭」。 小鹿田焼(おんたやき)は、独特の

          器の里を訪れる旅(1)小鹿田焼 唐臼祭