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ナガオカケンメイさん×安藤剛さん D&DEPARTMENTのこれまでとこれから#noteクリエイターファイル

noteで活躍するクリエイターを紹介する#noteクリエイターファイル。今回は特別に、D&DEPARTMENTディレクター・デザイン活動家のナガオカケンメイさんに、THE GUILD 共同創業者の安藤剛さんが話を聞きました。

その土地と暮らしのなかでずっと長く愛される「ロングライフデザイン」をテーマに活動されているナガオカケンメイさん。実店舗「D&DEPARTMENT」の運営や、47都道府県の個性を1冊ずつにまとめた『d design travel』の発行、書籍やメルマガでの発信を続け、その魅力を私たちに伝えてくれています。

現在も、2020年の春にオープン予定の「d hotel(d news)」の展開に奔走するなど、ディレクターとして、ロングライフデザインの現場で活躍されています。

noteでは、d hotel(d news)ができるまで、ものや仕事にまつわる日記を綴っていて、定期購読マガジン「もの・の・まわり日記」もスタートしました!

今回話を聞くのは、UX・UIデザイン・エンジニアリング・データアナリティクスの領域を中心にサービスの価値向上のサポートをするTHE GULID共同創業者の安藤剛さん。noteでは、データ分析、デザイン、ガジェットなどについて、独自の視点で語られています。

noteのデータ分析もしている安藤さんのご自宅は、D&DEPARTMENTで買ったものばかりなのだとか。

実店舗 D&DEPARTMENTは「買って帰れる美術館」

安藤 10年ほど前に、ずっと使っていた無印良品の収納用品がモデルチェンジしてしまい、中古品を探していたところ、D&DEPARTMENT のWEBで見つけて、大量に購入したというのが、最初の出会いです。その後、奥沢のD&DEPARTMENT TOKYOに通うようになりました。毎月カフェメニューが変わるので、楽しみにしています。
※カフェは2019年6月「dたべる研究所」にリニューアルしました

ナガオカ 喫茶店は、店舗が立地の悪いところにあるので、わざわざ来てくれた人にお茶を出していたことが始まりだったんですよ。

安藤 そうなんですね。そもそも、2000年にD&DEPARTMENT PROJECTを始めた経緯についておうかがいしてもよろしいですか?


ナガオカ 僕はもともとグラフィックデザイナーとして活動していて、原研哉さんとデザイン研究所を立ち上げたんです。その頃から、デザイナーのあり方を考えるようになって。デザイナーが、コンセプトが成立しないことをやってクライアントを困らせたり、環境に配慮しないでつくって大量のゴミを生み出したり。デザインし続けることに疑問を抱きました。

でも、デザインは大好きだから、「デザインしない」というジャンルでデザインを確立するしかないなと思って始めたのが、D&DEPARTMENT PROJECTなんです。自分がデザインするのではなく、すでに世の中にあるものをデザインの視点で再評価する。例えば、ショッパーも自分たちでデザインしてつくるのではななく、他のお店の紙袋に店名を入れたテープを貼っています。

安藤 立地の悪いところにお店を構えたのにも理由があるんでしょうか?

ナガオカ 立地のいいところにあると、ふらっと立ち寄れるので、衝動買いやほしいと思ってなかったものを買ってしまうことがありますよね。逆に、見て触って、買わないことも多い。僕らは接客力や対応能力が高いわけではないから、不便なところに店を構えて、自分の意思を持ってわざわざ来てくれる人だけを相手にしたいと思ったんです。そういう人に、本当にほしいものだけを買ってもらおうと。

安藤 お店を訪ねると、スタッフの方々が商品にとても詳しくて、いつも感心します。

ナガオカ うちは接客や商品説明のマニュアルはないんですよ。スタッフが実際につくられた土地に行って、つくる人と会って関係性を築いているので、自然と話せるんだと思います。休日に訪ねるくらい、みんな好きなんですよね。

安藤 僕にとって、D&DEPARTMENTは「買って帰れる美術館」ですね。

安藤さんがD&DEPARTMENTで買った林刃物の事務用ハサミ。10年以上愛用しているそう

その土地でずっと長く続く「個性」を伝える『d design travel』

安藤 『d design travel』はどんなきっかけで始められたんですか?

ナガオカ きっかけは「よさこい」ですね。よさこいはもともと、高知県の商店街組合の役人さんが街を活性化するために、高知に古くからあるお祭りをアレンジしたものなんです。次第にイベント化されて、日本中どの街でもよさこいが行われるようになった。それって、どの街も同じ景観になることと同じで、街の個性が失われてしまう。よさこいの始まりと同じように、昔からその土地にあるものを伝承していくべきではないかと思ったんですね。

だから、よそ者として、中にいる人は気づかないかもしれないけれど、その土地に昔からずっとあるいいもの、「個性」や「らしさ」を伝えていこうと思って、1冊丸ごと1県のガイドをつくりました。2009年につくり始めて、現在25冊ですね。

安藤 東京都心や観光地だけでないのがいいですよね。

ナガオカ 千葉とか群馬とか、ここには何もないよと言われることもあるんですが、「何もない」んじゃなくて「メディアがない」んですよ。拾い上げようとすると、おもしろい場所やものがありますから。

しかも彼らは、ずっと来てくれるいいお客さんがいて、新規のお客さんは求めてないから、頼むからそっとしておいてくれと言うんですよ。それがまたいい。僕らは、「この本はそんなにたくさんは売れないから大丈夫です」とか言って(笑)、いいものを伝えせてもらっていますね。

安藤 D&DEPARTMENT TOKYOに行って、手に取って読んでいると、掲載されているものを買ってしまいますね。

ナガオカ ありがとうございます。『d design travel』は約2ヶ月かけて編集部が現地に住み込んで取材をして、現地の人と関係性を築いて1冊をつくり、その土地の普遍的な価値を取り上げます。ですが、僕らはまた別の県を訪ねるので、「その後」を追うことは難しいんです。でも、取り上げた人たちはその土地で、ものづくりをずっと続けているわけで。僕らが紹介した人たちの「その後」を伝えていきたいと、クラウドファンディングで資金を集めて、今年『d news』を発行しました。

ホテルの前提を変えて、友人を招くような感覚でつくる「d hotel」

安藤 現在はホテルを手がけられているんですよね。hotel projectの経緯についてもお聞きしたいです。

ナガオカ もともとの発想は、D&DEPARTMEN PROJECTで喫茶店を始めた経緯と同じで、県外や海外からわざわざ来てくれる人たちが宿泊できる場所をつくりたいと思ったんです。ゲストハウスでもやろうかと思っていたところ、出会いがあって、ゲストハウス的な意味合いのあるホテルをつくろうということになりました。

安藤 場所はどちらに?

ナガオカ 韓国のチェジュ島です。日本の沖縄のような場所ですね。オーナーは美術コレクターでもあり、美術館を経営しているんです。街の一角を私的に再開発していて、その一部に僕らがホテルを建てることになっています。

安藤 いつ頃から動き出したんですか?

ナガオカ 2018年の夏からですね。昔からホテルが好きで、いつかホテルをやりたいと思っていたんです。いいホテルに泊まった経験がそう思わせてくれたのに、実際に自分たちがやるとなったら、どういうホテルをつくりたいのかが見えてなくて。そこからはホテルに泊まる目線が変わりましたね。壁はもっと厚い方がいいな、とか。

安藤 どんなホテルをつくっているのですか?

ナガオカ ロングライフデザインの視点で、自分の家に泊まってもらうようなホテルをつくっています。

たとえば、石鹸やシャンプー、歯ブラシなどのアメニティも使い捨てにはしたくない。だからシャンプーは陶器の入れ物を使ったり。歯ブラシは、フロント横にある宿泊者専用のD&DEPARTMENTでずっと長く使える歯ブラシを買ってもらう。最初はなんで?と思うかもしれないけど、歯ブラシがなければ持ってくることが当たり前になるかもしれないですよね。

一般の方が誰でもお客さんとして泊まれるのではなく、こちらの意思を伝えたうえで、会員になってもらいます。自分の家に泊まってもらうような感覚なので、建物にサインはつけずに、導線を説明します。「ここにワインを隠しておくから、夜飲んでもいいからね」と。

安藤 置いてあるお酒を飲んでもいいなんて、イギリスのAirbnbみたいですね。

ナガオカ 友人が鹿児島で二拠点生活をしていて、空いているときに家を使わせてもらったことがあるんですけど、「置いてあるお酒を飲んでいいよ」と言われたのがすごく嬉しかったんですよ。友人だから疑いの念もなく、自由に使わせてくれたんです。

Apple Storeも基本的に悪い人はいない、万引きする人はいないという前提で設計されていますよね。

安藤 自分でキャッシングして、勝手に商品を持っていけますもんね。レシートも袋もなくて。

ナガオカ 相手を信じてお客さん扱いしすぎない。そういう前提をつくっておくと、こちらも過剰なサービスが不要になるし、相手も無駄に気を遣う必要がなくなる。そんなホテルを目指していますね。

愛着を持って長く使うために「もののまわり」を伝えていく

安藤 noteを始めたきっかけについてお聞きできますか?

ナガオカ リアルなきっかけの一つは、今書いているメルマガ(※「ナガオカケンメイのメール・もうひとつのデザイン」)を切り取って掲載したいなと思ったこと。もう一つは、現在のD&DEPARTMENTのWEBとは別のところで、ものの価値を伝えたいと思ったんです。

というもの、僕はすでに引退していて、基本的に現社長とスタッフに任せています。うちのメインターゲットはおおよそ30代半ばで、年齢的にどんどん離れていくので、僕はそこにいちゃいけない。でも、うちで扱っている商品がいかに好きかということは伝えたいんです。

そんななか、福岡の友人にnoteを教えてもらって書いてみたら、たまたまnoteの中の人にお会いする機会があって、そこで、わざわざの平田さんのnoteを紹介してもらって、これこれ!と思ったんですね。僕が好きなもののことを書いて、リンクを貼って、買ってもらえたら嬉しいなと。

安藤 「もの・の・まわり日記」も始められましたよね。

ナガオカ ここ数年、路面店の限界を感じていて。商品を買うことはWEBでもできるから、リアルな現場でしかできないことはなんだろうとずっと考えていたんです。その一つが「もののまわり」をやっていくこと。たとえば、つくっている工場を訪ねるとか、使っている人を集めて飲み会をするとか。そして、それをnoteで書いていこうと思ったんですね。

具体的には、ライターの西山薫さんと、一つの商品に対して、「そのものが生まれた場所」「それを持っている仲間」「それを修理して使い続ける」「それを使って四季を楽しむ」「そのものの背景にある産業、業界を知る」という5つの視点で、取材してまとめていきます。

安藤 noteとすごく相性がいいと思います。

ナガオカ 一つの商品のまわりについて、二人がかりで1ヶ月かけて取材します。その土地へ行って食べて飲んで……工場見学へ行った後に、担当者と食べたお昼の情報とかも載せようと思っているんですよ。

そのものを使うことで、いろんなことを思い出してほしいんです。工場の匂いとか、つくる人の喋り方とか。すると、ただ単純にデザインがかっこいいからだけでなく、愛着が持てると思うんです。そこに到達するには時間がかかるんですが。

輪郭を描いて、集まる人と一緒につくる「d news」

安藤 これからやっていきたいことはありますか?

ナガオカ 僕らが今つくっているホテルの一室に「d news」という名前の場所があるんです。ここではコンテンツをつくって人を集めたいと思っているんですが、一箇所だけじゃなく、将来いろんなところで展開したいと思っています。

たとえば、過疎化した村の空き家にゲストハウスとして「d news」をつくって、アプリなんかも駆使して、人を送り込む。多目的なその場所に、ある時は包丁職人が包丁研ぎをする、ある時はフレンチシェフが地元の野菜を使って料理をする。そうやってリアルな場所でコンテンツをつくり続けていきたいです。

利用方法も、行政がお金を出して1週間その村に滞在する人を募るとか、企業が新商品を発表する時にツアーを組むとか、いろんな方向性を考えています。

僕らはコンセプトを貫いて、輪郭を描いて、中身は集まる人たちと一緒につくっていく。そんなことができたらいいなと。それが僕が描く未来のD&DEPARTMENTですね。

安藤 まさに、D&DEPARTMENT PROJECTですね。プロジェクトでありブランドであるというのがすごくいいなと思います。今日はありがとうございました!

■noteクリエイターファイル

ナガオカケンメイ
D&DEPARTMENTディレクター d design travel発行人 デザイン活動家です。長く続く個性的なもの、ことに関心があります。東京渋谷ヒカリエ8階の8/には、日本初の物産MUSEUM「d47MUSEUM」を運営しています。最近「つづくをつくる」(日経BP社)を出版!
note:@nagaokakenmei
Twitter:@nagaokakenmei
安藤剛/ THE GUILD
UI/UX デザイナー、THE GUILD共同創業者、 YAMAP CXO。デザイン・エンジニアリング・データアナリティクスを中心にサービスの成長の支援。著書『UI GRAPHICS 成功事例と思想から学ぶ、これからのインター フェイスデザインとUX』〈ビー・エヌ・エヌ新社〉
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text by 徳瑠里香 photo by 平野太一 edit by 三原琴実 


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note編集部

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