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キャラメルナッツパフェの懺悔。

そろそろ、大掃除と冬休み支度にとりかかるかな!というところで、あちこちから、嬉しい知らせやお誘いが届き、漠然と思い描いていた来年のイメージがオセロみたいにカタカタと音を立てて全く違った色味と現実味を帯びてきた。激動の一年、心身ともに疲れ切ったけれど、ここにきて、なんだかちょっと、勝ったような気持ち。ミーティングの毎日を、おやすみモードに入りかけていた体がびっくりしながら頑張ってくれている。行っちゃおう!やっちゃおう!って励ましてくれている。だから、ちょっと自分自身にも甘くして、こないだ、急に冬らしい寒さがやってきた日、打ち合わせまでに読まねばならない本を読みながら、キャラメルナッツパフェを食べた。

『打ち合わせまでに読まねばならない』!この響き、いつぶりだろう!独身時代に戻った気分で、近所のカフェに行くだけなのにワンピースを着ていつもより大きなピアスをつけて、本を抱えおしゃれなカフェに一人で入る。キラキラしたスイーツを注文する自分の体が私じゃないみたい。本を読みながら、溶けてどろんとしたアイスを掬って食べるのがこんなにも充実して感じられるなんて。一冊丸っと読み終えて、外に出るとまだ5時なのに真っ暗。ピリッとした冷たい空気の中、よしっ!と切り替えてスーパーに行く足も軽い。鼻歌を歌いながら、今日の晩御飯を作る。「おかえりー!」ってパパをお迎えする。

こういう日がずっと続きますように!

もっともっと、いいことがありますように!

なんて風にはもう思わないアラフォー世代の、だからこそ隅々まで染み渡って感じる、幸せよ。

きのう、自分よりひと回り以上も若い、26歳の女の子とおしゃべりをした。大学を出て、やりたいことをやるために就職をしないでバイトの掛け持ちの日々。やりたいことはいっぱいあるけど、働いても働いてもお金は貯まらない。手応えもない。やりたいことをしているという実感すらもうよくわからないようだ。なんとかその業界に食いついてはいるけれど「やっすい時給で働かされてるんっすよ」とマフラーで隠れた口から、吐き捨てる。こないだ食べたキャラメルナッツのパフェの味は、遠ざかってゆく。昔の自分を見ているみたい。

私がその年だった頃もそうだった。年上の人にそういうと、「私の頃もそうだったよ。若さって、そういうもんなんだよ。頑張れ!」と言われたっけ。私は、それだけは言っちゃいけないと思ってる。やってもやっても距離が縮まらない。お金がない。やりたいことをやりたいのに抑圧しかない。偉そうな大人たち。若さの空回り。それが若さのせいだなんて、騙し文句にもほどがある。ずっと、何にも変わらなかったのは、変えようとしなかったからなんだから。政府は一体何をしてきたのだろう。と思いを巡らせると、それは結局、政治について考えてこなかった自分に降りかかってくる。まんまとはめられた。そんな言葉がぴったり。思考停止に気づいていないということの恐ろしさ。教育、社会。。。。考えさせない日本の教育。

若い時、政治なんて関係ないと思ってた。政治どころか、社会の一員という実感を持つと言うことさえ、若いから必要ないと思っていた。大人になったらそういうことがわかるようになると思ってた。お金や豊かさと一緒にやってくるんだと思ってた。大人になったら、わかった。急にわかるようになるはずなんかない。ガンと一緒。わかったときには遅いんだ。そこからしか始まらない、日本の幼稚な政治。こんなに不満が爆発しているのに何も動かないのは、まだ満たされていないと気づいていない幸せボケの人間が、思考停止の人が、多いからなんだ。個人的な幸せはあるよ。でも、私たちは、しあわせじゃない。

高校生の頃、学校行事で海外ホームスティに行った時、自己紹介は「どこから来たの?」「そこはどのくらいの広さ?人口は?」必ずそこから入った。そんなの知るわけないじゃんねー。と私と友達は話し合った。でも、海外の同年代の子たちはみんな、そこから自己紹介をしていた。「私はどこどこの国の、どこどこの出身です。このくらいの広さで、このくらいの人口の街です。」と、自分がどこに属しているかをちゃんと知ってた。つまり私たちは、その頃からもう迷子だったのに、そこに気付かぬまま大人になってしまった。帰国したらちゃんと調べて、自分の住む国にも政治にも、もっと興味を持とうとは思えなかった。そんなの高校生らしくないとすら思っていたんだと思う。でも、あの時、その違いの重みに気がつけたら、いまの若い世代の絶望感を少しは薄められたんじゃないか。そういう全てが、「やっすい時給で働かされてんっすよ」に結ばれているような気がして、辛かった。

自分の生活となると、結果が全部自分に返ってくるから、人生は毎日の積み重ね。と思えるものだけれど、社会や歴史と考えると、大きすぎて、つながりを感じることができなかったりする。でも、やっぱりみんな、みんな、一員で、一因なんだ。

ごめんね。ごめんね。私たちのせいだよ。これからはちゃんと戦うからね。と心の中で呟いた。本当は、「政治についてもっと関心を持つといいよ。」と言いたかったけれど、喉から外には出てこなかった。「ロンドンに行くべきだよ」やっと言えた一言だけど、全く違う文化に一人で飛び込んでいくことのほうが、この国で不満を言い続けるより、はるかに有効だと思っているよ。また会えることがあったら、今度一緒に、美味しいパフェを食べに行こうね。





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