デザイン思考とデザインプロセスは違う〜『デザイン思考の道具箱』奥出直人 著
先月読んだばかりの本です。
軽いおさらいのつもりで読んだのだが、読み終えて、
「デザイン思考ってそういうことだったのか!」
と思った(笑)
デザイン思考とデザインプロセスは違う
デザイナーの仕事の仕方をその他の事にも応用するなら、わざわざ「デザイン思考」などという大仰な固有名詞を作らなくても、「デザインプロセス」で良いじゃないか、という意見がある。
恥ずかしながら僕もそう思っていました。すみません。
とはいえ、「デザイン思考」を、「(デザイン以外にも応用することを前提とした)デザイナーの仕事のやり方」と(勝手に)定義するならば、デザインプロセスと同じ、という認識で良い。
しかし、「デザイン思考」をIDEOやスタンフォード大のdスクールが提唱した特定の方法とするならば、明確に違うのだ。
デザイン思考ではデザイナーの他に、エンジニア、マーケター、文化人類学者など多様な人がチームを組む。あるいは、営業販売、商品開発、製造などの多様な部門の人がチームを組む。多様な人々がチームを組むことが重要なポイントで、これが組織としての創造性が高まる仕掛けである。
フィールドワークへの文化人類学の影響
一昔前から消費者調査にエスノグラフィ(民族誌)が採用されているが、そのいきさつがコンパクトに解説されている(第4章「経験の拡大」p160~161)。著者が使っている方法は現象学的社会学(エスノメソドロジー)と言い、アメリカの社会学者、ガーフィンケルがフィールドワークの方法として確立したものだ。
第4章「経験の拡大」では、フィールドワークの心構えと方法が解説されている。
まず心構えに付いては、「師匠/弟子モデル」という用語も面白い(p170~)。調査対象を「師匠」と思い、調査者はその弟子になった気で調査する。
調査終了後すぐに記録(エスノグラフィ)作成に取り掛かり、「濃い記述」を心掛ける。記憶が鮮明なうちに、自分の経験を全て言語化することで記述が濃くなる。
ちなみに「濃い記述」を提唱したのはクリフォード・ギアツだそうで、僕にとっては懐かしい名前だった。もう十数年以上前にギアツの「ヌガラ」(19世紀バリの劇場国家)を読んだことが思い出された(中身はほとんど忘れた)。
続いて、実際の記録作成の方法が述べられる(p177~)。
次の「5つのワークモデル」が図や写真入りで解説される。
フローモデル
シークエンスモデル
アーティファクトモデル
文化モデル
物理モデル
※詳細は本を読んでください(てへ)
これはエスノグラフィの具体的な作り方になっていて、デザイン思考を実践しようとする人にとって、とても参考になるはずだ。また、デザイン思考に興味のない人にとっても、情報の整理の仕方として見れば、やはりとても参考になると思う。
おわりに
その他いろいろ示唆てんこもりなので、多くの人に一読を薦めたい。
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