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2022年に見た映画ベストテン

2021年の最後を『ドント・ルック・アップ』(監督:アダム・マッケイ)で締めくくり、地球の滅亡を予習しながら迎えた2022年は、思ったより映画館で映画を見ることができた。とはいえ、見るべきと思いつつ見られなかった映画は相変わらず多い。
それでも、「頼まれもしないのに文章を書く」という課題のためにはじめたnoteなので、年末最後は頼まれもしないのに今年見た新作映画ベストテンを書くのがふさわしかろうと(だいたいにして○○ベストテンなどというものは、まったく個人的で異論反論を許さないものである)、カレンダーに記された記録を遡りながら順不同で10本を選んでみる。


NOPE(監督:ジョーダン・ピール)

「見る」とは何かについて「見る/見ない」ことを通じて考えさせる、それもエンタテイメントとして、という離れ業をやってのけた。思わずもう一度見に行ってしまい、noteに映画評も書いた。

マイ・スモールランド(監督:川和田恵真)

〈不法滞在〉と呼ばれる問題というより、それを「不法」と決めつけ、法的にも倫理的にも日本人として恥ずかしい状況にあることこそが問題であるが、それはフィクションでしか描けないものだった。また同時に、青春映画として秀逸。

Mondays/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない(監督:竹林亮)

まったくスルーしていたのだが、映画好きの友人が「今年ベストかも…」というので見に行き、タイムループものを更新する脚本に首肯した。こういうことがあるから友達は大事にすべきである。

ポゼッサー(監督:ブランドン・クローネンバーグ)

変態は遺伝するのかという問題はさておき、映画に興味ない子ども自分に唯一熱狂したと言って良い作家であるデヴィッド・クローネンバーグのそれと同じく毎回楽しみにしている。歌舞伎で贔屓の役者の息子が舞台に立つのを愛でるように「ブランドン君もすっかりお父さんみたいに……」という気持ちなのかもしれない。

ある男(監督:石川慶)

若かりし頃に企画でお呼びしたことがあり、同世代、同窓ということもあり、いつも気になっている監督の作品。原作小説は未読だが、おそらく小説とは異なる、映像だからこそできる「人はなにをもってその人なのか」を描き出した、無駄なショットがないウェルメイドな作品。

ケイコ、目を澄ませて(監督:三宅唱)

ちょうど雑誌『ユリイカ:三宅唱特集』に駄文を寄せたからというわけではないが楽しみにしていた一本。私にとって良い映画のひとつの形として、中盤では泣かせられ、終盤ではおだやかな気持ちになるという形があるが、そのタイプ。これもnoteに映画評を書いた。

トップガン・マーベリック(監督:ジョセフ・コシンスキー)

21世紀から20年以上が過ぎた今これでいいのか?という問いが頭をかすめつつも感動せざるを得ないのは、トム・クルーズが殉教者にも似た面持ち(しかも爽やかな笑顔)でハリウッド映画そのものを背負っているからでもあり、映画というメディアが本来もつ力(ときに危険性)なのだろう。

アフター・ヤン(監督:コゴナダ)

近年、近未来を描くSF映画が表面上現在の感じしかしないのは、すでに私たちの想像力が限界を迎えたからなのか、あるいは〈もう未来は来ない〉ことを想像しているからなのか。同じく近未来を描いた『PLAN 75』(早川千恵監督)を見ながら背筋が寒くなった今年だが、他方で、あたたかい未来を見た気持ちになった一本。奇しくも今年亡くなったJ.L.ゴダール監督の「私たちに未来を語るのはアーカイブである」を思い出した。これもnoteに映画評を書いた。

東京2020オリンピック SIDE:A, B(監督:河瀨直美)

これをベストテンに入れる人が何人いるのか気になるところだが、映画が社会を映す鏡なのだとしたら、これはたしかに日本社会(という大きな主語)を映していると身震いした点で忘れられない一作。自分は違うというのは簡単だが、自分がその大きな主語の上に立っていることに無知でいられるのは子どもだけだろう。

THE FIRST SLAM DUNK(監督:井上雄彦)

12月30日、今年最後の映画鑑賞。これもまた映画好きの友人の勧めによる。バスケ部にいたことがあり、同時代に連載されていた原作をどうして未読でいられたのか今となっては逆に不思議だが「漫画では赤い髪の人が主人公」くらいの知識で見た。今年は大学での担当講義のおかげもあって、漫画とアニメーションの違い/絵が動くとはどういうことかについてよく考える一年だったので、その一線をこのように越えてきたのか……と感心することしきり。

番外1:アネット(レオス・カラックス監督)と何食わぬ顔(濱口竜介監督)を同日に見たこと

アダム・ドライバーと若き日の濱口竜介監督が、スベリ芸でシンクロするという奇跡を見た一日。濱口竜介監督特集を組んだフォーラム仙台に感謝。

番外2:青山真治、J.L.ゴダール、吉田喜重の訃報

ゴダールはともかく、青山監督と吉田監督とはささやかながら親しくお話をうかがう機会があり、映画史における何かが終わった気持ちになる年だった。それは、映画の青春期と言えるものかもしれないし、すでに終わっていた青春期かもしれない。だが、これからも映画は更新され続けるだろう。そのためにも、2023年は映画を見せる機会をつくる仕事に復帰する。

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