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立位バランス【5つのバランス戦略】

「良いバランスってなんですか?」

本日は立位を保持するために、人はどのようにバランスを保つのか、5つの戦略を説明したいと思います。

立位とは何か?

立位は、日常生活の課題において重要な役割を担っており、ADLの目標を達成するためには、四肢/体幹に起こる運動の安定した支持基底面上で保持できる動的バランスが要求されます。

解剖学上の骨の配置は立位の評価において有用となり、「抗重力位」と表現されます。
 
主に、前方/側方/後方から立位姿勢を観察し、患者の正中線や矢状面に対する逸脱を評価する必要があります。
 
加えて、抗重力筋活動や課題に応じて感覚比重をコントロールできる状態は「抗重力的構え」と表現されます。
 
この2つの要素を踏まえて、解剖学/運動学的姿勢だけでなく、神経学的な抗重力姿勢の両者を統合した『抗重力姿勢』を評価することがセラピストには求められます。

5つのバランス戦略

立位を保持する際に、重心動揺(内乱/外乱)に対する姿勢保持の戦略があります。

「股関節戦略/足関節戦略/ステッピング戦略/重心移動戦略+リーチング戦略/サスペンション戦略」が挙げられます。

ひとつずつ簡潔に解説します。

▶︎ 股関節戦略

【特徴】
↪︎ 中枢部〜末梢部への筋連鎖
↪︎ CoGが移行する不安定側において筋が活性化

【誘発例】
↪︎ 支持面より大きい動揺が生じるとき
↪︎ 課題において大きく、かつ迅速なCoG移行が要求されるとき

※ 前庭受容器が損傷されていない場合のみ出現

▶︎ 足関節戦略

【特徴】
↪︎ 抹消〜中枢部への筋連鎖
↪︎ CoGが移行する不安定側とは反対側において筋が活性化

【誘発例】
↪︎ CoGの小さい移行あるいは動揺時
↪︎ 課題において直立姿勢を要求されるとき

※ 体性感覚受容器が損傷されていない場合のみ出現

▶︎ ステッピング戦略

【特徴】
↪︎ 安定性限界に到達するまたは上回る
↪︎ 筋活動から重心移動代償へ切り替わる

【誘発例】
↪︎ 動揺が大きく、かつ粗大な場面

▶︎ 重心移動戦略+リーチング戦略

【特徴】
↪︎ 一側から反対側へ重心移動する
↪︎ 何かの物体につかまり、新たな支持面を作る

【誘発例】
↪︎ 麻痺則の不安定性を陽麻痺則で大鐘賞とするとき

▶︎ サスペンション戦略

【特徴】
↪︎ 早い膝関節屈曲によってCoMを下げる
↪︎ ロッキングパターン

【誘発例】
↪︎ 身体に加速的な動揺を伴ったとき

まとめ

最も高度な戦略は、足関節の運動によって支持基底面内(BoS)にとどめる足関節戦略です。

一方、股関節の運動によるものを股関節戦略、片足を踏み出す運動によるものをステッピング戦略と言います。
 
ステップ戦略やリーチング戦略は代償的姿勢調節(CPA)の要素が強く、随意運動とフィードバック情報に強く影響を受けるため、反応が遅延しやすく、CoMの動揺が大きくなります。

健常者は、重心同様に応じてそれぞれのバランス戦略を切り替えながら最小限の筋活動で姿勢を維持することが可能です。
 
一方、脳卒中患者は足関節戦略より股関節戦略の割合が多く、体性感覚よりも視覚や前庭系に依存しやすくなります
 
その結果、安定性限界(LoS)が麻痺側/非麻痺側ともに狭小化してしまいます。

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