【エッセイ】わからないまま、生きていく。
1~2か月に一度、韓国で暮らしながら考えてきたことをエッセイにまとめ、WEBマガジン「Stay Salty」に掲載していただくようになり2年が経ちました。一番最初に書いたのは、PEOPLEという巻頭コーナーの『あなたの夢は、何ですか?』というエッセイでした。
▲リンゴの写真の中にある「VIEW PEOPLE」を押すとエッセイが読めます
学生時代に「畑を耕しながら文章を書く人生を送りたい」と夢見た私が、紆余曲折を経て30代前半で「半農半ライター」になり、農業体験取材のため韓国へ。そこで夫と出会い今に至る…という話を書いたわけですが、韓国移住後はソウル近郊の街で、夫と共に農業とは全く関係ない自営業を営み、子育てする毎日を送っています。
この7年間、ここに書けることも書けないこともいろいろあって、畑どころか日々の食事作りすら大変だなあと思うようになってしまった私は、ずいぶん長い間落ち込んでいました。自分の力ではどうにもできないことの多い今の環境をもどかしく思ったり、やりたかったはずのことが重荷に変わってしまい悲しく思ったりしていたんですが、最近はたと気づいたんです。
7年間、半農の暮らしに関しては諦めの境地だったけれど、それでも書くことは諦めず、今いる場所で自分にやれることを少しずつやってきたやん。こんなに書かせてもらってきたやんか、って。
書き続けてきたことで、懐かしい人たちや見知らぬ人から「読みました」と連絡をもらったり、世界中に暮らす人たちと繋がっているような気持ちになれたりしただけでも、あんたの夢は半分以上叶ってるんやで、って。
日本にいた時に自分一人で描いていた夢が、韓国に来て家族ができたことで振り出しに戻ってしまったのは当たり前というか、仕方のないことです。だけど、今まで積み重ねてきたものが消えてしまったわけじゃありません。白紙になったわけでもなく。
大事なのは、あの時「半農半ライター」として動き始めたからこそ今があるということ。そして私は、どんな時も「今」だからできることを探して一歩ずつ、前へ進んできたのでした。
誰しも時の移り変わりとともに、自分を取り巻く環境が変わり、考えが変わり、行動や生き方も変わっていく。それはとても自然なことです。その変わりゆくものの中で、「それでもやっぱり私はこれがしたい」と残り続けるものが、その人の夢や生きがい、やるべき事柄になっていくんじゃないかな、と思います。
私はやっぱり、どんな形であっても文章を書き続けたいです。エッセイも、詩も、今年は小説も完成させたい。そしていつか、義両親のように食べ物を自分で作り、人と分かち合える人になりたい。
まだまだ道の途中ですが、その記録をこうして書き残す機会をくださった『Stay Salty』の木ノ下さん、いつも読んでくださっている皆様に、感謝しています。
新しいエッセイ、掲載されました。何年住んでもわからないことだらけの韓国で、わからないからこそ自分らしく生きられるようになってきたという、そんなお話です。
WEBマガジン「Stay Salty」不定期連載エッセイ
オンマと呼ばれる日々
第15回 わからないまま、生きていく。
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