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山の頂の革命: 「わざわざ」のパン屋物語

平田はる香さんの著書「山の上のパン屋に人が集まるわけ」は、ただのパン屋の話ではありません。この本は、長野県の山頂に位置する小さなパン屋「わざわざ」の背後にある深い洞察と革新的なビジネスモデルを掘り下げています。

2009年の個人事業から始まり、現在では年商3億円を超える企業に成長した「わざわざ」の成功の秘訣とマーケティング戦略を紐解いていきます。


山の上のパン屋、変革の秘密

何を売るか:シンプルさの追求

平田さんは、もともと20種類以上のパンを提供していましたが、最終的には2種類の食事パンに絞り込みました。それは、自家製酵母のカンパーニュと微量イーストの食パンです。

このシンプルさへの移行は、オペレーションの簡素化だけでなく、顧客の健康への配慮から生まれました。彼女は、顧客が自分のパンで健康を害していることに気づき、大胆なメニューの絞り込みを決断しました。これは、品質と顧客満足度を最優先に考えるビジネス姿勢の表れです。

どこで、どう売るか

「わざわざ」のユニークな販売戦略は、その立地にも表れています。長野県の山の上というアクセスしにくい場所に店を構えることで、独自のブランドイメージを築き上げました。この立地は、顧客にとっては訪れる価値のある「旅」となり、パンへの期待値を高める効果があります。また、限られた場所での販売は、品質管理と顧客体験の向上にも寄与しています。

誰に売るか

平田さんのビジネスモデルの中核は、「誰に売るか」という問いに対する明確な答えにあります。一見さんよりも長期にわたって支持してくれるファンに焦点を当てています。これは、”量より質”を重視する姿勢の表れであり、熱心なリピーターによって支えられています。このアプローチは、独自のコミュニティを形成し、ブランドロイヤリティを高める要因となっています。

継続的な顧客関係の構築

コアファンが定期的に買い続けることは、ビジネスの安定性につながります。これは、顧客との関係性を大切にし、継続的なサポートを提供することによって成し遂げられます。

初めは移動販売から始めた「わざわざ」の販路開拓も、夏場の売上低下などの課題を乗り越え、自宅を店舗化するなどしてビジネスモデルを適応させました。これは、柔軟性と市場のニーズへの適応が成功への鍵であることを示しています。また、パンだけではなく、日用品も扱うことで収益の多角化を図りました。

10年以上の歴史を経て、地域密着の経営で成功を収める

長野県の山の上に位置するこのパン屋は、10年以上の歴史を経て、地域の人々と深い関係を築き上げてきました。彼らの成功の秘訣は、単なるパンの販売にとどまらず、顧客との関係性を重視することにあります。リピーターの獲得と、青山のファーマーズマーケットなどのイベント参加を通じて、新しい顧客層を広げています。
自社のオンラインストアを基盤にしながらも、実店舗の魅力を活かす戦略を取っています。オンラインストアによって広範囲にわたる顧客にアプローチし、実店舗では山の上というユニークな立地を生かした特別な体験を提供しています。

その結果、売上は3億円を超えるほどに成長しました。この数字は、日用品とパンの販売を通じて達成されたもので、地域密着型ビジネスモデルの強みを示しています。

日本社会に適した理想的なビジネスモデル

需要が供給を上回る状況にあるため、パン屋は価格を上げる余地があります。これは大量生産に頼らない収益モデルが、特に日本のような市場で重要であることを示しています。
日本では人口減少と高齢化が進んでおり、1人当たりの消費量が減少しています。この社会的背景を踏まえ、このパン屋は高単価商品を提供することで、市場の変化に対応しています。
パン屋「わざわざ」のビジネスモデルは、地域密着型経営の参考例として非常に価値があります。彼らは、限られた顧客に高品質の商品を提供することで、持続可能なビジネスを築き上げています。

農業のブランディングに当てはめると

個人農家も同様、大量生産では大手企業には太刀打ちできないため、少量高品質や多品種の生産で、コアファンを作ることが重要です。「わざわざ」と同様に、こだわりを持って作った農産物を、どのようにして適切な顧客に届けるかが鍵です。
高品質で農家ならではのストーリーを乗せた農産物はそれ相応の価格設定が可能です。「わざわざ」の場合は、食パンを1600円で提供していますが、それでも定期的に購入する熱心なファンがいます。安売りせず、品質に見合った価格を設定することの重要性がここにあります。

「わざわざ」が日用品を取り扱っているように、農業においても、農作物だけでなく観光農園やNFTのようなオリジナルなサービスを提供することで、より安定したビジネスを構築できるかもしれません。

まとめ

平田はる香さんの書籍「山の上のパン屋に人が集まるわけ」は、単なるパン屋の物語にとどまらず、革新的なビジネスモデルと深い顧客理解の結晶です。

20種類のパンから2種類の食事パンに絞り込む大胆な決断、顧客の健康を最優先に考える姿勢、長野県の山の上というアクセスしにくい場所での独自のブランド構築、そして熱心なリピーターとの強い絆。
今回のブログでは、量より質を重視し、地域密着型で革新的な方法を取る「わざわざ」の成功ストーリーを紹介しました。これは、日本のような市場における理想的なビジネスモデルの一例です。
これからの新たな資本主義を考える一つのきっかけにしていただけると幸いです。
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。

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