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その夢をみて起きるといつも泣いてる

嫌いなもの。結婚。家族。子ども。恋人。友情。愛情。絆。自信。勇気。

……………

僕は彼女の電話をそっけなく切っちゃった。だって、もう僕のものじゃないだもの。他人の垢にまみれていた女の子なんて興味ない。

その彼女が泣きながら電話してきてから、何日目の夜だったろうか。



たぶん、誰かのお葬式だったんだと思う。僕は喪服を着ていた。黒のパンツに黒のジャケット。白シャツに真っ黒のネクタイ。

どの洋服も少しサイズが小さくて、窮屈だった。通夜振る舞いらしき場所で、僕は惣菜をつまんでた。なんだか塞いだ気持ちだったんだけど、なんで塞いでたのか分からなかった、というかそのワケを探してた。

周りにはそんなに人はいない。でも、みんな笑顔だった。僕は早く着替えたかった。

最初にやってきたのは、元カノだった。僕の前にさっと座り、明るい笑顔で、明るい話を僕にしてた。内容は覚えてない。覚えるのは、虫だった。

僕と彼女を隔てるテーブルに2種類の虫がいた。大きな百足と大きくて真っ黒な芋虫。手のひらくらいあるのに彼女は全く気にしていなかった、気付いていないんじゃなくて、意に介さないみたいな感じだった。

念のため、言ってみた。

「ねぇ、テーブルに百足と芋虫がいるんだけど…」

彼女はチラッとテーブルを見て驚いた。飛び上がった。でも、なんだかそれは虫がいることにじゃなく、嫌悪してそうしたみたいだった。実際、彼女はとびのきながら言った。

「ねぇ!早く百足をどっかやって!!」

僕は百足を適当にはじきながら、「芋虫はいいの?」って聞いてみた。

百足が離れると彼女はにんまり笑って、芋虫を指でつまんだ。それで、片方の指で口をつついた。つつかれると芋虫は糸を口から出した。

「芋虫は可愛いじゃない。こうやって糸だってだすのよ。うふふ」

彼女は指で糸を巻き取って、つついた指の腹を糸の性質を調べるように付けたり離したりしていた。

僕は唖然としてた。

彼女はしばらくそうしてから、急に腕時計をみて、「じゃあね!」と思いっきり爽やかに笑って忙しく去っていった。

不思議の国のアリスに出てくる時計ウサギ(たしかそんな名前)みたいだなって思った。それに芋虫も。訳が分からないのも。

そのあと、「O-E-U-I-A.....A-I-U-E-O-...」という歌が頭の中で響き続けてる。

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