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【映画感想】青春アミーゴのジャケットパロディを描いたオタクは観る義務があるとハスりたい:後編 - 『メタモルフォーゼの縁側』

中編


映画本編感想(続き)

コミティアへ進む

漫画ノートに挟まれている進路相談の用紙はなにか示唆的でもある。
進路相談は河野P作品あるあるですね。

映画の紡は原作と比べてデリカシーのないところがあるように見える。
別れるのも無理ないよなぁって申し訳ないけど思わされてしまう。
しかし、そんな素直なところがうららに自分の思いに素直になるべきだと働きかけている。

雪さん宅への訪問。
老と死を垣間見せるのがほんわかだけでないところを見せているのが真摯で好き。
雪さんの書道家を目指すエピソードは漫画から影響を受けての行動はおなじく漫画を描くことにに描写されがちだが、それ以外のことでもありえるという提示になっているなと。

原稿作成

コミティア参加の入力フォームを挟みながらの演出は原作通り!
アナログ原稿を選ぶが道具の調達手段はメルカリ、勉強手段は動画なのは現代らしい。なにげにホルベインの漫画インクを託されている。

「これに本にして人に売る?正気か私」は名台詞。心の中の取りやすいところに置きっぱなしにしたい。

コメダ先生の液タブのペンの音とうららの鉛筆のペンの音を被らせる演出がどちらにも優劣がないことを演出していると思う。
下書きに語りかける演出が良い。じゃのめ先生下書き風データの作成お疲れ様です。
咲良くんへの語りかけの合成は、はらちゃんでの二次元と三次元を合成した演出の経験がいかされている感がある。パンフレットでは狩山監督の咲良くんが拝めます。

山菜の天ぷら。消え物(映画の中に出てくる食べ物)担当に赤堀博美さんが関わっていて、「すいか」から河野P作品によく出る人と認識しています。

ベムのネジ工場やはらちゃんのかまぼこ工場、今作の印刷所といい河野Pのアナログへの性癖が垣間見える。「綺麗ですよ、オフセット印刷」の軽い言い方が印刷の仕事に長く携わってきたことが推察できて、光石研さんの演技テクニックを堪能する。

1Pでペン入れ、処理はフィクションならではのファンタジー。
テンポよく進んでいく制作風景の最初の左の本棚に「ポーの一族」があることに気づいて、豚の鉢植えと同じくヒヤッ!!ってなりました。
よく見ればコナンもあることが確認。個人的にはポーの一族は下の段ボールの中に入れてもいいやつだと思う。これも各自で調べてください。

押入れの机の下にクリア収納あり、漫画らしき本が確認できるので、原作とはティストが違いそうなうららの満遍な漫画読みさを読み取れました。

映りこみでIKKI(すいかから河野P作品ではちょこちょこ縁がある)連載だった「海獣の子供」(自分は未読)が確認。
多分河野Pあたりの趣味入っているなぁ…と調べてみたらアニメ映画化されてて、芦田愛菜氏が主演をやっていて驚きました。読ま(観)ないとなぁ…

入稿を終え、印刷されたものを見ることは私もやったことがあって、共感できました。またやりたい気持ちがある。

コミティア会場へ

コロッケサンドがおいしそうと思いつつ、二人で行くつもりであったサークル参加できなくなったら不安になるよねと共感する。カートを引いている人を背景に入れているのがリアリティと「わかっている」感が。

コミティアの風景を一瞬だけにし、不完全なサークル参加としたのは当時コロナ禍であったことの反映だと鑑賞当時そのような印象を受けました。
コミティア会場の再現は狩山監督の強い要望だったのはナイスフォロー!と絶賛したい。
観客の多くがおそらくコミケとコミティアの区別のついてない方が多いだろうし、未知の分野を知る影響が大きいと思います。映画、ドラマ作りはチームプレイの性質が強い。

荒い車の運転に笑ってしまいつつ頒布できずじまいだったところに紡が訪ねてくるシーン。

このシーン、住んでいる文化圏が違う紡が単独でコミティアのパンフレットを買い青海展示棟に行くのってすごいと思う。慣れていない文化圏へ行くことには勇気がいることだと思うし、うららがコミティアにサークル参加できなかったのと対比になっている。

この映画に感想を読んでいると「いくら?」「俺お客さんだよ」に引っかかっている方を見受けられました。
自分もそれに引っかかったのですが、わかりやすさを優先するか観客に頒布の概念を説明して冗長な印象を与えるかの天秤にかけて前者をとったのだと解釈しました。頒布の概念を知らないのは同人初心者あるあるにもなりますし。
その演出をした側にガチオタの河野P、鶴谷先生がいるから、わかってやっているって認識しているのも許せる要因として大きいかもしれない。

遠くから来た人

これまで劇中漫画にはアフレコはしていなかったのに対して「遠くから来た人」に芦田愛菜氏のアフレコが入るのに意表を突かれた。
私は劇中漫画の君のことだけ見ていたいを映像として表現する際に河野P過去作のはらちゃんで行った静止画にアフレコを行う手法をとるのではないかと予想し実際には静止画のみだったことに驚いていため、なおさらであった。

さらに原作では遠くから来た人の内容は断片的であったものが映画ではその内容が全部見れるのは原作ファンにとっては嬉しいのではないだろうか。
内容がコミティアコミティアしているのがらしい。絵柄もコミティアにありそうだし。
遠くから来た人は鶴谷先生がわざと下手に描いているのですが、背景等から下手だと隠しきれていないのがなんだかほほえましい。私は悪いオタクだから宇宙人が「あれはなに?」と尋ねるしぐさにはらちゃんやQ10を思い出してしまう・・

お父さん全カットとせめての精神

紡がえりちゃんにフラれて立ち去った後の三者面談シーン。
「お金大丈夫?」「なんとかなるわよ」で言いたくなったことを。
原作では離婚したお父さんが登場しているのですが映画では全カット。

尺と冗長さを与えるリスクとお父さんが観客にとって不快な要素になるのかもしれない問題だと推測しています。お父さん、致命的ではないがこりゃ合わなくて離婚するわって性格や行動をしているんですよね。
原作の離婚しているけれどもうららを養育する、大学には行っておけと後援するといった責任を果たす描写が好きだし、他の作品にもロールモデル形成のためそのような描写はもっと増えるべきだと思っているので少し残念。
一言お金はお父さんも出すからとかあればよかったな。

河野P作品にも離婚はしたが責任を果たす行動をする描写のある作品はあるので、実写スタッフにも同様な気持ちであると確認できるのでご安心を(?)(でもそれが終盤も終盤だし、そこまでに行くのがとてもつらい)(宮本信子氏も出演されてます)

えりちゃんに頑張ってねを言えるようになったのが成長を感じさせる。
せめての精神は観客にとっては共感するのではなかろうか。

サイン会~終わりへ

そして時は流れていく。
コメダ先生が遠くから来た人を読んでいる背景は仕切りの高さから同人誌用本棚だろうかと反応してしまう。
一緒に映っている自転車はHulu版君のことだけ見ていたいの要素でしょうか。

サイン会のシーン、うららが紡のことを引っ張っていくのはコミティアでやったもらったことを返したいとの思いなんだろうなぁ。
君のことだけ見ていたいのモノローグのナレーションはうららがこれまでの経験からしっくりくるようになった言葉なんだろう。そしてトンネルを走り抜ける。

雪さんのファンレターは原作では雪さんの要素が薄くなりがちだったことへの反省と改善、うららが変化するならこっちも変化させたいという気持ちがあったのだと思う。

雨の中でも自分のやりたいことをやり抜けた日であるので「完璧な一日」なのである。だから悔いなく雪さんを送り出せたのだ。

おわりに

劇場を出る上映が終わり劇場を出る。
習慣としてのパンフレットを購入に加えてクリアファイルとコミック本サイズメモと付箋セットをも購入。
じゃのめ先生のカラー絵が印刷されたクリアファイルはサイズが大きいので塗りや線画の参考になる。

封切り1日前に届いた液タブは今でも使う頻度が多い。
確実にこの映画が影響が大きい。だって長年追っている人が自分のことを承認してくれたような映画だったから。

サイン会の「描いていただいてありがとうございました」は自分もこの映画を作った河野Pはじめいろんな人に言いたくなり、だからこそほっこりだけで終わらせたくないと今筆をとっている。
書いてあること以外にも自分を変えた所はこの映画にはたくさんある。
長くなってしまったがこの気持ちが伝わっていたら嬉しいなと思うし、このような感想を書こうとしたきっかけである河野P作品知名度リセット問題が改善されると幸いである。

少なくとも青春アミーゴのジャケットパロを描いた人は観るべきな映画だと強く主張したい気持ちがあるし、芥見下々先生とジャンプ編集部は観る義務があると思うよぉ!
芥見先生はリトルトゥースらしいし、だが、情熱はあるは観ているのかな。観てたらいいな。


余談

河野Pのガチっぷりとだが、情熱はある

河野Pの商業BLへのリサーチの深さを確認するなら下記のインタビューをどうぞ。
特にほんのひきだしは期間限定だったのはもったいないと思う。Wayback Machineでのサルベージになるけど読んでいただれば。
BLを読んだことないと発言していますが、追っているからこそ「嘘つけ、少女漫画のBL要素は読んでただろう」とツッコミたくなりました。正確には商業BLのことを指しているとわかっているけど。


このようなモチーフのへの真摯さがだが、情熱はあるオードリー、南海キャンディーズのリサーチにもつながっていると思う。
たりないふたりの安島隆プロデューサーの前でたりないふたりを知らずに「若林正恭と山里亮太がクロスするドラマが作りたい」とプレゼンした時点から、協力もあれどあの偏執的なリサーチへつながっているのはすごい。
まるで単独でティアズマガジンを買って青海展示棟へ向かう紡のようだ。


気になる劇中で映りこんだ書籍、漫画コーナー

うららの机の下に積まれていた小学生向け図鑑から彼女がまっとうに育てられてきたことが垣間見えるような気がした。
たくさん漫画や書籍が映りこんでいて、気になる。エクセルで一覧データが欲しい。
図鑑NEOシリーズに芦田愛菜氏が関わっている!

Hulu版君のことだけ見ていたい

「Hulu版君のことだけ見ていたい」も是非。これも河野Pが関わっています。
正直原作の君のことだけ見ていたいではない。Huluのこいつらは都会に出ないし、佑真は自転車屋で働くと思う。
でもそれはそれとして好き。河野P佑真に性癖を詰めこんでない?


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