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「かみかさ」第23話

「びしょ濡れじゃないですか。」
髪がガタガタに切られてる事に気づいた。
「ポニーテールなんですね。」
「バスケの時はポニーテールなんです。」
「そうなんですか。弟もバスケやってますよ。今日は練習ですか。」
「練習というか引退式。でも、しんみりしたりしない、楽しい引退式でした。」
「その話をしながら店に、傘を取りに行きませんか。」
「そう、傘ですよ。」
目を、まあるくした。
足を美容院の方に向けて、
「あんな素敵な傘、なかなかないですよ。
忘れてたんですか。」
「不釣り合いですよね。」
「逆です。いのりさんのイメージがして、いのりさんの物だとすぐ思いました。」
「ポニーテールはまたイメージ全く違いますね。」
「そうなんですよ。バスケの時は、気合いをいれるために、ポニーテールにするんです。すると、試合では、人が変わったようだと、言われちゃうんです。」
「いのりさん。どんな表情をするんですか?やってみて下さいよ。」
いのりは笑って
「それは、できませんよぉ。試合になると、です。」
「そんな一面もあるんですね。」
「照れます。
で、今日は引退式で、レクリエーションとして、試合をしたんです。4年対3〜1年の全員で。コートの中ひしめき合って。これが楽しかったです。それでも、4年勝ちましたよ。」
「やはり、いのりさん、気合いが、入ってたんじゃないですか。」
「あ、そうでした。そうでした。人が変わってたかも。」
いつもと違う表情を見せて話し続けて、店に着いた。


傘一つに 
二人

お喋りは
傘から溢れる

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雨の日をたのしく

ごめんなさい。詩に夢も憧れもありません。できる事をしよう。書き出すしかない。書き出す努力してる。結構苦しい。でも、一生書き出す覚悟はできた。最期までお付き合いいただけますか?