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「かみかさ」最終話

いのりは、燈郎に髪を切ってもらって1ヶ月経った。
美容院に電話して予約を取ろうとした。
「ありがとうございます。BeLu美容室青葉店です。」
「予約をお願いしたいです。零宮いのりといいます。」
「いつもありがとうございます。」
店長になった横井が電話に出た。
「皆川が長期休暇に入っておりますので、
担当を色々模索してみましょうか。」
心遣いがあった。
「若尾さんでお願いします。」
「すみません。若尾は西羽店に変わりました。」
「じゃあ西羽店に電話させていただきます。電話番号を教えていただけますか。」
いのりに迷いはなかった。

西羽店に行った。その日も雨だった。
おじさんからもらった傘を閉じて傘立てにさし、店内に入った。

「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。
私が担当させていただけるのを誇りの思います。」
微笑み合った。
「どうぞ、こちらのお席へ。」

「カラーを入れてみたいと思います。おまかせします。」
「いのりさんは、そのままで素敵ですよ。
でも、変わりたいんですものね。
ナチュラルな茶色にしておきましょう。
また褪色してきますので、様子を見ながら少しずつ変わっていきましょう。
私が見守っていきますので。
いいですか?」
「はい。お願いします。」


雨がきっかけをくれただけ
暴風雨だった

会えなくしたのも
雨だった

これからも
降り続こうと
嵐があろうと

互いに
傘をさしかけ合えれば
生きていける

穏やかに

                                           Fin.

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雨の日をたのしく

ごめんなさい。詩に夢も憧れもありません。できる事をしよう。書き出すしかない。書き出す努力してる。結構苦しい。でも、一生書き出す覚悟はできた。最期までお付き合いいただけますか?