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「かみかさ」第24話

燈郎は店の鍵を開け
「入って。」
電気をつけに少し奥に行った。
タオルを持って出て来た。
いのりは髪をほどきタオルでゴシゴシ拭いた。
燈郎も頭をゴシゴシと拭いた。
目を合わせて、少しほんの少しだけ口角をあげた。

「髪揃っってないですよね。今、切りませんか。」
「お願いします。」と、目線を下げて、はにかんだ。
燈郎は、更に電気をつけて、いのりを席まで案内した。
濡れた髪を丁寧に手ぐしで、といた後ブラシでといた。
「もう、こんな事しちゃだめですよ。」
髪を切り始めると、いのりの目から、じんわりと涙が溺れた。
燈郎は気づかないふりをしてカットしていった。
二人は黙ったままだったが、雨がお喋りを続けてくれた。

「傘を忘れずに。」
「ありがとうございました。」
「またのご来店を待ちしております。」


気づいてくれた
見つけてくれた

あなたの幸せを願う事が
私の心を穏やかにさせた

そばにいさせて下さい


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雨の日をたのしく

ごめんなさい。詩に夢も憧れもありません。できる事をしよう。書き出すしかない。書き出す努力してる。結構苦しい。でも、一生書き出す覚悟はできた。最期までお付き合いいただけますか?