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旅する日本語

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旅する日本語2019のために投稿した11本をまとめました。
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記事一覧

水中に降る雨

8月のベトナム。雨季のフーコック島は拍子抜けするくらい涼しかった。 起きてから朝食までの…

3

雨の砂、虹の雪

師走の鳥取駅から出発したバスは、ボツボツと降る粗い雨の中を砂丘へと走った。 やがて車窓を…

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十二月の六月柿

鳥取と浜松の取材が立て続けに入った。 まず東京から鳥取へは飛行機。ここは悩まない。曲者だ…

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幸福は粒になる

初めて乗った飛行機は羽田発の千歳行き。小学校6年生のときだ。 父が務めていた航空会社では…

4

横浜を青く染めて

桜の季節に、東京日本橋から横浜中華街まで108枚のメダルを集めて歩いた。 スマホの位置情報…

3

ロンドン時間

父の海外赴任に連れられ、中学3年間をドイツで過ごした。 最初の夏休みに小学校の同級生から…

5

インド洋を遠く離れ

学生時代までの旅行では、節約が最大の娯楽だった。 100円でも安い航空券、1ドルでも安いホステル、1ポンドでも安い食事。 自分の足で歩いたぶんだけ、世界が少しずつ広がるような気がしていた。 働き始め、20代半ばにボラボラ島のフォーシーズンズホテルに滞在する機会に恵まれた。 そこで知ったのは、人を癒やすために守られた景観でのラグジュアリーな体験は、人間の心を問答無用に救ってしまうということだ。 それから10年ほどの間、僕は取り憑かれたように、年に一度のペースで世界の高級ビー

ソルトレイクシティの午後

1993年の夏、20歳の僕は完膚なきまでに自業自得な失恋をして、アメリカ一周旅行に出発した。 …

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天狗の音

僕が通っていた幼稚園では年長の夏になると、高尾山にある寺で合宿をする行事があった。 夜に…

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途切れた眉毛

3歳まで過ごした茅ヶ崎にまつわる記憶は曖昧だ。 舐めていた10円玉をうっかり飲み込んで息が…

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はじまりの場所

あの旅のはじまりは、どこだったんだろう。 奮発してビジネスクラスを予約したところ。 夏の…

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