「近視の戦士は夢想する」
「こちら、最新式の魔力増強仕様となっております。色も大きさも豊富に取り揃えておりますので、多くのお客様に──」
「いや、結構だ」
「でしたら、その右隣りはいかがですか?ほんの少しですが魔法の詠唱速度を上昇させる効力が──」
「それも結構」
「そうですか。ではその下はいかがでしょう?厄介な忘却術への抵抗力がわずかに高まり──」
「結構」
眼鏡を見繕う重戦士の男の声に、次第に苛立ちが混ざっていった。装飾品店の店主の積極性と商売根性は、馴染みの鍛冶屋のそれとは似ても似つかない。