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2023年に投稿した創作系記事を振り返る



◯ はじめに 「逆噴射小説大賞2023」の振り返り等

本稿の頻出用語解説:「逆噴射小説大賞」
ダイハードテイルズ様が主催する、「娯楽パルプ小説の冒頭800文字以内」の面白さを競う刺激的なコンテスト。応募作品には「800文字以内で完結するショートショート」とは異なる魅力が求められる。
 のざわあらしは昨年「DISARM」と「不殺生共同戦線」にて初参戦。結果はどちらも二次選考を突破するも、次に待ち受けていた最終選考には残れず。


 12月21日、「逆噴射小説大賞2023」の結果が発表された。
「悪魔の風の軌跡」にて栄冠を手にされたジョン久作さん、おめでとうございます!

 山火事の不穏さ、火に身を捧げる妖しい教団、、更に迫り来る巨大な危機……。想像を絶する事態が発生しているものの、読みながら目に浮かぶ光景は突飛でなく、良い意味で淡々としている。地に足がついた筆致の賜物か。もう一本の作品「贖命のダイヤモンド」も、大賞に選出されてもおかしくない程の力作だった。


 一方、俺が投稿した「青き憤怒 赤き慈悲」は一・二次選考落ち※、「迦陵頻伽(かりょうびんが)の仔は西へ」は二次選考突破を果たすも最終選考漏れ……という結果に終わった。昨年同様「二次選考止まり」だった自分自身に対する無念さはあるが、今年は間違いなく昨年を上回る力作揃いだった。選考結果に対する異存は一切ない。それに多くの皆様の目に留まり、様々な感想を頂戴したことは何より喜ばしい。この場を借りて感謝申し上げます。ありがとうございました。

※「逆噴射小説大賞」は一・二次選考作品が同時に発表される。よって、「青き憤怒〜」が一次を通ったのかどうかは不明。



 ……さて、「逆噴射小説大賞2022」をきっかけに、WEB上で創作を始めてから早一年。
 以前の俺は舞台脚本を一本、また誰に見せるわけでもなく書いた小説一本(後述)しか創作物の執筆経験がなかった。そんな俺も、今では文章創作が「欠かせない趣味の一つ」となっている。不思議なものだ。
 純粋に娯楽要素を享受できる他の趣味──映画鑑賞やTVゲームとは異なり、小説の執筆に伴うのは楽しさばかりではない。新作のアイデアが浮かばなかったり、上手く筆が進まなかったり、スマホによる執筆を続けすぎて腱鞘炎になったり……と苦悩することもある。
とはいえ、筆を折ろうとは一秒たりとも考えなかった。感想・評価・「スキ」のリアクションを下さる読者の皆様からエネルギーを貰い、充実した創作ライフを送れていたためだ。



そんな一年間を改めて振り返ってみると、合計七本の創作系投稿を行なっていた(内容が一部重複する投稿・1000文字にも満たない短編も含む)。心機一転し来年の創作活動を行っていくために、備忘録を兼ねてそれらを振り返っていきたい。なお、既に「ライナーノーツ」記事を書いた作品は軽く触れる程度に留めておく。


◯「私たちは不器用なジャグラー」


 受賞作品がコミカライズされる(可能性がある)……との触れ込みだった「ジャンププラス原作大賞」読切部門向けに投稿した一本。タイトル通りジャグリングが題材。WEB上で初めて公開した「完結済み小説」となる。全力投球するも結果は落選。判明した直後はひどく落ち込み、自分の力の及ばなさを痛感した。
 本作は読切部門の「5000字制限」の関係で泣く泣く削らざるを得なかった表現・描写が複数あるため、また何らかのコンテストの際、改めて加筆/情報を取捨選択しブラッシュアップさせた作品に仕上げて挑みたい……と考えている。創作者が過去作に固執し続けるのはあまり健全ではないのかもしれないが、俺は本作への愛着(執着?)を捨てきれずにいる。初めて文末に「完」と記した瞬間の爽快感が、どうしても忘れられないからだろうか。

◯「鳴砂山の彷徨人(めいさざんのさまよいびと)」


 Twitter(現X)上で開催されていた「500文字匿名コンテスト」用の一本。現在も取り組んでいる小説トレーニング本『文体の舵をとれ』のお題をベースにし、リズム重視で「シルクロードの砂漠を書こう」と試みた。順位は178作品中41位(同率なし)。自惚れてはいけないのは承知だが、その後の執筆の自信に繋がった気がする。
年末に執筆したシルクロードもの「迦陵頻伽の仔は西へ」は、本作の執筆経験がなければ思い浮かばなかったかもしれない。

◯「おやすみ、ナナセ」



 先に述べた「誰に見せるわけでもなく書いた小説」のリライト。(数名の友人以外)誰の目にも留まらず眠っているのは不憫だ……と思い、書き直しと投稿を決意した。
 五年前にiCloud上に封印していたファイルを改めて読んでみると、その中身は矛盾・多重表現・誤字・飲み込み辛い設定にまみれて混濁していた。作者である俺自身が「この文章、どのような意図で書いたんだ……!?」「人物の心情が読めない……!」と困惑する箇所さえあった。だが、そのような不甲斐ない出来でも、五年前の俺は間違いなく真剣だった。五年間で見る目が高まった、つまり俺は間違いなく成長しているはず……と、ポジティブな捉え方をしたい。
 二ヶ月ほど掛けたリライトの結果、ようやく「2023年の俺」が納得する状態での完成・投稿に至った。五年間も電子空間の中──いや俺の脳の中に閉じ込めてしまったキャラクター等を、やっと解放してあげられた気がする。

↓リライト中の様子。


◯「さらば愛しの有也屋」


akuzumeさんのお誕生日祝い企画:#AKBDC2023に参加した一本。グルメものを書くのは楽しく、肩の力を抜きながら筆を進めることができた。また機会があれば同ジャンルに挑んでみたい。
 なお「達人の域にいる者の心身が何らかの変調をきたす」結末は、当時既に取り組んでいた「逆噴射小説大賞2023」用の作品「青き憤怒 赤き慈悲」(以下参照)の要素を転用したものである。


◯「青き憤怒 赤き慈悲」


 「逆噴射小説大賞2023」に投稿した、怪奇要素を含む現代劇ノワール。題材は刺青(和彫)と明王みょうおう。既にライナーノーツを書いたので、内容や執筆経緯に関しては本稿では触れない。
 投稿した時点では手応えを感じていたが、冒頭にて記した通り、残念ながら本作は一・二次選考落ちとなった。振り返って敗因分析を行うと、「どのような物語が展開されるのか想像し難い」所が本作最大の問題点だったと思われる。物語の導線を今以上に具体的にすべきだった。この反省を来年に活かしていきたい。


◯「迦陵頻伽(かりょうびんが)の仔は西へ」


 「逆噴射小説大賞2023」に投稿した二本目(一人二作品の制限がある)。内容は唐代シルクロードを舞台にした異種間バディ冒険もの。こちらも既にライナーノーツを記したため、内容に関する仔細は述べない。
 本作は昨年同様に二次選考を突破するも、次の関門:最終選考を抜けることは叶わなかった。最終選考と共に発表された「二次選考突破作品コメンタリー」でも取り挙げられなかったため、非常に悔しくてたまらない。逆噴射総一郎先生からのコメントを頂きたかった……!
 とはいえ、約290作品中の上位約70作品に残れたことは素直に喜ばしい。また、多くの皆様から「ロマンを感じる」「人物造形が良い」「今年のお気に入り作品」等のお言葉を頂けたので、作者としては本望である。落選の憂き目に遭ったものの、俺の心には負の感情よりも達成感が強く残った。



 なお、本作のタイトルにルビを付した理由は「迦陵頻伽」が多くの人にとって馴染みのない存在であることは勿論、「作中でルビを付すと字数(コンテスト規定はルビも含めて最大800文字)を圧迫するが、タイトルに字数制限は設けられていない」ため。結局のところ、決定稿では「迦陵頻伽」というワードそのものを作中から削ってしまったが……。
 一方、後述する【完全版】のタイトルにルビがない理由は、「サムネイル画像に文字を表記すれば見た目がスマートになる」と考えたから。「逆噴射小説大賞」では「サムネイル画像は存在しないもの」として審査されるため、この手を使うことはできなかった。


◯「迦陵頻伽の仔は西へ【完全版】」



 先述の「迦陵頻伽(かりょうびんが)の仔は西へ」に大規模な加筆とオチを足し、冒険の一幕を描いたワンシチュエーションものとした完全版。現状における最新作であり、過去に書いた創作物の中で最も気に入っている一本となる。カクヨムコンにも参戦中で、キャッチフレーズは「剛腕の遣唐使と有翼の少女、二人は遙かなる西域へ」。また、本意ではないが「主人公最強」のハッシュタグを付けさせて貰った。
 この度の【完全版】の執筆に際して、改めて迦陵頻伽・遣唐使・唐代中国等に関する文献・論文を収集したほか、イメージを具体化させるために復元された遣唐使船の見学に赴いた。

奈良県の平城京跡に建造された遣唐使船。何と入場料は無料タダ
水面から霧が噴き出すギミック付き。


 リアリティを求めた調査の一方で、娯楽性を優先して意図的に史実を無視した描写もある。例えば唐代中国の関所を通過する際、偽造された/もしくは他人の過所かそ=通行証の利用はまず不可能と言ってよい(通行者の名前・人数や荷物の詳細が記されているため。参考:智証大師 円珍の過所)。だが、キャラクターの特性上「コソコソ忍び抜けるよりも正面突破した方が主人公達らしい」と判断し、作中の描写に至った。



 本作は多くの反響──特に「続きを見たい」とのお言葉を幾つも頂戴することができた。「もっと読みたい!」と思って頂けるまで読者の心に残れたのであれば、これ程嬉しいことはない。
 二人が旅路の果てに迎える運命を執筆したい意欲は、俺の中で明確に存在する。だが、その光景を言語化するには様々な準備が足りない。
 そもそも俺が本作を書き記せたのは、舞台となった土地=陽関ようかんを実際に訪れ、かつて眼前に広がる砂漠に感動した経験があったためだ(参考:800字版ライナーノーツ)。俺が未到の場所、しかも「極限の地」と呼んでも差し支えない場所を舞台とする続編を執筆するためには、相応の資料と想像力、そして文章力が必要となる。しかし、今の俺にはどれも欠けている自覚がある。
 これから地道に筆力と知識を蓄え、いつか二人を旅の終着地へと導いてあげたい。気が早いが、既にタイトルは定まっている。


◯ 未来へ……



 最後に、来年以降の創作活動について記して本稿を終えたい。
 まず、2024〜2025の二年間は今年よりも仕事が忙しくなる見込みで、創作に割ける時間が減ってしまう可能性が高い。それに、現状の俺の脳は出涸らし状態で、新作のアイデアが全く思い付かない(少なくとも「迦陵頻伽〜」の続きはすぐには書けそうにない)。よって、いつ次回作に取り掛かれるかの目処めどは一切付いていない。
 しかし、創作を辞めるつもりは一切ない。日々摂取するコンテンツや対人関係等からアイデアを得ながら、今年書いた作品以上のクオリティに達する小説を、自分のペースで産み出していきたい。勿論、『文体の舵をとれ』への取り組みも継続していくつもりだ。



 また、今年下半期には「逆噴射小説大賞」関係の創作者の方々が集まるオフ会にお邪魔させていただいたほか、相互フォロワーの方々にコンテスト受賞や書籍化を達成された方が複数名存在したことで、良い刺激を貰うことができた。
 その結果、「逆噴射小説大賞2024」の優勝を狙う意思は当然として、noteの外でも力試しをしたい……とも思うようになった。現状ではカクヨムのコンテストに参戦しているが、あまりに多量の作品群に圧倒され、「この海の中から俺の作品を目に留めて下さる方は居るのだろうか……」と、noteでは体験したことのない不安に溺れてしまいそうになっている。



 だが、不安だろうが忙しかろうが、俺はただ書き続けるしかない。作品を一つでも多く完成させ投稿し、経験値を上げていくしかない。
 ……そんな今の自分を叱咤激励するような一言が、約半年前に投稿した「ジャンププラス原作大賞」落選報告に記されていた。最後にその文章を引用し、本稿の締め括りとしたい。


 題材。文章。登場人物。全てにおいて魅力的で、これまで以上に皆様に楽しんで頂ける作品を創り出せるよう、今後も淡々と書き続けるしかない。そう、書き続けるしかないのである。



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