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保護者面談から見る多言語な世界

またこの時期がやってきた。子ども達の学校での保護者面談の季節である。11月と3月の年2回。全体メールではオランダ語オンリー、難しい人は通訳を連れてきてと厳しく書いてあるのだが、実際は英語で話してくれるという日本の本音と建て前のような構造になっている。しかしながらオランダ語を話せない私はこのメールを見るたびに胸がきゅうと傷むのだ。

子どもが3人もいると面談も3回あり結構な大仕事。今回は3月5日と7日の二日間、夕方から19時代までから好きな時間を選びオンラインで予約する。少しシャイな長男と、言葉もあまり話せずトイトレも完了してない末っ子が心配だったので、2人の面談には夫も同行する予定だった。しかしながら長男が体調を崩したため結局1人で行くはめになった。家ではお転婆な長女は学校ではうまくやっているためとくに心配はしていない。

最初は末っ子の面談だった。2人いる担任と3人で話す。年配の先生は長女を受け持ったことがあり穏やかで優しく信頼できる先生だ。副担任のような立ち位置の若い先生は明るく朗らかで英語が得意なので年配先生の通訳もしてくれた。てっきり怒られるかと思ってびくびくしていた私は、2人が和やかに末っ子の成長をほめてくれたことに驚いた。動画も見せてくれ、家と同じように声を出してはしゃいでる姿に私も感動した。言葉も積極的に話すようで、トイトレも責められることなく家でも30分に一回は連れてって6月には日中トイレに行けるようにと目標をたててくれた。この学校では子ども達がオランダ語をうまく話せない際も家で教えてくれとは絶対に言わない。母語を聞き話すことの大切さを知っているからだ。まだ幼いながら多言語(父仏語、家庭日本語、学校オランダ語、両親は英語)の中で自分の言葉を探す姿をまぶしく思う。

続いて長男の面談。やはりシャイだが人好きでお話が大好きな息子はクラスでも着実に素の自分を見せるようになったようだ。現在小学2年生。この小学校はベルギーでは珍しいインクルーシブ教育を行っており、1、2年生は同じホームルームのクラス、算数、国語などはレベル別にわかれており自分のレベルにあったクラスに行く。面談もホームルーム担任と算数の先生との3人で行った。1年時には外国人向けオランダ語のクラスにも週10時間行っていたが今年は卒業したようだ。

驚いたのは早めについたので教室の外で座っていると中からは英語が聞こえたこと。両親そろって来ていた保護者は英語が流暢、ネイティブに近い発音で先生と談笑していた。そして隣に座っていた保護者は背が高く黄色のカラフルなスカートをはいていた。彼女がクラスに入った途端、聞こえたのはフランス語。オランダ語を話す親は今のところ1人もいない。快活で冗談好きないかにも小学校の先生らしい算数の担任は「次は何語?英語ね。英語は少しできるのよ。フランス語はほんの少しだけど。」と冗談でなごませてくれた。フランダースでは皆ではないが蘭仏英を流暢に話せる人が多い。そしてとても楽しそうに言語をスイッチする。夫は仏英(日本語も)を話すがオランダ語が話せれば職の幅も給与も段違いに上がると嘆いている。ベルギーが多言語な国だということには異論はないが、正確には多言語を話せることが社会的評価に繋がる国であると感じる。

長女の面談はやはりあっさり終わった。よくやってるので特に話すことはなく担任もあまり英語が得意でないからである。そして私はオランダ語が話せないことを少し申し訳なく思う。

多言語を話すことが必ずしも賞賛に値するみなが目指す姿だと思っているわけではない。しかしながら子ども達にとって両親が別の言語を話すという事実はとても重いものだ。高校卒業までモノリンガルの環境で育った私や夫にはわからない苦労や葛藤がたくさんあるだろう。そして私たちが味わったことのない楽しさや喜びを多言語を学ぶなかから感じることもあるだろう。そんな日がいつか来る日まで私も少しでも多言語を学び話す喜びを知り共有したいと思う。


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