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なづき、脱皮

2月18日(土) プロジェクトなづき稽古

新たに座敷童という役割をつくりました。伸枝さんの役柄、女将役を巡るやり取りへの彼女の違和感表明と、それと同時に、今回の芝居を通して吾野を少しでも知ってほしい。その一助に立ちたいという願いを提示されました。それらを鑑みての座敷童の出現でした。ちなみに館主の大河原さんもここには座敷童がいるのだともおっしゃっていました。座敷童を通して吾野のゲニウス・ロキに迫っていきます。

実はそこに至るまで紆余曲折、作者としての葛藤がありました。この課題が収束した折、たまたま「思い通りにならないとき人は試される」という文章を読みました。まさしく試されていたのだと思い知りました。書き手として自己のイメージを外在化したいという欲望と、演出として、役者の意見をそのまま受け入れ、包含していき、役者本位で演出したいという信条の葛藤でした。そこがなかなか統一できないのが悩みでしたが、座敷童という配役を新たに生んだことで、課題は氷解しました。悩むなかでまたひとつ演出を志すものとして脱皮できたのかもしれません。いろんな人が属すことができて、それぞれの持ち味が生かされる集団になるように頑張ります。

女将役は伸枝さんに代わって川津望が担当です。この日は川津の最初の女将役のインプロ稽古。相対するのはそれぞれ田口和さんとゴーレム佐藤さんというタイプの対照的な役者です。田口さんはセリフを丁寧に解釈して演じたい役者、一方ゴーレムさんはインプロの得意な天衣無縫ともいえる役者です。初めは田口さんとの稽古です。久しぶりに演じるので川津は緊張。田口さんの役は複雑な性格設定があり、また吾野の歴史にも深くかかわるという登場人物です。今回はインプロでのやり取りをしました。川津が演じるとお互いの役柄の特性が逆転していると田口さんに指摘されました。普通の人物がいうようなお世辞、はぐらかし、また偽った感情で反応するなど冗長さがなく、役柄の本音しか返ってこないというのです。戯曲では書けてもインプロでは十分には表現していないところはこれからの課題にします。

次にゴーレムさんとのやり取りの稽古。田口さんの指摘を受けて、川津なりに考えて対応。役者としてのゴーレムさんはとてもすてきです。この持ち味を損じないように川津も演じていかないといけないと改めて感じることができました。

稽古が終わって感想を言い合いました。今井歴矢さんからは身体的なところでの意見をいただき、月読彦さんからは言葉少なにですが、適格なアドバイスがありました。また今回欠席の上野憲治さんの役柄への意見が出ました。上野さんは稽古のあと役柄がなかなか抜けないのだそう。憑依系の役者なのです。今の段階で役柄が抜けないというのは看過できない問題です。みんなに意見を求めると田口さんから。役どころに救いを作ったらどうだろうかといいます。当初真逆の悲劇的な人物として設定しましたが、田口さんの意見を採用。するとオムニバス3つがひとつにつながりました。自分の中だけで考えるのは限界があり、稽古、リサーチ……他者の意見に耳を傾けることが大切なのだといまさら感じたりもしました。

田口さんは以前から吾野を知るために山に登りたいとことあるごとに述べています。ここへ来てハッとしました。田口さんには未だお伝えしていませんが、彼が演じる役柄と山に登るという行為は、確実に芝居を深めていく過程だと言えるでしょう。何故ならば山を登った先に田口さんの役柄へのひとつの解答があるからです。これまでのやり取りを振り返ると、川津が考えている、筋書きを作っているというより、土地に、吾野という地霊に導かれているのだと感じることが多々あります。シーンを新たな目線、解釈をもとに発展させていきます。

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