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なづき、吾野の歴史に触れる

2023年1月9日(月・祝) プロジェクトなづき稽古

吾野宿公演稽古、2回目です。12時過ぎに現地集合、吾野宿レストランで昼食の後、簡単に稽古の流れを確認。そして館の中庭へ向かいます。

ウォーミングアップとして田口和さんによるインプロゲームを行いました。日頃とは違った頭や、反射力が試されるゲームです。二つ目のゲームが始まると、吾野宿23代目当主大河原さんが体調がすぐれない中なんとか整えての登場です。
それを機にゲームは切り上げました。大河原さんを語り部として吾野の歴史を学ぶ初日だったのです。

吾野という地域は、古く高句麗からの渡来人や彼らから技術を学んだ者たちが育んだ土地です。町には彼らの存在を伝える高麗神社や伝承が多く残っています。高句麗は山岳民族で、馬を操る技術に長けた者たちです。そうした技が平家を倒して、鎌倉幕府成立に寄与したのだといいます。なるほど。山岳信仰地帯でもあり山伏も沢山いたそうです。江戸時代になると山に住んでいた者たちが日用品を買いに降りてきたり、吾野宿という宿場町を形成します。関所を通れない、いわくつきの者たちの宿場町でもあったのだとか。
当然ながら林業が盛んな土地でした。日本の高度経済成長に入る前までは三代にわたり森林を管理してきたそうで、祖父が植えた木を孫が伐り倒す、そのようなサイクルを巡る山間の町でもありました。町は高麗川を中心に広がり、川が生活に欠かせません。筏師という職業があったそうです。江戸期の鳶や火消しがそうであるように、林業の中での花形職業だったそうです。彼らは江戸まで川を使って木材を運んでゆきます。江戸といえば、情報が集まる場所です。ホットな情報を芸者さんから聞き、村へ持ち帰ったそうです。そうした営為がスター職業と目される由縁なのだとか。面白いですね。次はさらに貴重な資料を共有しましょうという大河原さんでした。役者それぞれの役作りに活かせそうなおはなしばかりです。次回も愉しみ。

演出は今回、できるだけ「我」を出さない、仮に出したとしても調味料のような感じで「毒」を入れる、それくらいに思っています。今回の公演に関わってくれるメンバーが生き生きと自発的に発言でき、土地をリサーチすることで作品を生成してゆく……そんな現場を目指しています。
「我」というものは根が深いなあと自覚したひとコマがありました。作品稽古では初日の稽古で役者それぞれが発した台詞で構成した仮留め台本の読み合せをしました。その際、今井さんが「ここは私がこないだ言った台詞と違うな」と言いました。そこでハッとしました。演出の「我」/思い込みで台詞の誤読をしていたのですね。よき気づきとなりました。その後台本を持たずに即興的にアクトを繰り返します。伸枝さんの登場シーンが変わり、場面がどう変容してゆくのかワクワクします。

また今回の稽古から山田零さんが合流。田口さんと山田さん、川津でオムニバス作品の最後を飾る予定の出し物を稽古しました。
山田さんは作・演出が本業の役者さんです。観客席から観たら絵になるだろう絶妙な立ち位置で田口さんとのやりとりがスタート。当初山田さんの役どころは田口さんの発する言葉に反応してゆく役割だったのですが、やり取りを経て、その関係を逆転させてゆきます。山田さんが田口さんからいろいろと打明け話を引き出すと立場は入れ替わってゆきます。さすがです。きっかけとして決まっているものと場面への参入具合が噛み合うともっと素敵になるだろうなと思いました。川津もがんばらねば。

ラストは上野憲治さんの抜き稽古です。上野さんに狐憑きのアウトプットをお願いしました。上野さんは爽やかな役も似合いますが逸脱や欠落の多いキャラクターも瞬時に身体的に掴める方なので、他の役柄……例えば田口さんや今井さん、伸枝さん、山田さん、そしてゴーレム佐藤さんと絡む場面になったらどのような化学反応を起こすのか、今から待ち遠しいです。

田口さんに演出のお稽古をここ一年ほどつけてもらっていますが、ちょこっとだけ違和感への気づきの幅がひろがったようです。次回は月読彦さんと川津の地元でのお稽古。晴れるといいなあ!

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