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【予算850億の元バイヤーが解説】ワクワクが止まらない。遂に商品作りました。其の三

こんにちはのじです。
(私の記事は #NP企画  で検索できます)

大手ドラッグストアで10年化粧品バイヤー、1年半雑貨のカテゴリーマネージャーをしていました。辞める年は予算850億を管理していました。

今は化粧品メーカーでマーケティング本部のディレクターやってます。

このシリーズでは私がバイヤーの経験を基に実際に開発しているシャンプーについて、発売に至るまでの戦略や他の企業にも応用できる考え方を公開していきます。

2019年7月発売で開発中の商品

『ソイアミ モイストシャンプー』


其の一はこちら↓
【予算850億の元バイヤーが解説】遂に商品作りました。ワクワクが止まらない。其の一|のじ(ノジプロ企画)|note(ノート)https://note.mu/npkikaku/n/n40dd3958cd8b

其の二はこちら↓
【予算850億の元バイヤーが解説】遂に商品作りました。ワクワクが止まらない。其のニ|のじ(ノジプロ企画)|note(ノート)https://note.mu/npkikaku/n/n7cae8380ee3b


掲載の内容と掲載日

▪️何を作るか? (其のニ)5.10
▪️ターゲットをどうするか? (其のニ)5.10

▪️どんな差別化を図るか? (其の三)5.18
▪️スケジュールの決め方 (其の三)5.18

▪️販売戦略の決め方 (其の四)5.25
▪️プレゼンで意識したこと (其の四)5.25

▪️見込みと商談後のギャップ (其の五)6.8
▪️まとめ&今後のプラン (其の五)6.8

前回までの話で何を作るかターゲットをどうするかについて記載しました。

今回の内容

①どんな差別化を図るか?
②スケジュールの決め方

①どんな差別化を図るか?

ターゲットを絞ったと行っても既に世の中にはシャンプーがあふれています。他の商品とどう違いを訴求するか、つまり独自性をどう出して行くかが重要です。既存の商品と似たような訴求では店頭に並べてもらうのは困難です。どんなに使ったらよいものでも店頭に並べてもらえなければお客さんの目に止まる可能性はほとんどありませんし、もし店頭に並んでもお客さんに選んでもらわなければ使ってもらうことさえできません。

芸能人でも同じですよね。いくらイケメンや美人でもすでに同じポジショニングに人気のある人が多数いたら日の目を見る事は容易ではありません。ましてや独自性がないと居場所を確保し続けるのは相当ハードルが高くなります。

シャンプーはすでに世帯浸透率も100%近く、基本の機能による差別化はほぼ難しいカテゴリーです。 また価格による差別化も体力勝負になってしまい大手と張り合っても疲弊してしまうので得策ではありません。

大手以外が出来る3つの差別化ポイント

1、品質による差別化

泡立ち、指通り、香りの持続性、肌への負担など全ての項目に関して圧倒的な品質の違いを持たせるのはなかなか出来ません。ここだけは拘りのポイントがあって自信があるという点を持たせる事が重要です。ただし価格の相場に見合う品質でないとダメですが。

ソイアミでは

サロンのシャンプーに負けない品質にするためにシャンプーの命である洗浄成分をアミノ酸系と植物由来の洗浄成分をバランス良く配合して『きしまずに潤いながら洗える点』とヘアマスクを使用した時に『髪がツルツルになる使用感』に拘りました。

担当してくれた製造工場の方が知識や経験が豊富で、品質に妥協しない方だったので何度も試作品を繰り返して実現する事ができました。

ちなみに市販のシャンプーとサロンシャンプーの違いとしては『市販のシャンプーは使用した時に泡立ちや香りの強さ』を重視していて、『サロンのシャンプーは使い続ける事でスタイリングがしやすくなる、髪質が良くなる事』を重視して開発されていると言われています。またサロン用ではトリートメントやヘアパックは手触りの効果が実感できる濃密な処方になっている事が多いです。 

②コンセプトによる差別化  

ここは1番差別化がしやすいポイントかもしれません。ただし何でも良い訳ではないので消費者のリサーチやストーリー性も発想力が重要になってきます。

例えばシャンプーなら『ノンシリコン』『ラウレスフリー』『ボタニカル』という大きな枠のものから『真珠エキス』や『ゴールドシルク』や『ハチミツ』等の成分的な物、『有名美容家が開発』や『皮膚科医監修』という権威的な物などいくつかの要素の組み合わせでより独自性を産み出す事が出来ます。

私の経験上コンセプトの成分は商品のイメージとマッチしている物で以下の物がおすすめです。

▪️広い世代に支持されている
▪️市場として根付いて居る
▪️希少性が高い
▪️産地が指定されている
▪️イメージが良い
▪️商品と親和性がある
▪️色、見た目が良い

ソイアミでは

髪の保湿に優れた豆乳と20種類のアミノ酸によるダブルの保湿ケアをコンセプトとしました。

何故豆乳に注目したしたか?

保湿効果のある成分でいいものはないかなと探していたときにあるお医者さんの論述で豆乳が髪の保湿に優れているという記事を目にしました。
豆乳と言えばスキンケアでなめらか本舗が保湿化粧品として日本のみならず世界で爆発的に売れています。

↓なめらか本舗公式HPより

そこで豆乳について色々調べていくと

▪️豆乳は髪の吸着しやすい保湿成分
▪️豆乳市場は日本で過去最高の売上を更新している
▪️アジア圏を中心に世界的に豆乳市場は伸びている
▪️カフェでもソイラテの需要が高い
▪️インスタでの投稿数が非常に多い
▪️豆乳鍋や豆乳入りスムージーなどが人気
▪️2018年豆乳アイスが流行
▪️豆乳は美容と健康に良いイメージが多い

といういう事がわかりました。

豆乳発酵液そのものはスカルプDボーテが頭皮のターンオーバーの訴求として配合していましたが髪の保湿にフォーカスした市販のシャンプーはありません。

↓スカルプDボーテはソイセラム配合

これはパイオニアになれるチャンスということで早速商社の知り合いに国産の豆乳発酵液を用意してもらい「アミノ酸と豆乳のダブルの保湿ケア」というコンセプトを固めました。

そして

『新時代に新市場で新常識を作る』

というワクワクするスローガンを掲げました。

経験上誰もやっていない事は否定的や懐疑的な声もありますがやはり圧倒的にワクワクします。そんな声も売れたら手のひらを返すはずですし売れなかったとしても殺される事はありません。

そこそこ自信があっていつか誰かがやるかも知れない事なら、周りを説得してでも自分が先にやった方がいいと個人的には思っています。

③顧客アプローチによる差別化

お客さんのサイレントマジョリティ(こんなの欲しかった)に訴えかける提案や使い方などをアピールするものです。
例えば、◯◯にはこれと言う提案、空間に馴染むデザイン、置きやすいサイズ、手軽さなんかもそうです。深刻な悩みよりもちょっとした不便や不満に応えてあげる部分になります。中身はあまり変わらなくても玄関にはこれ、押し入れにはこれと言う提案なんかもそうですね。

ソイアミでは

いつものあなたのシャンプーの後に使えるサロン品質ヘアマスクはこれと言う訴求にしています。ヘアマスクには自信があるブランドと言う差別化戦略です。

また視覚的に違いを出すのと効果感を出すために(ターゲット層への調査の結果)ヘアマスクは敢えてシャンプーやトリートメントのボトルとも色を変えました。

その背景には

▪️市販のヘアマスク(トリートメント)市場は縮小
▪️美容院のトリートメント実施率は年々上昇
▪️ヘアマスク何使っていいかわからない
▪️シャンプーと同じシリーズ使う事が多い
▪️満足しないと美容院でトリートメントする

と言うリサーチがあったからです。

せっかくいいもの作ったとしても使ってもらわないと意味がありません。まずは使ってもらうためにヘアマスクだけは他のシャンプーのユーザーもターゲットにする事にしました。

②スケジュールの決め方

結論から言うと

1、いつならアウト売場がとりやすいか?
2、いつなら小売に無理がないか?

この2点を意識して発売時期を決めるてそこから逆算してスケジュールを決めて行くと良いです。もし最初からアウト展開を狙ってなければ棚割実施の時期に発売するのが良いと思います。

そして発売月の月次商談がいつあるか、棚割商談がいつあるかを抑えた上で、その時にどんな情報を用意しておくとバイヤーが良い判断しやすいかを考えてスケジュールを決めて行きます。

バイヤーは商談の時にやるかやらないかを判断するのでその時に何も情報が決まっていない状況ではいい返事をもらえません。自社の都合ではなく小売のスケジュールに合わせて進めて行きましょう。

↓こちらの記事も参考にしてください

【予算850億の元バイヤーが解説】バイヤーのスケジュールを把握していつ何をすべきかを考えて行動する|のじ(ノジプロ企画)|note(ノート)https://note.mu/npkikaku/n/n85e4792c235d

今年は10月に増税があるので今年に関してはそこも考慮しておく必要があります。2014年4月に増税があった時は3月の売上は前年比150%超えでしたが増税後の4月は前年比75%位でそこから10月くらいまではずっと前年を下回りました。

つまり今回も増税前は客数が増えて駆け込み重要が発生するが増税後は消費は冷え込む事が想定されます。そのため増税前には商品を並べて起きたいものです。

ただし例年8月、9月上旬は大手メーカーの発売が多いと想定されます。更に9月中旬以降は増税前で値札の入れ替えや売れる商品の補充等で店が忙しくて売場を変えたりする時間が取りにくいはずです。

以上の事を踏まえてソイアミは7月上旬に発売することにしました。(余裕を見て6月下旬にゴールを設定)ゴールが決まったら後はそれぞれやることを決めてスケジュールを決めて取り組んで行くだけてす。

10月から発売までの約9ヶ月、サポートをしてもらいつつ勉強のために極力1人で企画から営業までやらせてもらいました(外注は除く)。初めての商品開発でこんなにあれこれやらせてもらえて本当に会社には感謝しかありません。

またソイアミ以外も同時で3品の商品企画を進めているのでそれぞれのスケジュール管理をしてバランス見ながらせこせことやっています。守備範囲は広めですが残業はほぼ0でちゃんと毎月有給も取っているのでとてもホワイト企業です。

主なやることと実施期間

▪️ターゲットを決める 10月
▪️コンセプトを決める 10月
▪️キャッチコピーを決める  10月
▪️容器の形を決める 10~2月
▪️商品名を決める 10月
▪️商標登録する  12月
▪️JANコードを取得する 2月
▪️容量を決める 11月
▪️販売価格を決める  11月
▪️商品デザインを決める 10~11月
▪️色を決める 10~3月
▪️成分を決める 10~2月
▪️使用感を決める  10~3月
▪️香りを決める 10~3月
▪️販促物の種類を決める 11月
▪️販促物のデザインを決める 11~5月
▪️広告を決める 4~7月
▪️発売前提案(一部企業) 12~1月
▪️月次商談 3~5月

知らなかった事も多く勉強になります。

其の4につづく(5.25リリース)
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最後まで読んで頂いてありがとうございました。

のじ

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