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Phantom~High Jumpの読書記録~(ネタバレあり)

High Jumpの読書記録のコーナー!

今回読了したのはこちら!!!

羽田圭介先生の「Phantom」です!
羽田圭介先生の作品は数年前に芥川賞を受賞した「スクラップ・アンド・ビルド」を読んだことがありますが、当時の自分は読書に面白さのみを求めていたため、なんだこの話、つまんな、と感じてしまった記憶があります。(浅はかですね笑)そんなこんなであまりいいイメージのない作家さんなんですが、僕の大好きなYoutubeチャンネル「ほんタメ」の中であかりんが紹介をしていて、株とかオンラインサロンを題材にした話ときいて、株に興味があり、投資本を結構な数読んだ自分としては、内容が気になり購入しました。以下紹介動画です。

 外資系食料品メーカーの事務職として働く元地下アイドルの華美は、生活費を切り詰め株に投資することで、給与収入と同じ配当を生む分身(システム)の構築を目論んでいる。
 恋人の直幸は「使わないお金は死んでいる」と華美を笑い、とある人物率いるオンラインコミュニティ活動にのめり込んでゆく。そのアップデートされた物々交換の世界は、マネーゲームに明け暮れる現代の金融システムを乗り越えゆくのだ、と。
 やがて会員たちと集団生活を始めた直幸を取り戻すべく、華美は《分身》の力を使おうとするのだが……。

帯より引用

 ニューヨーク株式市場の開かれる時間にはパソコンを開いてチェックするほどの彼女と怪しいオンラインサロンの活動にのめり込んでいく彼氏の話。この時点でうまくいく気がしないのだが、予想通り、二人の関係がどんどん崩れていく様を羽田先生の毒たっぷりに描かれている。
 昨今、国民の株に対する意識高まったり、巷にはうさんくさいオンラインサロンを信仰してやまない、いわゆる意識高い"系"がはびこっているように感じるが、それらに対し、大丈夫か?おまえら、といっているのではないかと思う。自分は株に興味があり、どちらかといえば、華美寄りの考えだが、お金を増やすといってもその先にあるのはなんなのかをしっかり見据えて投資をしないといけないなと思った。そうしないと複利の誘惑に飲まれ、資産を残したまま死ぬことになる。そうなったらまるで意味がない。何事もどこまでやるかではなく、どこで辞めるか、要するに引き際が重要なのだ。
 もう一つ感じたのは、結婚相手や交際相手に求める条件として、お金にだらしなくない、ということをよくきくが、実際はお金にしっかりしすぎていない、という条件も入るんじゃないかと感じた。主人公の華美は、生活費を切り詰め投資に回すほど、お金にしっかりしていた。しかし、同年代の異性にはしっかりどん引きされていた(笑)でも、その人たちの気持ちも分かる、日本人の凝り固まった考え方として、お金にとらわれている人に嫌悪感を感じてしまうからだ。かといって、投資とか何も考えてないんだよね、別に何もしなくても大丈夫でしょ、といっている人はいかにもお金にだらしなさそうだ。どっちもどっちである。これに答えはあるのだろうか(笑)

印象に残った場面をいつも通り紹介します

これは、趣味の1つがサーフィンである華美が、サーフィンをする際にシミができないようにと日焼け止めを徹底的に塗るのだが、そんな時、ふとあることを思ったシーンである。

若いときはタダで持っていたものを維持するための努力は、結局のところ虚しい。そんなことにとらわれていたら、若かった頃の自分に勝てないままの余生になってしまう。だから今をもっと楽しみ、若さを維持するためだけの努力は早く手放したいとさえ、華美は思っている。

そのとおりだなぁと感じた。じゃあそんな努力はしない方がいいのか、ということになってしまうが、個人的にはそうでもないと思っていて、そのために2点、どちらか、もしくは両方を変えるといいかなと思った。まず、現状維持のための努力はやめるということ、その努力によって現状打破であったり、自分をアップデートできるのであれば、それは苦しくてもやる価値はあると思う。そしてもう一つは、その努力を本人が楽しいと感じていること、仮に現状維持であってもその努力が苦ではなく、楽しんで行えているのであれば、それは続けるべきだ。どちらかといえば後者の比重のが大きく、たとえつまらないことでもその中に楽しさを見出せる能力というものは人生を生きていく上で相当なメリットがあると思う。

最近20代半ばにさしかかり、人生の不安があるからなのか、投資しようかなぁと言い始める人が自分の周りにもちらほらいるが、まず、投資に関して勉強はしたのか?といいたい(インターネットで軽く調べたことを勉強したと思っている人がいて、う~ん…と思ってしまうこともよくある笑)そしてその際には「Phantom」を渡して読ませてやりたい。右ストレート1発。

ものすごく皮肉が込められた作品だったが、面白さと同時に頭を冷やされた感じがした。こんなようにはならないようにしたい。
ではまた次回、バイバーイ

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