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中古のおうちと土地を買いました

神奈川県の西端の山の中に、中古のおうちと土地を買いました。

といっても今回急に田舎に移住するというわけではなく、今住んでいるところから10分ほどの場所です。なので、段階的移住がこれにて完了する、という感じでしょうか。

購入した不動産は、写真のようなところなのですが、どんな条件かというと、

[立地]

・JR藤野駅まで車で15分(藤野駅は新宿から70分)

・スーパーやコンビニまで車で10分

・温泉まで車で10分

[不動産]

・土地面積1400㎡以上(山林や原野含む)

・築20年の2階建て一軒家

・築年数不明の2階建て建物(現在倉庫)

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ちなみに驚くことに路線バスが通っていません。以前検証されたそうですが、利用者が少ないために開通は見送りとなったそうです。

あとソフトバンクは圏外なのでワイモバ利用者の私はキャリアを変えないといけません。

飲食店やお店もほぼありません。

まぁつまり、とっても不便です。


ちなみに今住んでいるところも同じ藤野なのですが、立地的にはかなり便利です。

・駅まで徒歩15分、車で5分

・コンビニ徒歩2分、スーパー徒歩5分

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これでも都会から比べると不便ですが、徒歩圏内で一応生活が完結できるのはだいぶ楽です。


じゃあなんで、そんな不便なところに家を買ったのか?たぶん10人中9人には質問されそうなこの疑問に回答していきたいと思います。


移住第一段階

そもそも今回の住宅購入の前に、今現在なぜ藤野にいるのかを説明しなきゃいけませんね。

私の地元は千葉ですが、大学から東京へ出て、近年は池尻大橋→経堂と、世田谷区に暮らしておりました。

経堂時代に結婚をして、そのときに「30歳で子どもを産んで、その前後で段階的に田舎に移住したい」みたいな絵を描いていました。

その目標に忠実にいこうと思っていたわけではないのですが、経堂の部屋の2年目の更新の頃、突然思い立って、「ちょっと田舎のほうの可能性探ってみたい」となり、「都内に電車で通える距離の山のあるところ」をグーグルマップで探し始めました。

そして1つ目に足を運んでみたのは、同じ小田急線沿いの秦野。登山では行ったことがあったのですが、あらためて駅に降り立ち、歩きながら町を眺め、向こう側に見える山の方まで散歩をしました。

3~4時間歩いてみて、「住みたい風景とは違うなあ」と思って候補から消しました。

そして次に行ったのが藤野です。藤野は友人に連れられて何度か遊びに行ったことがあり、いいなあと思っていた場所ですが、まさか自分が住む側になるなんてことは想像もしていませんでした。

ところが藤野を同じように散歩してみたら、これはやっぱりいいなあとなってしまい、ついでに賃貸のお部屋を探してみたらこれまたほどよい物件を見つけてしまい、衝動的にお引越しを決めてしまいました。

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このときはぶっちゃけそんなにリスクは考えていなかったです。通勤がちょっと遠くなるくらいだし、賃貸だから嫌になれば東京にいつでも戻ればいいし、家賃めっちゃ安いし。

ちなみに家賃はどんなものかというと、経堂で住んでいた1LDKが13万円に対して、もう少し広めの1LDKで6.5万円です。この辺だと相場は5万円くらいなのでリノベ物件ということでちょっと高めではあります。

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そんなこんなでお試し移住が始まったのが2年半前です。でも私的には、これはまだ移住だとは思っていませんでした。ちょっと遠めのお引越しです。

藤野で過ごした2年半

コロナ以前と後、また妊娠前と妊娠後とでは状況が変わってしまったので、まずは以前のことを書きます。

以前は、渋谷(その前は新宿)のオフィスに週3~4日通い、残りは自宅でリモート勤務でした。通勤はとくに苦と感じることはなく、むしろ都会に出る楽しみもありました。

固定費を抑えて暮らしながら、都会の物質的豊かさも享受するというような感じです。都会は都会で刺激的で楽しいけれど、都会的価値観だけにどっぷりだと疲れてしまう私にはほどよいバランスでした。

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通勤の電車は長いのでゆっくり本を読み、駅から家までの帰り道は山々を眺めながら四季を感じてリフレッシュします。週末は車で山梨や長野まで足を伸ばしたり、都会へ出たいときは八王子や立川が近いですし、たまには美容院やショッピングのために都心の方まで出たりもします。

人混みが少なかったり、週末の渋滞を避けられるのもポイント!

また都会では希薄になりがちな地域のコミュニティ、程よい距離感の人間関係があることも魅力的です。

藤野には地域通貨のコミュニティがあって、物々交換や助け合いが日々行われています。トップダウン型で物や情報が流通するのではなく、住民それぞれが得意なこと、好きなことを提供したり、享受したりしながら横に緩やかに繋がって、ものごとがめぐっていくような経済圏がここには存在しています。

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私も赤ちゃんが産まれることを思い切って投稿してみると、先輩お母さん方が不要になった赤ちゃん用品を譲ってくださったり、この地域での子育て事情を教えてくれたりと、一度も顔を合わせたことがなくても助けてもらったり、コミュニティの恩恵を受けることができるし、また自分も何かを提供する側にまわることができるのです。

これは、コミュニティの地域と人数が限定されていることが大きいと思います。


住まいのことを考えたコロナ禍&妊娠期

あらゆる人の生活が、新型コロナによって何らかの影響を受けたと思いますが、私の場合はコロナと妊娠がぴったりと重なったことによって、「コロナだし妊娠だから」と二重の意味で生活が大きく変化しました。

コロナの感染者が日本で出始めた頃、私は妊娠初期で、緊急事態宣言の発令期間がちょうどつわりと重なり、そして感染拡大の第3波の最中に出産となりました。

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私の勤務先は早々に自宅勤務推奨などに切り替わり、私は3月頃からはほぼ自宅、ときどきオフィスに出社というスタイル。コロナが終息に向かうことはなく、そんな状況のまま産休に入りました。

このような大きな生活の変化は、多くの人に今後の生活を考えるきっかけを与えたと思います。

コロナ禍において住宅の購入は活況だそうですが、東京都内でも駅近にこだわらない購入が増えているそうです。

私の場合、今のような状況においては住む場所はほぼ関係ないということを、ちょい田舎暮らしの身として十分に感じました。もともと通勤がそんなに苦ではなかったとはいえ、多くの時間を費やしていたことは事実なので、その分を削減できること自体はメリットです。

なのでぶっちゃけ今のままで丁度よいといえば丁度よいのですが、子どもを産むとなると今の1LDKはキツイものがあります。いずれは引っ越ししなければなりません。

だから、コロナというよりも妊娠がわかったことで、少しずつ次の住まいのことを考えるようになりました。そして、今のコロナ禍の状況がその過程に影響を与えたことは間違いないと思います。


緊急事態宣言が明け、つわりも落ち着いてきた今年の5月頃、具体的な住む場所について考え始めました。

その頃はまだ正直都会への未練もある気がしていました。しかし渋谷生まれ&育ちの夫は、「都会はもういい」と断言していて、すんなり都会ではない方向で検討することになりました。夫の意向がなければ、優柔不断な私はウジウジと都会の選択肢も含めて考えてしまっていたかもしれません。

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前と同じようにまたグーグルマップを眺めながら、「このへんってどうかな」と可能性を探っていました。ところがなかなかイメージと条件が合うような場所が浮かんでこない。

それでほんのためしに藤野の不動産情報を見てみることにしました。

藤野は移住先として人気な地域で、このコロナ禍でもすでに入居してきているひとがちらほらといる状況だったので、運良く物件に出会えるとは期待していませんでした。

ちなみにこのときは賃貸があればいいなと思っていたのですが、賃貸なんてほんとうに選択肢がありません。

そしたら、見つけてしまったのです。今回の物件を。


「ここに住みたい」

それでまた試しに見に行ってみることにしました。(いつも「試しに…」からすべてが始まってしまうのだけど。)

実はそのとき2つの物件候補があり、写真を見る限りではもう一つのほうがザ・古民家で趣があっていいなあ!と思っていました。

ところがいざ実際に見に行ってみると、期待していなかったほうに惹かれてしまったのです。

というのも、圧倒的に美しい山風景が家から一望できる。家の目の前を川が流れている。ご近所さんと距離があるので、庭でのんびりが叶う!

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え、そんなこと?と思うかもしれませんが、その風景に一目惚れしてしまい、急に中古のおうちを買うという選択肢が現実味をおびてしまいました。

なぜかと考えてみると、現在の住まいの不満としては、せっかくの山に囲まれた地域なのに、家にいるとほとんどその気配を感じられない。家が密集している場所なので、温かい日に庭でのんびり読書…みたいなことが叶わない。

ということがあって、「場所は関係ない」からどこにでも住める今だけど、せっかくの田舎をぞんぶんに享受できるような「家」でなければ、それこそ田舎に住む意味も薄れるのではないか。という気がしていたのです。

今住んでいる場所は藤野の中でも本当に便利なエリアで、移住者にも一番人気、新築住宅もどんどん増えているような状況で、地価も高めと、ちょっとしたバブルです。そんな場所で私が求める暮らしは叶うだろうか?というと、「だったら都会とどっこいどっこいなのでは」という気がしました。

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なので、藤野(田舎)に住むならば、便利な今の場所よりも、もっと極端に藤野(田舎)らしいところに行きたいと思ったのです。

そしてその理想の風景は、そのおうちにありました。


それから、「本当にここでいいのか」という問いかけを夫婦で何度もしました。いくら理想とはいってもやはり不便。

今はコロナでリモート勤務だけど、落ち着いたらどういうワークスタイルになるかわからない。子どもが成長していったときに、不便さが問題にはならないか。

とにかくデメリットを考えたらいくらでも浮かんできてしまうし、二人の両親もまったく賛成はしていませんでした。

でも最終的にはえいやっと購入を決めてしまいました。

これはもう前回の引っ越しとは違います。

本当はすごくビビっていて、「とはいえ安いし、やっぱり無理ならまた売ってやり直せばいいのでは」とか退路を用意しようとしていました。でも退路のことも考えるのはやめました。腹をくくってここで暮らしていくのです。


どんな暮らしをしたいですか? - あまりにも大きな問い

住処の選択は暮らしの選択です。

何かを選択するということは、他の何かを少なからず諦めるということです。

私の今回の家を買う決断は、ひたすらに前向きで迷いのないものに、はたからは見えるかもしれません。でも実は心に引っかかることなんて、ありまくりです。

楽しかった都会暮らしにはもう戻れないと思うと胸も痛みます。

でもそんなときには、反対に都会暮らしを選択していたら、あの風景を諦めたことを思ってもっと胸が痛むだろう、と想像して、心を鎮めるのです。

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いつも、何かを二項対立で考えるのはよそう、と思いながら、今回田舎と都会を比較してしまうことをお許しください。


私が今回このような新しい住まいの選択をしたということは、やっぱり、単純な田舎暮らしの選択ということ以上に、私にとっては少し意味のあることなのです。ちょっとだけそれについて書きます。


私は人生ってハードモード!なかなかしんどい!っていう感覚があって、なぜそうなのかって考えると、世間の「こうあって当たり前」みたいなものを無意識に持ってしまい、そこに合わせにいかないといけないというような脅迫観念があるのだと思います。―今思うとそれは誰かに押し付けられているというより、本当は自分自身で作り出してしまっているのかもしれませんが、とにかく―そういうものから全力で逃げ出したい人生なのだと思います。

それっていうのはたとえば、ほかの人よりも努力しないと転落しかねない競争社会です。ほんとは肩の力抜いて生きたって転落はしないのだと思いますが、なぜか人一倍そういう恐怖を抱えて、緊張状態でガチガチになって生きてしまうようです。(自分で書いてて自分がかわいそうに思えます。)

だから私は、そのような競争が当たり前にある社会の、前提となっている、資本主義やグローバリズムが浸透しきった「帝国主義的生活様式」(『人新生の「資本論」』より)なるものから、できるかぎり距離を置きたいのだと思います。

ひとつはこうした自分の内面的な事情が、「都会からの逃亡」という行動を生んでいるような気がします。つまり、都会で、都会的な消費中心の生活を謳歌しながら、高い家賃やローンを支払って、その暮らしを維持するために追われるように労働に勤しむというスタイル。実際には、そういうスタイルを営むこと=「追われる」という感覚を皆が持つわけではないと思うものの、私はどうしてもそこにしんどさを見出してしまう。だからそこから「逃げる」という道を必要としているのです。


もう一つは、これもひとつ目と大きくオーバーラップしますが、誤解を恐れずに言うと、上記のような都会的生活様式・価値観と、その土台となる資本主義システムが、地球や人や社会に対してダメージを与える要因となっている、というような考えを私は持っています。

そのことから、そのシステムの改善あるいはつくりなおしを自分のミッションとして掲げてきました。その実践の一つが今仕事で関わっている事業でもありますが、自分自身の生活においても一部システムからはみ出るような実践が可能なのではないかと思っています。

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その一つの方法として、地域内で小さくモノ・コトが循環する経済圏の中に身をおいて生活を営んでみる。それが、今回の「田舎暮らし」の選択とリンクしてくるというわけです。

そういう意味でも、都会の暮らしを選択するよりは、自分としての筋が通っているような気がします。人間は、どうしても一貫性を求めたい生き物なので、このような意味付けは、たとえ後付けであっても、自分の心地良さのために、意味のあることなのかもしれません。(まあ、都会暮らしを選択したらしたで、それに対する意味付けもまた可能であるわけですが。)


はじまりはここから

そんなわけで、「田舎でスローライフバンザイ!」の一言で済んだかもしれないのに、あれこれ御託を並べてしまう、気の小さな私なのであります。

それで、家を買ったはいいけれど、実はこれからリフォームをします。

しかもまだ子どもが生まれたばかり、ということもあり引っ越し自体はずいぶんと先になりそうです。

次のステップとしてはリフォームの計画を立てながら、これまたどんな暮らしを営みたいのかについて煮詰めてゆかねばなりません。こんどは、概念的なことではなく、もっと、具体的な暮らしのことを想像しながら…。

というわけで私たちの、ヨチヨチ田舎暮らしのはじまりをあたたかく見守っていただければ幸いです。なにとぞ。

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