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俺と格闘ゲームの話 7 ~NEOGEO KOF94及びその他の格ゲー編~

1,テリーvsリョウの夢がかなったキング・オブ・ファイターズ ~KOF94~

 当時のクソガキが格ゲーで一番夢見たものはなんだろうか。これは断言できる。
 ストリートファイターと餓狼伝説が戦う事。
 それもリュウとテリーが戦う事だった。

 リュウとテリー。どちらも代えがたい魅力があった二人。企業というものを知らないからリュウとテリーが同じ舞台で戦う事はいつか必ず来るものと思っていた。後々クソガキどもが格ゲーを忘れ、高校を過ぎた後にその夢はかなっているのだが、それは別の話。
 そんな格ゲーがクソガキの中で安牌として扱われた頃、一つの情報が飛び交った。

「テリーとリョウが戦うゲームが出るらしい!」

 リュウほどではないにせよ覇王翔吼拳と龍虎乱舞で存在感があったリョウ。一応餓狼伝説SPECIALで裏キャラとして登場したが、それはあくまでおまけである事くらいはクソガキ共も知っていた。
 そのおまけが正式タイトルとして行われる。

 テリーvsリョウ。アンディvsロバート。
 こんな夢のカードが発生する。

 クソガキどもにとっては大騒ぎであった。
 それほど餓狼伝説や龍虎の拳は一大コンテンツとなっていたのだ。

 とは言ったって情報自体が限られていた90年代前半。インターネットどころかウィンドウズすらなかった頃に得られる情報なんて限られているわけで。
 この二タイトルがぶつかるゲームが登場する、以外の事で盛り上がる事はなかった。
 例えば格ゲーブーム前に生まれた怒のキャラクターであるラルフ、クラーク。サイコソルジャーのキャラクターであるアテナなんかは隅に追いやられていて、クソガキ達の間では知る人ぞ知る、みたいな扱いだった。
 言い換えたらそれくらい格ゲーブームってのはすごかったんだけど。
 なんならKOFの主人公として添えられていく草薙京ですら最初は名前すら出なかった。
 パッケージにいる学ラン野郎は誰だ。そこはリョウだろ、って雰囲気があったのだ。彼らがキャラクターとして存在感を現していくのは95以降である。

テリーや不知火舞がいるのはわかる。
だがこの学ラン野郎や裸なやつらは誰だ、リョウ達じゃないのか、って感じだった94当初

 一応うちのクソ田舎ではKOF97,98までが現役世代がおり、その頃になって対戦で強いキャラとしてラルフやクラークの名前が出てくる事になるが、もうその頃には格ゲーは定番化していたのと同時にクソガキどもの興味はポケモン、デジモンなどのポケットゲーム機に移っており、ついでの存在に変わってきた事は否めない。
 せいぜいプレイステーションを持っている家庭でやるくらいか。
 90年も中盤を過ぎ、バーチャファイターをはじめとする3D格ゲー旋風を過ぎると話題の中心からどんどん遠ざかっていき、KOF97以降は話題に上がる事は稀、という格ゲー衰退期に入っていく。
 ある意味プレステで出ていたから辛うじて話題に出た程度で、クソ田舎でもなんとか生き永らえていたというような状態になっていったのは間違いない。
 この辺りは格ゲーの熱が落ち着いてきた頃の違うところで語る。

 ただ、加熱した格ゲーブームの頂点には間違いなく餓狼伝説と龍虎の拳がぶつかるドリームマッチを興したKOFの存在があった。

2,新しい格ゲーはなんだかんだ知っている、という風潮とるろうに剣心 ~サムライスピリッツ~

 意外ではあると思うが、うちの田舎ではサムライスピリッツはあまりメジャーではなかった。

 刀という要素があるから一定の需要層はいたものの、出た時は知る人ぞ知る、という作品だった。
この作品の知名度が上がっていくのはどちらかというと熱を帯びたのは94年以降。スーファミ版の登場と、それと同じくしてジャンプで連載が開始し、アニメ化まで行った「るろうに剣心」があって初めて高い知名度を誇ったと感じる。

 るろうに剣心のアニメ化は96年なのでジャンプ購買層以外にブレイクするのはもうちょっと後なのだが、ジャンプで刀を主体にした漫画が始まっていて面白い、という噂は小学生には持ちきりだった。

 刀が流行ると当然クソガキどもはそれに見合ったゲームを求める。プレステが台頭してくるのはもう少し後なのでまだクソガキどもの家ではスーファミが酷使されていたころ。
 スーファミで出ていたサムスピに人が集まるのは当然だった。

 だがこの頃は格ゲーも少しずつ落ち着きを見せ始めていた頃。どちらかというとクソガキの目は聖剣伝説2やファイナルファンタジー6、95年に登場するクロノトリガーやドラクエ6、聖剣伝説3などのスクウェア、エニックス作品に目が行っており、格ゲーがメインから段々外れていたので実際プレーをした事があるクソガキは少なかったのではないか。
 特に後述するがドラゴンボールの存在感がでかく、鳥山明はある意味神格化されていた頃。クロノトリガーのCMでファイナルファンタジーのプロデューサー坂口博信やドラクエのプロデューサー堀井雄二の名前は知らなくてもキャラクターデザインに鳥山明の名前が出るとクソガキどもは反応するくらい名前が売れていた。

 そんな状態だからサムスピはどうしてもマイナーなところにいて、せいぜいナコルルとガルフォードが格ゲーする層に知られていた程度。

 それでも主人公格の覇王丸と当時ライバル格になっていた橘右京の名前を知らないクソガキはおらず、前述している格闘ごっこでは誰かが右京をやる光景があった。
 特に右京が人気だった背景には剣心と同じ居合切りのキャラクタ―だったこと。背中を見せる構えが妙にかっこよかったこと。秘剣ツバメ返しという大ダメージを出す必殺技があったこと。クールなキャラクター性が胸にひっかかるクソガキがいた、というところだろうか。
 必ず一人は波動拳に対してツバメ返しをしようとする奴がいた。

 まだ10歳になるかその前くらいのクソガキ達にはまだRPGのストーリーは理解が難しく、キャラクター性が最も強かった時代。
 その中でひときわキャラクターが立っている右京はなかなか人気だった。

クールで一撃必殺の技を持つキャラクター、というのは当時のクソガキにもかっこいいものと理解できる程度にはかっこよかった右京。


3,ADKから送られてきた刺客とスーファミの存在感 ~ワールドヒーローズ~

 クソガキ達にとってNEOGEO筐体は憧れであり、もっぱら主戦場はスーファミである事は再三言っていた。
 その中で妙に輝いているオリジナルタイトルがあった。

 それはADKがNEOGEOに向けて出したタイトル「ワールドヒーローズ」であった。
 忍者ハンゾウとフウマを基本としてこれまた際立ったキャラクターが多く出ている作品が妙にクソガキの間で知られていた。

 当時は格ゲーブーム。リュウっぽい奴とケンっぽい奴が出ていたらそこそこ売れた時代。その中でもリュウとケンの二人という分かりやすい対立関係で売り出したワールドヒーローズはまあ存在感があった。
 少なくともファイターズヒストリーよりは。

どう見てもリュウを意識して作られているハンゾウ。
それでも忍者というオリジナル性でそれなりに受け入れられた。

 恐らくファイターズヒストリーも持っているクソガキはいたのだろうけど、少なくとも俺の中では聞いたことはない。
 クソガキ共によって当時の格ゲーにはこのようなヒエラルキーがあったように思う。

 ドラゴンボール≒ストツー>餓狼伝説≧幽遊白書などのジャンプ格ゲー>龍虎の拳>ワールドヒーローズやマッスルボマーなどその他格ゲー>スーファミに出ていない格ゲー

 このヒエラルキーは格ゲーとしての出来ではない。
 どれだけスーファミが普及していて、ジャンプとアニメの力が強かったか、という相関図によって成り立っている。
 セーラームーンやらんま1/2の格ゲーもあり、それを格ゲーとして徹底的に洗い出す、いわゆる格ゲーマーという存在が出てくるのは90年代後半から00年代に入ってで、まだ対戦型キャラクターゲームとしての存在感が強かったのだ。
 美少女戦士セーラームーンS場外乱闘!?主役争奪編は女の子がやる格ゲーで男がやるものではない。らんま1/2爆裂乱闘編はマイナー雑誌の奴がやる格ゲー、みたいな扱いだった。らんま1/2が主人公が女の子になって(ドラゴンボールより)読みにくい、そしてみんなで観るアニメではないからマイナー扱いされるほどジャンプ、というかドラゴンボールが圧倒的にすさまじかったのだ。
 これが90年代中学生だったら漫画を読む力もついているからもうちょっと違った光景だっただろうが、小学生程度だとこれくらいの差があった。

 もはやスーファミ、ドラゴンボール絶対主義に等しい時代。
 それだけスーファミとジャンプアニメの存在が大きかったのだ。アスリート思考の強くなった今の格ゲー業界では信じられないだろうけど。
 漫画業界は今の鬼滅の刃がそれっぽくなりそう。恐らく20年後、子供の頃を振り返ったら鬼滅の刃以外は全てマイナー漫画、と感じていたと思い出す子供も出てくるだろう。
 当時のクソガキなんかはインターネットなんかないから尚更そうなりがちだったのだ。

 閑話休題。
 このワールドヒーローズにおいて妙に人気のあったキャラは意外にもマッドマンだった。

 今まで格ゲーのキャラと言えば人間大の大きさだが、マッドマンはどこかの部族というキャラなので大きな仮面をつけて戦う。それがあまりにもインパクトがあったのだ。
 仮面といってももう体の半分が隠れていて、仮面に手足が出ているような変なキャラクター。しかも相手に勝ったら踊りだす。

 そんなヘンテコなキャラクターがハンゾウ、フウマに続いて妙に受け入れられていた。ワールドヒーローズはほとんど触れていないクソガキでもこの三人だけはなぜか知っていた、なんてことも多くあった。

すっごいインパクトのあるマッドマン(右)。仮面を外すとかっこいい事を知るのは後。

 だからみんな真似はしたくないけど、格ゲーではヴィラン(悪役)として使う事も多かったキャラクター。実際のマッドマンというキャラクターは全然そんなことはなかったのだが、見た目がキャラクター性と扱うクソガキたちにとってはこの見た目は悪役、と言い切るには十分すぎた。

 そういう意味ではクソガキにとってもマッドマンは大切なキャラだった。

 次回からはNEOGEO筐体やSNKの話を離れます。

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