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(抜粋)ユング心理学入門書シノプシス[未刊行翻訳書の原書を分析したもの]

本シノプシスについて

本稿は、Ruth Snowden著 ”JungーThe key Ideas” 第1版のシノプシスである。バベル翻訳専門職大学院の修了作品(修士論文)の題材として筆者が本書を選定した際に作成した(後に全訳して、翻訳修士号を取得)。「シノプシス」とは「梗概」「要約」などの意味で、洋書の場合はその内容を分析したものである。通常は出版社が翻訳者に依頼して書かせ、市場調査などに用いる。

原書はユング心理学の入門書であり、筆者が別件でアメリカ留学中に大型書店で見つけておいたもの。アメリカで深層心理学は下火になっていたものの(著者自身はイギリス人)、その書店にはフロイトやユングなどのコーナーが設けられていて幸運だった。ちなみにヘッダーの写真は筆者がその日に許可を得て撮影した、まさにその書店のユング心理学関係書籍の棚である。

お断りとお願い

今回は著作権の問題を考慮し、シノプシスの9割を占める「各章あらすじ(要約)」の項目は割愛しました。どうぞご了承ください。本書の全訳がいつか刊行できることを望んでいますが、そのためには個人では動けず出版社どうしの契約締結が必須。ただし「読んでみたい」という声が多ければ実現する可能性も高まりますので、「スキ」にご協力いただければ幸いです。よろしくお願い致します。


<シノプシス>

1 タイトル

“Jung—The Key Ideas” 「ユング――その基本的な考え方」

2 出版社・刊行年・ISBN

McGraw-Hill Educationより第1版が2010年に刊行
(第2版は2011年刊行だが現在絶版・入手不可のもよう)

ISBN-10: 0071754865
ISBN-13: 978-0071754866

3 著者紹介

ルース・スノーデン(Ruth Snowden)

学生時代に『ユング自伝』を読んだことがきっかけで、難解な心理学を専門とするようになる。教師として働いた経歴を生かし、わかりやすく解説するのが得意。代替医療的なセラピーを実践した経験もある。過去に Ruth Berry の名前で夢分析に関する著書(”Working with Dreams”)を出版。その後、作家活動に専念し、15冊以上の著書を出版、世界12か国語に翻訳されている。主にフィクション作品のほか、フロイトやユングの概説書を手がけている。主な著書は “Understanding Jung”、”Understanding Freud”、 ”Freud—The Key Ideas” など。 

4 内容要点

深層心理学者にして精神科医、20世紀最大の思想家のひとりとも評される、カール・グスタフ・ユング(1875-1961)の心理学の学説を、ユングの生い立ち、人となり、当時の時代背景とともに概説。生まれるのが100年早かったと言われるユングの思想は、内的世界に外界と同じだけの重きを置く。精神疾患の臨床から人間の性格の分類、錬金術やグノーシス主義、易経の研究までに至る難解なユングの心理学を、ポイントを押さえたうえで簡潔に描写している。

5 目次全訳

・著者はしがき
・ちょっといいですか?
・5分ほどいいですか?
・10分ほどいいですか?・イントロダクション
・第1章 ユングの人生と経歴
・第2章 ユングの若き日々
・第3章 ユングの内的世界
・第4章 こころを探究する
・第5章 こころの旅
・第6章 夢と象徴
・第7章 人間の性格と対人関係
・第8章 秘教的なもの、および超常現象
・第9章 宗教と精神性
・第10章 先見者ユング
・用語解説
・もっと知りたい方のために
・索引

6 各章あらすじ(要約) [割愛]

7.感想・評価

本書は難解なユングの心理学・思想のポイントを押さえて簡潔にまとめ、一般人でも全体像が把握できるように紹介したものである。さすがに子供向けとは言えないが、専門用語に関しては巻末に用語解説があり、また基本的に本文のなかで説明されるので、予備知識は特に必要としないで読めるであろう。一般向けのため、文体も特に難しくない。筆者としては、具体例も豊富で読みやすいと感じた。内容はユングの生きた時代背景を考慮したうえで現代に通じるものを解説しており、アップ・トゥ・デートだと思う。議論の展開も順を追っているし、論理的飛躍も特に見られず、整合性は保たれている。イントロダクションに入る前に三段階にわたって全体の概観を示すなど、「わかりやすく書こう」という工夫の跡が見てとれる。純粋に人間心理に関心を持つ人ならば、スムーズに読めるのではないだろうか。

主な内容はユング思想の概説だと書いたが、難解なものをわかりやすく説明するには相当深い理解が必要であるから、著者は苦労したと思う。だがエッセンスをうまく示すことで、ユング心理学の魅力は伝わってくる。読み終えておしまいにしてしまう読者もいるだろうが、本書を入り口として自分の内面に対する考えを深めたり、あるいは他のユングに関する本に取り組むのが本来であり、著者もそう望んでいるようである。西洋人が西洋人向けに書いた本のわりには、日本人にも共感できるところは多く、ある程度の補足をおこなえば、日本でも十分通用するであろう。

ユングの入門書はこれまでに数多く出版されてきており、ニーズの高さを物語っている。日本人によるもの、外国人によるものの翻訳など様々であり、類書に埋もれてしまう心配はあるものの、本書はどちらかというと平易な部類に入るし、またよく言われるのは「ユングは難解なので、入門書はいくらあってもよい」ということである。ユングの入門書を一冊読んだだけで、その概要を理解できてしまう人などまずいない。そういう点では、他の入門書で筆者が読んだことのない内容(例えば、ユングがヒンズー教をどうとらえたか、「童貞マリア被昇天」をどう評価したかなど)を含む本書は類書にひけを取らないだけの含蓄があり、ユング入門書の一角として存在価値があると思う。想定読者層は男女を問わず一般成人であるが、高校生以上であれば読めるであろう。こころの問題に興味を惹かれる人は、若者から老人までよく見受けられるように思う。こころの世界は人類に普遍的なテーマであるため時代の影響を受けにくく、幅広い世代に長く読み継がれる可能性もあるかもしれない。

以上


私の拙い記事をご覧いただき、心より感謝申し上げます。コメントなどもいただけますと幸いです。これからも、さまざまな内容をアウトプットしてゆく所存です。どうぞよろしくお願いいたします。