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【読書感想文】暗黒館の殺人

綾辻行人による館シリーズ第7弾!今回、かなりの長編です。
それまでの館シリーズを読むたびに、巻末に載ってる他の館シリーズを見て暗黒館の殺人だけ明らかに量が違う。文庫本にいたっては4冊も出てる。いやいやさすがに嘘やろ…と思ってたらホントにホントだった。
それまでの館シリーズはすべて文庫本で読んでましたが、今回はノベルズ版で読みました。ノベルズ版とは、新書のような縦に細長い形状で、文章が上下に分かれているのが特徴。そして分厚い。
そんなノベルズ版でも2冊に分かれてるあたり、相当な作品だなということが伺えます。


館シリーズではおなじみとなった江南孝明ことコナン君が、あの中村青司が建てたという暗黒館に向かって出発。館近くの塔に登ってみるも、突如地震が発生して転落。大きな怪我こそしなかったものの、意識を失ったコナン君は館の住人に助けられます。
一方別の頃、館では初代暗黒館当主の孫の浦登玄児と、”私”こと中也が塔から転落したという人物を救出。
この出来事を前後して”私”は、玄児から「ダリアの日」と呼ばれる宴に参加するよう勧められる。
そして「ダリアの日」が終わってからというもの、暗黒館では殺人事件が続発するようになる…。


今回の見所もとい読み所は2つ。

”私”こと中也とは何者なのか?
”ダリアの宴”とはなんなのか?

今回は主人公の一人であるコナン君は塔から転落して意識不明になって早々に退場。物語の大部分を”私”こと中也なる人物が努めます。
この人物も相当に頭が切れるようで、殺人事件が起こったあとは玄児とともに事件解決のために奔走します。
人形館を除けば、今回はコナン君でも島田でもない、第三者が主人公です。

そしてダリアの宴とダリアの秘密。
ダリアというのは、初代暗黒館当主の浦登玄遙の妻のこと。
ダリアの日というのは浦登ダリアの誕生日でありまた命日でもあるため、その日は大事な日なので一族揃って過ごしましょう…といえば聞こえはいいですが、どうにも怪しい。
とにかくこの”ダリアの日”をめちゃくちゃ大事にしている。大事にしているというよりはなによりも最優先事項としているといえば正しいだろうか。
そしてダリアの宴の内容。明らかにヤバい雰囲気が漂ってる。
「いやいや、たしかにダリアさんって人は初代の奥さんですごい人なんだろうけどさ、しかしいくらそんなすごい人の誕生日だ命日だといっても…なんだこの”宴”は…。」と思わずにはいられません。
徐々に心臓がドキドキしていくこのスリルがたまらない。

最後に風呂敷のたたみ方が見事。
よく話がとっちらかって収集がつかなくなるさまを『風呂敷を広げすぎた』などといったりしますが、こちらの場合は『あえて謎は謎のまま残しておく』という『余韻』がとても美しい。
すべての謎や疑問を解き明かすのもいいですが、今回においてはそれは野暮というものでしょう。それぐらい綺麗。


というわけで今回の暗黒館の殺人、間違いなく面白かったです。
迷路館で二重に「やられた!!」と思い、続いて時計館と黒猫館で「お前マジか!!」となったあとでのこの作品、今回はどんな作品なんだろうというワクワク感もといハードルをかるーく超えてきます。
ぜひご一読を。


余談ですが、名前の時点である程度ネタバラシになってます。
すなわち、ブラム・ストーカーの小説『ドラキュラ』のモデルともなったヴラド・ツェペシュことヴラド三世からもじったもの。
これを念頭に置いておくと、暗黒館の秘密などがスッと頭に入ると思います。

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