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奥野一成、母校に帰る2024~洛南中学でのキャリア教育講演会「自分自身のオーナーになろう!」~パート2



投資とは何か?

投資についてお父さんやお母さんに聞くと「ギャンブルだからやめておきなさい」とか、おじいちゃん、おばあちゃんに聞くと「危ないから近づかないように」と言われるかもしれません。

皆さん、株式投資をギャンブルだと思っているんですね。画面を見て上がったとか下がったとか。最近では仮想通貨ですかね。

本屋に行くと、「簡単に儲けられる」とか、「xxxで簡単に2億円」という短絡的な本がズラッと並んでいます。これらは基本的にギャンブルです。

あれでお金持ちになることは絶対にありません。本当にそれが実現するなら本なんか書かないで自分でやればいい。彼らは本を売ってお金持ちになろうとしているんです。信じてはいけません。

これは「投機」です。機会に投じる、投機。ギャンブルと同じです。さきほどの競馬のスライドの右側のゲームです。期待値が1以下のゲーム。

これが一般的に、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんにとっての株式投資です。「株式投資なんて、やっちゃだめ」と言われたら「えっ!?株式投資をギャンブルだと思っているの?」と訊き返してみてください。

この世界で30年のキャリアを築いてきた私が、投資について、ギャンブルとの違いをできるだけわかりやすく説明してみたいと思います。

例えば皆さんが5,000万円、ちょっと大きいお金ですけど、そのお金で農地を買うことを想像してみてください。農地を買う、その際、皆さんの頭の中に何が浮かびますか。

種を蒔いたり、人を雇ったり、農機を買ったり、雨の日も風の日も水や肥料をやって収穫することを想像されるものと思います。柿でもブドウでもいいです。

収穫ができてその作物を売って、経費を引いたら500万円儲かりました。5,000万円の投資に対して500万円。10%儲かったということになるわけです。これが投資です。

投資には時間が絶対に必要です。作物が出来るには時間がかかるからです。また、苦労や労苦も必ず発生します。なぜなら、勝手に育つ作物なんて無いからです。大事に大事に育てて、大事に大事に見守って、それなくして作物はできないし、結果的に投資にならないのです。

さっきの話にもどりますが、自分がフェラーリという会社に足を運んだのは、フェラーリがどんな会社なのか、どのように車をつくっているのか、自分の目で見て自分の頭で考えるためです。これは作物を栽培することと同じなんですよ。絶対に時間も労苦も必要です。

そこで、今日の話で他のことは忘れてしまってもいいから、ひとつだけ絶対に忘れてほしくないことを今から伝えます。とても大事なことなのでしっかり聞いて覚えてください。

簡単に、短期的に儲かるなんてことは、100%ありません。

皆さんにはこれからこうした怪しい話がワンサカ来ます。高校生だとそれ程ないかもしませんが大学生になるとまず間違いなく沢山来ます。「こういうトレードをしたら儲かるよ」というノウハウが詰め込まれたUSBメモリ、これを売ったらウン万円もらえる。こんな噓みたいな話が山ほどあります。

何もしないで君たちがお金を手にいれるなんてことは100%あり得ません。もし仮にそんなことがあったとすれば、それはギャンブルか詐欺です。こういう話を持ちかけてくる人がいたらそれはギャンブルや詐欺の人だと思って近づいてはいけません。せっかく稼いだお金を詐欺で奪い取られることほど馬鹿らしいことはありません。

この話は中学3年生で早すぎるということはないのでぜひ忘れないようにしてください。

5,000万円の農地の話に戻りましょう。多くの人はそこでどんな作物を育てようか、と考えます。その土地が半年後に7,500万円にならないかな、2,500万円になったらどうしよう、ということを考える人は少ないはずです。

しかし、です。この農地が、株券・株式になると途端に変わってしまうんですね。

500円で株を買ったら750円に値上がりしないかなあ、とか。今実際に日経平均株価が大きく値上がりしていますよね。1月からの3ヶ月弱で20%値上がりしています。

500円の株が半年後に750円になっていたらいいな、とか、250円になっていたらどうしようとか。極端な場合、3秒後に503円になっていたらいいな、とか。

農地の場合、そんなことは誰も考えなかったのに、株式になるとそんなことを考える人が一気に増えるんですね。

さて、株主ってなんでしょう?株式会社のオーナーです。さきほどの競馬の例で言えば馬主のことですね。競走馬のオーナーです。

株式会社のオーナーはその会社が儲けてくれればその儲けを分け合いましょう、という概念です。

いい会社に投資して、その会社に働いてもらってその儲けをお返しとして分けてもらう、これが私がおこなっている投資で、株主になるということです。一方、株券の値段は大きく変化します。

先ほどもお話しした通り、年始から20%上昇しています。そこから20%下がったりもするし、さらに上昇することもあります。ものすごく大きな変化です。

左側、ナイキの株価の推移です。ナイキ、知っていますよね。米国のシューズの会社です。このナイキの2020年の株価、大きく下落しました。コロナの影響ですね。

ただコロナごときでナイキはつぶれませんし、人は走るのをやめたりしません。ですから、すぐに株価は上昇に転じます、倍返しです。30%下落した後、50%上昇する、これって怖いことですよね。

だから「下がったら買って、上がったら売って」というのは先ほどの「ギャンブル」です。

僕がお話ししている「投資」は、ナイキにお金を預けて稼いでもらうことですね。

右のグラフです。1991年、僕が大学を卒業して以来のナイキの利益の推移を示しているのが棒グラフです。この利益が段々大きくなっていることがわかりますよね。

それをまるで追いかけるかのように株価が上昇しています。株価というのは会社の値段です。1991年からの30年で株価は77倍になっています。100万円預けたら30年でなんと7,700万円になっていたということになります。

株価が70倍以上というのもスゴいのですが、もっとスゴいのは、ナイキが30年、こうやって長期的に利益を増やし続けてきた素晴らしい企業だということなんです。

素晴らしい企業にお金を預けないと、77倍にはなりません。

何が素晴らしいのか?高校駅伝、洛南も出てますよね。6、7年前からランナーはみんなピンクやカラフルなナイキのシューズを履いています。洛南は最近アシックスですけどね。ほとんどはナイキのシューズですよね。

そのシューズは厚底になっています。皆さんにとっては厚底シューズは普通かもしれませんが、お父さん、お母さんに訊いてみてください。20年前、マラソンランナー、長距離ランナーはみんな薄くて軽くてペコペコのシューズを履いていました。薄底が一番速い、これが当時の常識でした。それを100%塗り替えたのがナイキです。

厚底のシューズのソールにはカーボンプレートが入っています。このカーボンプレートで反発力が増します。反発力が増すとレースにおいて体力が温存できるようになります。これは100mを走る桐生くん、洛南の誇るべきOBですけど、桐生くんには関係ありません。

しかし、42.195kmを走るランナーには、この体力温存が、生死を分けますし、大きな違いになります。それを履いているから記録が出るんですね。駅伝でもマラソンでも、メダルを取るのはナイキのシューズを履いている人が多いですね。

このナイキの厚底シューズ、例えばヴェイパーフライは1足あたり4万円近くします。このヴェイパーフライがマラソンランナーの快適に走りたい、速く走りたいという課題を解決したのです。これがナイキのやったことなんです。

ナイキはフィル・ナイトというオレゴン州立大学のランナーが1960年代に立ち上げた会社で、アスリートの課題解決を目的にして出来た会社です。皆さんはマイケル・ジョーダンを知っていますか。世界で最も尊敬されるバスケットボール選手ですね。

そのジョーダン選手の「どうやったら高く飛べるのか」という課題を解決したのがナイキのエア・ジョーダンというシューズです。ソールにエアが入れてあるんですね。これは当時の常識では考えられなかった。ナイキはこれを開発して世界中に売ったわけです。

皆さんの馴染で行くと、大坂なおみさんもナイキと契約しているアスリートですね。彼女が機敏に動けるようにナイキがテニスシューズを開発。試合ではナイキのキャップをかぶってもらう。そして、全米オープンで優勝するんですね。そうすると、世界中がナイキすごい!となってナイキの商品が売れる。利益がこんな風に増えていくわけです。

ナイキはアスリートの課題を解決することで大きくなってきたのです。
利益がこうやって大きくなると、その会社の株主の資産が77倍になる。これが株式投資です。

もう一つ、別の株式投資の理解の仕方をご説明します。

左の似顔絵のジェフ・ベゾスという人を知っていますか。

ジェフ・ベゾスを知らなくても、Amazon を知らない人はいないと思います。Amazonの創業者です。インターネットでポチっとやると、その日か翌日には(注文した商品が)ピンポーンとやってくる、あの便利な仕組みをつくった世界第3位の大金持ちです。

Amazonの株主になるということは、このジェフ・ベゾスが皆さんの部下になるということです。

Amazonの馬主になると、Amazonは馬になりますね、ジェフ・ベゾスはジョッキーですから、自分のために働いてくれるわけです。これが株主になるということです。

ウォルト・ディズニーという会社があります。ミッキーマウスの会社。東京ディズニーランドに行ったことのある人も多いと思います。ウォルト・ディズニーはその総元締めです。

このディズニーの馬主になるとはどういうことか。ミッキーマウスが皆さんのために働いてくれるということです。皆さんが寝ている間も世界のどこかのディズニーランドでミッキーマウスは踊っています。スゴいことだと思いませんか!

皆さんが寝ている間もミッキーマウスが働いてくれる。これが株主になるということです。

このディズニーの社長、ボブ・アイガーという人です。この人のお給料は年間20億円です。1年の営業日を250日とすると、1日800万円。1日8時間とすると、この人の時給は100万円です。皆さんがもしアルバイトをしたら、恐らく時給は1,000円くらいでしょうか。

時給1,000円の人が、時給100万円の人を部下にできる、世界で唯一の合法的なやり方、それが株式投資なんです。株式投資はギャンブルではありません。これを声を大にしてお伝えしたい。

パート3に続く。)