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奥野一成、母校に帰る2024~洛南中学でのキャリア教育講演会「自分自身のオーナーになろう!」~パート3


「利己」と「利他」

株主、オーナーになったら儲かるのはよくわかった、なぜ儲かるのかもなんとなくわかった。このスライドでいくと真ん中の企業、ナイキの例でいうと、マラソンランナーの課題を解決しているから企業は儲けることができるということでしたよね。

企業が儲かればオーナーも儲かる、これは数学的、物理学的に揺るがないことです。

オーナーが儲かるとはどういうことか。顧客、たとえばアスリートですよね、もっと広げると社会なんですよね。要するに社会が豊かになっているんです。オーナーが儲かるということは企業が利益を増やしている。

企業が利益を増やしているということは、社会の課題を解決しているということです。社会も、結果的に、ちょっとずつ良くなっているんです。これが資本主義です。これが今日、お伝えしたい2つ目です。

資本主義では、企業とは顧客や社会の課題を解決する場所です。その場所、その人たちに、株主がリスクを取ってお金を出すのです。そうすることで僕たちの文明は前進してきました。

ライト兄弟は飛行機を飛ばしました。ライト兄弟が飛行機を飛ばしただけで終わっていたら、僕は先週アメリカに出張できていません。こんなに便利な世の中になっていません。単純に飛行機を開発しただけでは世の中は豊かになりませんよね。

飛行機を開発した人に後ろからお金をつけてそれを世界中に広めていくだけの力を持たせないといけない。これが投資家の役割です。

投資家、そして社会の課題を解決する企業、この2つが両輪になって文明は進んできました。資本主義が出来たのは1500年くらいと言われています。以来500年ちょっと経ちましたが、資本主義がなければ、皆さんのコート、靴、そうしたモノは多分なかったと思います。

500年の間に資本主義の果たした役割は非常に大きいのです。
餓死する人よりも肥満で死ぬ人の方が多いこの現代を作り出したのも、資本主義です。それだけスゴい力なのです。
しかしながら私たちはこうしたことを学校で教わっていませんよね。
実際に私が受けた40年前の教育も、いい高校に入りましょう、いい大学に入りましょう、いい会社に入りましょう、さあ働いて下さい。こんな教育でした。

労働者になろう、という教育しか私たちは受けていないのです。皆さんも恐らく同じです。これが根本的な問題だと思います。

歴史的にみても仕方ない側面もあります。皆さんも学んだとおり、我々日本は太平洋線戦争で1945年に壊滅的な状態となりました。ここから這い上がるにもお金がありません。売れるものは体力しかないし、自身の労働力しかなかった。僕たちのおじいちゃん、おばあちゃんやその一つ上の世代の人たちは皆そうでした。

お金が無ければ投資家になんてなれません。だから小学校から右の人と手をつないでみんなで一緒に同じように行動しましょう、と教えられたのです。
「みんなで協調しましょう、仲良くしましょう。仲良くみんなで工場労働者になりましょう」、そういう教えです。工場労働というのは流れ作業です。右の人が加工したものをさらに加工して左の人に渡すわけです。ここに協調性の無い人がいると全体がとても苦労しますよね。

「工場労働者を増やすには、みんなと協調できる人をつくりましょう」、ということになるわけです。これが成功したのは1950 年代から1980年代の高度成長期です。

この教育のおかけで我々の上の世代は廃墟からたった30年で先進国になったのです。これは誇るべき功績です。しかし、以降の30年、40年、日本はほとんど成長していません。それはなぜか、みんな労働者だからです。

先進国になったにもかかわらず、「相変わらず労働者をやりましょう」というスタンスで隣の国と競い合っています。隣の国の人は賃金も安いので依然労働者を重宝するかもしれません。しかし、我々は先進国にいます。先進国の国民には労働者ではなく投資家になるという選択肢があります。

にもかかわらず、その選択肢を選ばない。これは多分知らないから、というのが大きいでしょう。投資家が増えることで世の中が良くなっていく、さっきのライト兄弟の話ですね。投資家がいたからこそ世の中は豊かになったということを理解すべきです。

「利己、すなわち自分の利益だけ求めるのはやめましょう」、これは小学生の頃から言われてきたと思います。でも必ずしもそんなことはありません。本物の「利己」をしっかりとした枠組みの中で発揮すると、他の人にも役立つ「利他」を実現できるし、社会を豊かにすることができます。これが資本主義なんです。

「利己」と「利他」は調和できるということ。これは学校では教わっていないはずです。「利己」OR「利他」ではなくて、「利己」AND「利他」、この考え方を学ぶ必要があります。

ここまでを一旦まとめます。

人生のポジショニング

馬主になるのか、雇われてジョッキーになるのか、ミッキーマウスになるのか。ミッキーマウスは右側です。ウォルト・ディズニーの株主になる、馬主になるのは左側ですね。

ミッキーマウスを所有するのか、ミッキーマウスのように踊るのか。ポジショニングとしてどちらがいいのか。

雇われると確かに安定します。踊った分を誰かがお金を出してくれますからね。ですが、それだけです。

スキルを売るのか、時間を売るのか。同じ労働者になるとしても、替えの利かない独自の自分になるのか、取り替え可能な誰でもいい人になるのか、というのもあります。

皆さんは左側を選ぶことが可能です。なぜなら、ある程度の基礎学力があるからです。でも今はある程度しかないです。これからの高校3年間、大学に向けて、社会に出るまで基礎を必ずつくってください。

先週アメリカに行ってきましたが、英語が出来ないとお話になりません。英語が読めなかったら世界中で起きていることがよくわかりません。皆さんが英語を学ぶのは試験に合格するためではありません。世界に飛び出すだけではありませんよ。というのも日本をベースに仕事をするにしても、英語ができなければ「取り替え可能」になってしまうんです。英語は絶対です。

数学も物凄く大事ですよ。論理的思考のためには数学が絶対必要です。数字がわからないと何をやっても上手くいきません。
数学が苦手という人、考え方を変えましょう。論理的に考えることがとても大事だからです。「答えを出すのが数学」ではなく、論理的に考えるための枠組みが数学だと捉えてみてください。

これは高校時代の数学の先生から教わったことです。

y=ax  xを計算せよ

x= y/a と私は答えたんですね。不正解ですね。a=0であれば解なし、a ≠0の場合 x= y/a 場合分けが必要なんですね。スゴく単純ですが、これが論理的に考えることです。高校以降の数学はもっと論理的に考えることになります。

数学は得意でしたが国語は得意じゃなかった。文章を読んで感想みたいな選択肢を選ぶ、全然わからなかった。高校生のある時気づきました。大学受験の現代国語は感想が書かれているわけではなく論理的枠組みに従って論述されているんだ、と。

文章が論理的に構成されている以上、問題の答えが書かれた箇所は最初から決まっている。国語が出来ない=論理的思考が出来ていない、ということになると思います。国語ができる人は数学も出来ます。国語だけという人はいない。

歴史、地理も学びましょう。自分の身の回りのことを自分の言葉で表現できるかどうか、です。これがエリートになるということです。
皆さんはエリートの卵だと思います。エリートって高学歴とかそういうことではありませんよ。世界中でエリートというのは、自分の言葉で自分の国の歴史や自分の生き方をちゃんと表現できる人のことをいいます。

そういう人は結果的にたくさんお金をもらいます、当たり前です。お金を沢山もらっているからエリートということではありません。自分のことを自分の言葉でちゃんと表現できる人がエリートです。皆さんはエリートの卵ですがまだエリートではありません。

歴史は大事です。1192年に鎌倉幕府が出来たかどうかはどうでもいいです。なぜ鎌倉幕府が出来たのか、を自分の言葉で表現できるかが大切です。また、なぜ鎌倉という場所に政府ができたのか。それを考えることが地理を学ぶということです。

全てつながっているのです。これが基礎を身につけるということ。大学入試のテストで点数を取るためではありません。

皆さんが基礎を学ぶべき理由。それは応用があるからです。論理的思考が無いと世の中に出てとても困ることになります。

「取り替えの利かない」人材になれるかなれないのか、それは皆さんの今の頑張りにかかっています。持つ側になるのか、持たれる側になるのか。スキルを売るのか、時間を売るのか。非常に重要な分かれ道です。

「取り替えの利く」人材だとお金持ちにはなれません。スキルを身につけて「取り替えの利かない」人材となって社長(左上の象限)を目指してください。ただ社長になっても所詮は労働者です。スライドの上下よりも左なのか右なのか、が大きな差になります。できるだけ右側を目指しましょう。

これが「所有する側」「雇われる側」のポジショニングの違いです。

まだ中学3年生でも、どこのポジショニングを目指すか、だんだんと意識するようにしてください。そうしないと誤った木に登ることになります。誤った木に早く登っても、誤った場所に早く着くだけです。

さきほど示した長者番付。ここにいる人たちは自分で会社をつくって、自分の会社のオーナーになってその地位に着いたわけです。

ここで一旦、動画を見てもらいます。150万回再生された動画です。

お金持ちになる二つの方法

この動画、宿題として、ぜひお父さん、お母さんと一緒に見てください。見た後でお父さん、お母さんと皆さんの感想を聞かせてもらいたいな、と思っています。

この動画で一番大事なところ。それは「お金って何だろう」という部分です。お金は「ありがとうの印」です。

誰かを喜ばせたか、誰かのために役に立てたか、そういうことです。

一人ではお金は動きません。ナイキの例を思い出してください。

ナイキがやったことは、長距離ランナーの体力をいかに温存するのかという課題解決です。その課題解決があるからお金が動くんです。儲かるんです。

これは個人でも同じことです。たとえば皆さんがアルバイトをした場合、単純に働いて得たお金と、お客さんを喜ばせて得たお金。もしかしたら金額は同じかもしれません。でも、それが将来的に大きな違いになってきます。

お金持ちになるには、論理的に2つの方法しかありません。自分で集めるのか、他人に集めてもらうのか。自分で集める場合、他人にもっと喜んでもらえる、他人の課題を解決できる自分になるということ。これが自己投資です。

今の勉強もそうですし、たとえばバックパッカーとして海外を放浪するのも「投資」だと思います。部活もそうです。後になって大きなものとして自分に返ってくる、自分を磨くこと、これに今、是非取り組んでほしい。

もう一つが今日ずっとお話ししている馬主、株主になる、ということです。その企業が本当に稼ぐのかどうか、これは数字を見ているだけではわかりません。

実際にその場所に行って、そこの人たちに会って触れて、そのお店を見て、生身で話さないと、ちゃんとわかりません。わかったと思っても頭でわかったつもりになっているだけです。自分をしっかり磨いておかないと、それを感じ取ることができないんですね。

中高生の皆さんはお金を持っていません。皆さんの最大の資産は時間です。大学を卒業すると、お金、才能、時間は兌換になります。交換可能ということです。

お金、時間、才能。これらが資産です。皆さんの場合、お金についてはお父さん、お母さんが面倒を見てくれているので、今のところ時間と才能の2つしかありません。

だから、皆さんは時間を才能に換える作業を今取り組んでいるのです。大学を卒業すると、お金を含めたこの3つをどのように大きく大きくしていくのか。これが人生というゲームです。

何をする人になりたいのか、得意なことは何か、長く続けられることは何か。これを考えることが非常に重要です。

皆さんの本当にやりたいことは何ですか。得意なことは何ですか。

こんなところで話を聞いているよりもゲームをしたい、野球をしたい、デートをしたい。そう考えているかもしれません。そんな時、胸に手を置いて考えてみてください。

本当に自分は心からそれをやりたいのか。ずっとそれを続けたい、と思えるのかどうか。

本当にやりたいことってゲームなんですか?やりたいと思わされているだけじゃないのか、と考えてみてください。

大人は狡猾で、巧みに皆さんを騙します。ゲームをやってもらうことで自分たちが儲かるからコマーシャルを流すんですね。

SNSも同じです。世の中で起こっていることを懐疑的に見るようにしてください。本当に自分がやりたいことはこれなのか、と自ら問うてください。そうでなければ長続きしません。

それは誰かにやらされているのか、自分自身にやりたい意思があることなのか、親に言われてやっていることなのか。自分が本当にやりたいことは何なのか、心を研ぎ澄ませてもらいたいな、と思います。

パート4に続く。)