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#43 『エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来』を読んでみて

こんにちは。なびです。

久しぶりにnoteを書いてみます。
エディタの仕様、だいぶ変わってますね!個人的にはいい感じです!
特にEnterの改行、段落の変換はありがたい!いつも無意識にShift+Enterをやっていたので、ナイスな変更です!

あとはMarkdown記法もかなり助かります!いつもMarkdownで書いていたりするので、その流れでnoteも書けるのはありがたいことです。。

なんて喜びを表現していたら、結構前にアップデートされていたんですね、、noteの更新をサボっていることバレてしまう、、、
まあ気にせず自分のペースでやっていきたいと思いますw

それでは久しぶりに読書ログを書き残していこうと思います。

今回読んだ本は今までのジャンルから一線を画すこんな本です。

【読んだ本】『エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来』
【著者】古舘恒介
【発行所】英治出版
【初版】2021年8月26日

ーーなぜ読もうと思ったか

これまでnoteに書いてきた読書ログや、ログに残していないものも含めると、テーマが比較的近いものを自然に手に取ってしまった傾向があるなあと感じてました。業務に近い内容の本や、以前読んだことがある領域に関する本で埋め尽くされてしまったり。

それはそれでいいと思うのですが、新たな知識との出会いを目的として斜め上の方向性でなんか良いのないかなあと思っていた矢先に、この本に出合いました。

Twitterなのかブログ記事なのか、どこでこの本の存在を知ったのか忘れてしまいましたが、タイトルとテーマに惹かれて、純粋に読んでみようかなと思い購入してみました。
いつものように「なんとなく」という理由ではあるんですけど、今回は本当の意味での「なんとなく」です(分かりますかねw)

ーーどんなことが書いてある?

タイトルにありますように、この本はエネルギーをテーマにした本です。エネルギーがテーマではありますが、物理学の参考書みたいな感じではなく、エネルギーそのものにフォーカスを当てた内容になっています。

具体的には、以下の3部構成でまとめられています。

  • 「量の追求」

    • 人類史をエネルギーの活用を通じて紐解いていくことで、現在の文明の成り立ちと課題を明らかにする

  • 「知の追究」

    • エネルギーとはいったい何なのか(科学者たちの奮闘の歴史)

  • 「心の探求」

    • 人類社会の要素としての宗教や経済、社会をエネルギーの視点から切り込んでいく

エネルギーという漠然とした概念に対する著者なりの解を示すとともに、人類の発展の過程でエネルギーというものがどのように関わってきたのか、さらに今後の社会にどのように影響を及ぼすのか、というエネルギー社会を生きる我々においてハッとした気づきを与えてくれる内容になっています。
何気なく生きているだけでいかに私たちがエネルギーにお世話になっているかを痛感させられる、そんな本になっています。

エネルギーというと、なんか理系っぽくて難しそうな印象はありますね。ただ、本書は数式や理系の前提知識を持たなくてもスッと読めてしまうので、苦手意識を持っている人ほど読んでほしいと思います。むしろ、エネルギーに対する先入観は薄れていくかもしれません。

ーー印象に残ったこと

正直、印象に残ったことありすぎて困っているくらいなのですが、強いて紹介したい点は以下の点です。

「量の追求」
人類史においてエネルギーの利活用により、人間の活動が非連続に変化したことを示すブレイクスルーが存在すると本書では説明されています。その概要を紹介します。

  • 「火」によって人間は肉食が可能になり、料理の発明や脳の肥大化がもたらされた

  • 「農耕」により自生した植物を追い出し、人間に最適な農作物を育てることで、その土地に降り注がれた太陽エネルギーを取り入れることができた

    • 「農耕」によりエネルギーを効率的に確保でき、人口増加と都市の形成、文明を興した。一方で、奴隷制の誕生や戦争の勃発という闇を生んだ

  • 「森林」の伐採によるエネルギー供給により、文明社会の形成と技術の進歩が実現した

    • いかに「森林」を確保するかが当時の世界(大航海時代)において軍事力(造船)に結び付く

  • 産業革命により蒸気機関の発明。熱エネルギーから運動エネルギーに「転換」できる術を獲得した

    • 運動エネルギーにより、人間の肉体が持つ限界を打破し、巨大な建造物を創造したり動かしたりできるようになる

  • 電気の発明によりエネルギーの「輸送」が容易になった

    • 取り出したエネルギーを電気に変換し輸送が可能。輸送先で別のエネルギーに変換することでエネルギーの利用場を拡大させることができた

  • ハーバー・ボッシュ法の発明により、空気中の窒素とエネルギーを元に「化学肥料の大量生産」が実現した

    • エネルギーの投入により農作物を作る農業の工業化を進行し、自然界の限界(農作物の生育限界)を圧倒的なエネルギーの投入により打ち砕くことになった

エネルギーの利活用により、社会や文明の形成だけでなく、人間や自然界の限界を打ち砕くことで、現在このような豊かな生活が実現できている、ということが痛感します。現代社会にただ存在しているだけでも非常に膨大なエネルギーを知らず知らず消費しているということを強く認識するようになるでしょう。

現代社会における人類の繁栄は、ひとえにエネルギーの大量消費によってかろうじて支えられているに過ぎない、ある意味非常に脆弱な存在

古舘恒介. エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来 (pp.245). 英治出版株式会社. Kindle 版.

特に食料における「動物の肉」は非常に膨大なエネルギーをかけて生成しているということが知られています。
本書とは関係ないのですが、以下で紹介する動画はそういった「動物の肉」に対する現状をセンセーショナルに描いた動画も公開されています。生育環境が劣悪である、などの別の問題も紹介されていますが、エネルギー観点でも持続可能には程遠い現状が描かれています。


もう一点、本書の章「心の探求」にて述べられている、持続可能な社会を実現するために著者によるエネルギー問題の向き合い方についても紹介します。

エネルギー問題に対処するためには、エネルギーの科学的な特性である熱力学の2つの法則を紹介し議論を進めています。この2つの法則がエネルギーの基本原則という前提に立っています。いきなり法則が出てきて身構えてしまうかもしれませんが、法則というよりはメッセージとしては太字で記した記述が重要です。

  • 熱力学第一法則:エネルギー保存則

    • エネルギーは減りもしないし増えもしない

  • 熱力学第二法則:エネルギー変化は自然に散逸し、その変化は不可逆

    • 質の高いエネルギーは有限であり、大切に扱わないといけない

これらの法則が意味することは、エネルギーを何もないところから作り出すことも、その質の劣化を防ぐことができない、ということになり近年のエネルギー問題を考えるにあたり非常に重要なことだと著者は述べています。

これまで人類はエネルギーを消費することによって現在の豊かな生活を実現することができ、経済成長はエネルギーの供給が前提になっているということが分かります。
豊かになればなるほど、エネルギーの消費量は大きくなるということが歴史からも明らかになっています。便利な家電を導入すれば、その分エネルギーの消費は増える。たとえ省エネ製品が生まれたとしても、新しくそれを導入すればエネルギー消費はゼロから増えるはずです。
経済成長を是とする資本主義が牛耳るこの世界では、エネルギーの消費が増えていき、結果として自ら破滅へ繋がってしまう。

持続可能な社会を実現するために、著者なりのアドバイスとして、下記2点を紹介しています。私たちだけでなく、私たちの子孫が持続可能な社会の上で生活できるために、今からでも心がけることができる大事なことだと思い、最後に紹介します。

  • お金を媒体としないギブ・アンド・テイクの関係を生活に取り入れる

    • すべてのモノやサービスが貨幣価値で換算されることで無機質かつ際限のないものとなってしまった。そのことにより、人は際限のないエネルギー獲得欲求を増幅させ、大量生産大量消費を促すことに繋がってしまった

    • 貨幣価値で換算できない「おすそ分け」や「お手伝い」といったギブから始まる金銭的な価値が絡まない関係づくりを構築するようにする

    • 貨幣価値から金銭を介しない活動に置き換えることで資本の神の暴走を抑える効果が期待できる

  • 節約をすること

    • モノを大切に長く使う、使わない明かりやエアコンを消す、食べ残しをしない、といったよく言われている節約はエネルギー削減に極めて効果があり、節約自体をある意味エネルギー源の一つと考える人もいる

    • 金銭的な節約、ではなくあくまでも無駄遣いを止めて「もったいない」と思う気持ちに重きを置くことが重要である

「ギブ・アンド・テイク」「もったいない」という言葉は、大きな可能性を持っています。何事もお金に換算しようとすることや、取り留めもなく浪費をすることは、環境に悪いなどと言う必要もなく、単に格好が悪いことになればよいのです。

古舘恒介. エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来 (pp.381-382). 英治出版株式会社. Kindle 版.

ーー本書を読んで

地球温暖化をはじめとしたエネルギー問題への問題提起が騒がれており、持続可能な社会を目指して、SDGsや二酸化炭素の削減などが話題になることが多くなっていると思います。そのようなエネルギー問題において、本書を読むことによりエネルギーという観点で捉えることができるようになりました。

人類はどのようにエネルギーと付き合ってきたのか、現在は一体どのような状況なのか、など中々イメージしにくいテーマを本書は分かりやすく紐解いています。エネルギーに対する考え方をアップデートするという意味でも、本書は必読だと思いました。そういう意味では、本書の帯に書かれている「教養書」という表現は過言ではないと感じました。

加えて、エネルギー大量消費によるエネルギー問題と、持続可能な社会の実現に向けた取り組みや心構えなど、私たち人類が知っておくべきトピックがふんだんに盛り込まれた内容であったと感じました。

エネルギー問題自体がスケールが非常に大きいテーマなので、日常生活において実感することがあまりないかもしれません。国家間で解決すべき事項と結論付けて、自身は見て見ぬふりをしてしまっていた節も正直ありました。しかし、本書を通じて、エネルギーとは何か、という漠然とした問いから、エネルギー問題に至るまでの歴史、現代における危機的状況をイメージすることができ、当事者意識をもってこの問題に向き合うことができたように思います。一人ひとりができることはわずかかもしれませんが、「ギブ・アンド・テイク」「もったいない」という言葉を胸に秘めて、これからの生活を考え直してみようと思いました。


いつも読んでくださりありがとうございます!!
それでは!

TOP画像:https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/Q1p7bh3SHj8

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