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【J2リーグ】ミラーゲーム【第15節 大分トリニータ対ロアッソ熊本】

こんにちは、今回もロアッソ熊本の試合レビューを書いていきたいと思います。

今回は九州ダービーということもあり、12,000人超えの観客が見守るなか試合が行われました。
大分は勝って首位を、熊本は勝ってプレーオフ圏内をそれぞれが狙って、ギラギラした2チームのぶつかり合いとなりました。

そんな試合のスタメン、システム、得点者は以下の通り。

得点者
12分 石川大地(熊本)
57分 中川真斗(大分)

プレス合戦!

大分と熊本、共にボールを握って試合を支配するチームで、ブロックを敷くというよりプレスと縦のスライドで潰していく、サイドを広く使う、という点で共通点があります。

ミラーゲームになるのは必然で、試合が始まると同時にプレス合戦になりました。
ボールを持つと即座にカウンタープレス、縦パスが入ったらスライドを速く、全体を圧縮して潰し切る、という形が試合開始と同時に出てきます。
したがってボールも落ち着かず、どちらが主導権を持つでもなく、せわしなく両チームを行き交うという形になります。
ですがそんな中でゴールが生まれます。

12分に大分陣内、右サイドのスローインが入ると同時に熊本のカウンタープレス。
ここで奪い切ると即座に左ウイングの松岡へ縦パスが入ります。
松岡がすぐ石川へパスを送ると、石川が右足を一振りし、ゴール逆サイドに突き刺します。
ボールを支配してのゴールではありませんでしたが、ハイプレスからのショートカウンターでゴールは熊本の必勝パターンのひとつ。
熊本は大分のお株を奪う形で先制点を奪ってみせました。

先制点を奪われた大分は更にプレスの強度を高めて、熊本からボールを取り上げようと襲い掛かってきます。
ゴールキックの時も、最終ラインからのビルドアップの時もハイプレスで呼吸すらさせない勢いでハイプレスを敢行します。

FWとST、DHの連携でハイプレス敢行

従来の熊本は最終ラインの3枚とプラスアンカーの上村、合わせて4枚でビルドアップしてサイドハーフやトップ下の平川にボールを入れていきます。

今回もゆったりビルドアップを…と思いましたが、大分がハイプレスでビルドアップを阻害してきます。
サイドハーフにも大分の中盤がマークについてしまっている状態なので、縦パスを刺す事も出来ません。
トップ下の平川は、大分の中盤ふたりがかりで監視している状態。
手詰まりになったときは大西が運ぶドリブルで持ち上がってマークをずらすこともするのですが、今回はビルドアップの段階で圧力が掛かっているのでマークをずらすどころではありません。
結果、GKの田代まで下げてのロングボールに頼る状態になってしまいますが、完全にマークが付ききっている状態なので、ハイボールを競る形になります。
180センチ以上の長身がフィールドプレイヤーがいないため、ハイボールを競っても競り負けてしまい大分の中盤にボールを拾われてしまいます。

不幸中の幸いなのが、両チーム共にコンパクトな状態でせめぎ合っていたため、すぐに熊本がカウンタープレスが撃てること。
マークが噛み合っていたこともあり、プレス合戦の様相を呈してきます。
プレスに両チームが慣れてくる35分頃まではボールがせわしなく行き交う状態でした。

大分の5レーンを埋める動き

ハイプレスのスピード、圧力にも慣れてきてボールが回るようになると大分の攻撃が姿を表してきました。

後ろは3-2でビルドアップすると、前には5枚のアタッカーが待ち構える…まるでマンチェスター・シティのような形で構えて来ました。
通常、シティが使うような可変システムだとスピーディーな展開には不向きだったりしますが大分はウイングバックをセカンドトップと同じ高さまで上げるだけ。
マークをずらす効果は期待薄なものの、立ち位置でひたすら殴る、というには十分です。
大分はウイングバックに攻撃色が強い、効く選手を左右に入れていることもあってか熊本は5バックに可変して5-4-1で待ち受ける守備をせざるを得なくなります。

大分の攻撃時の3-2-5システム

ただ幸いしたのは大分にはデ・ブライネ、ベルナルド・シウバはいないことでした。
3-2のビルドアップから先が詰まった時にアンカーの脇のスペースに下りて受ける動きや、左右のCBから直接ウイングバックへパスを刺す動きが少なかったことで、後ろで詰まってしまう場面が見受けられました。
結局、そんな時はCBやGKからロングボールを蹴り、伊佐に収めさせて展開、という流れが何度か見られました。
もちろん、セカンドトップのふたりがポジションを変えつつボールを受ける場面もありましたが低い位置で受ける場面が目立ち、熊本の最終ラインにギャップをもたらす、というところまではいきませんでした。

伊佐の高さを活かした前進

熊本も手をこまねいている訳はなく、伊佐に江﨑をつけてマークさせ、ボールキープを阻害すると共に全体をボールサイドに圧縮することで2ndボール回収→カウンターに出ていました。
大分の5レーンを埋めての攻撃はまだ改善の余地はあるものの、機能すればJ2レベルではかなりの攻撃力を発揮するものと思われますが今回はその破壊力を完全なものとして見せることは出来ていませんでした。

ボール保持率が高い割にパス本数が200本以下で終わっており、シュート数も熊本より低い状態で前半を折り返しているのは、ビルドアップから仕掛けの部分で、手数を掛けず手っ取り早くロングボールに頼っており、フィニッシュまでいけていない、という証拠でもあります。

行き来する主導権

後半になっても基本的にプレスの掛け合い、ショートカウンターの撃ち合い、というのは変わりません。
大分は5レーンを埋めての攻撃はあるものの、ハイプレス→ショートカウンターで熊本ゴールに迫る場面が多くなりました。
その中でウイングバックにボールをつけたらドリブルで一気に前進することも多くなり、大分のゴールはそんな中で生まれます。

左サイドでボールを奪取した大分はそのままパスを繋ぐと、左ウイングバックの藤本から中川へ。
そのまま振り向いて右足でコントロールシュート、同点に追い付きます。
熊本と大分、プレースタイルだけでなくゴールまで似てしまうというのはこの試合を象徴しているようでした。

そこから大分はその勢いのままハイプレス、カウンタープレスを活発に行うようになり、熊本が後手を踏むようになっていきます。
そのまま押し込まれるかと思いきや、熊本が先に動いてきます。
64分に大本と大崎を投入したのは、活発になっていた大分の左サイドを牽制しつつ前線のターゲットをふたつに増やして得点を狙う、という意図だったのだと思われます。
そしてここからは、慌ただしく選手が投入されていきます。
大分は保田とペレイラ、サムエル、高畑に宇津元を投入し、守備を落ち着かせつつ左サイドと前線を強化してクロス→サムエルの頭、という明確な狙いを持って最後まで攻撃を仕掛けてきました。
熊本も田辺と道脇を投入してきます。
クロッサーの田辺と大本からクロス→長身の道脇、大崎の頭で得点を狙ってきます。

両チームともにサイドに力点を置いて、繋ぎもそこそこにクロスから得点を狙っていきますが、元々のチーム構造がそうなっていない(ごり押しでクロス→肉弾戦でゴールを狙う)ため、そのまま時間が過ぎてタイムアップ。
勝ち点1を分け合う結果になりました。

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