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【J2リーグ】パスを回すということ【第16節 ロアッソ熊本対ベガルタ仙台】

こんにちは、今回もロアッソ熊本の試合レビューを書いていきたいと思います。
今回は3連戦の2戦目ということもあり、若干変えてきた熊本ですが、収支としてはマイナスになってしまったかな、という感じ。
結果論ではありますが、いつもの布陣の方が上手く戦えたのかな、という思いがあります。

そんな第16節のスタメンとシステム、得点者は以下の通り。

得点者
47分 相良竜之介(仙台)

左右非対称の布陣

熊本は元々サイドハーフ起用が多い竹本をウイングに起用し、右サイドハーフに途中出場が多かった大本を起用。
大本の突破、クロスに期待した布陣であることは明確でした。
しかし左ウイングの松岡も大外レーンに張って勝負を仕掛ける典型的なウイングタイプ。
そうなると真ん中の石川だけで点を取れってことか?という疑問もあり。

試合が始まると予想通り右CBの黒木から一気にロングボールを送り、大本を走らせてラインを押し下げる作業に出る熊本。
いつもウイングを走らせて最終ラインを押し下げ→中盤を間延びさせてそのスペースを使って前進、というのが定石。
それが今回は最終ラインを押し下げるだけでなく、大本に持たせて突破、クロスが出来れば上出来、という狙いに変わっていました。

もちろんいつものショートパスによる前進を図る場面もたくさんありました。
ありましたが、結局右サイドの突破に帰結するので左ウイングの松岡を出口として使って突破を図る場面も激減。
右ウイングの竹本も結局サイドハーフに下がってボール回しに参加するため、攻撃が右サイドに偏るようになっていきました。

熊本の基本的な立ち位置

下がってくる右ウイングの竹本は誰が見るのか?上がってくるサイドハーフの大本は誰が見るのか?という部分では相手を混乱させられていたのかな、と思います。
実際、熊本が攻撃に出ると大本が浮いていることが多かったので、そこはもっと使ってあげてもよかったかなという風に見えました。
仙台の守りも、左SBの内田が水際で防いでいく形が多く、もっと人数をかければSBも攻略出来るのでは、と感じましたが、フォローに来ようとする平川は仙台の中盤2枚で管理されてしまい、単独突破を仕掛けざるを得ませんでした。
それでも偽ウイングの竹本と大本のコンビネーションによる右サイド攻略は、この時点では一定の効果は挙げていたのではないでしょうか。

3-2のブロックで前進する仙台

対する仙台はというと、熊本と同じく右サイドを使って前進していましたが、熊本と違うのは左サイドも使っていくバリエーションがあったということです。

仙台はボールを持つと左SBの内田が絞り、CBと連携して3バックを形成、右SBの真瀬をウイングバックの位置へ押し上げます。
3CBは中盤とは五角形の位置を取り、3-2のブロックを作ってビルドアップしていきます。
右サイドハーフの郷家はハーフレーンへ移動して曖昧なポジショニングを取り、左サイドハーフの相良は大外レーンへ張る形に可変します。
2トップも可変します。
2トップは片方がボールサイドに下りてアンカーの脇のスペースを使い、もう片方は最終ラインをピン留めするために最前線に張る、という形に可変します。

仙台の3-2ブロックを使った前進

仙台は3-2ブロックを形成することで前進が容易になります。
それぞれ左右の大外レーンに張った選手(=真瀬、相良)がいるため、予め大外レーンへのパスコースは確保されています。
3バックには熊本がハイプレスで前進を阻害しようとするのですが、その確保した大外のパスコースへと逃げますし、GKからのロングボールで大外レーンの選手を使います。
熊本が5-4-1でセットした守備を行おうとすればボール回しはより容易になります。
惜しまれるのは、前線が迫力不足になりがち、というところでしょうか。
サイドからクロスを上げてもエリア内にはFWひとりだけ、なんてことも多々ありました。
ここが3人、4人と増えると得点も増えてくるのではないでしょうか。

ボール保持率こそ熊本に軍配が上がったものの、シュート数は負けていなかったのは仙台が効率的にゴール前へ行けていた、ということです。
お互いにビルドアップ~中盤までは進めるものの決定的な場面を作れなかったのは、未だ攻撃のメカニズムを試行錯誤している段階だからではないでしょうか。

先制点、そして膠着へ

後半も特に修正などはなくスタートしましたが、個人技でいきなり先制点が生まれます。
後半2分、仙台の左サイドハーフの相良がハーフレーンでドリブルを開始するとミドルシュートを撃ってきます。
これがなんとそのままゴール、前半の試行錯誤から一転、なんともあっけなくゴールが生まれました。

熊本は同点に追い付こうと、前半半ばから存在感が消えつつあった竹本に代えて粟飯原、こちらも存在感が消えていた松岡に代えて島村を投入します。
これで両サイドからクロス→FWふたりで点を取る、という意図が明確になりました。
仙台も中島、フォギーニョを投入し、フレッシュな戦力を入れて攻撃をそのまま継続しようとします。
それと同時に守備をテコ入れします。
4枚の中盤とFWで五角形を作り、熊本の上村と平川を完全に包囲してしまいます。
サイドハーフの藤田、大本にも相良、郷家を当てて監視させる形を作ります。
これによって最終ラインでパスを回させる分にはヨシ、五角形の守備網に入ったらプレスで引っかけてショートカウンター、という形でリードを守りつつ追加点を狙う、という形に変えてきました。

60分以降の仙台の守備

熊本は幸か不幸か、役割をハッキリさせたことで逆に仙台の守備網の作り方もハッキリさせてしまった、ということです。
ここから試合は膠着していくこととなります。

熊本は左右のサイドを使おうとするも、焦ってしまっているのかスペースを作る前に仕掛けていってしまい、SBやプレスバックに来たサイドハーフに引っかけて前進出来なくなっていきました。
最終ラインまで戻して何とかやり直しを図るも、元々最終ラインで持たれる分には許容範囲の仙台。
73分に仙台が交代(相良↔キム・テヒョン、内田↔秋山)をすると、これが熊本の右サイド封じのための守備固めというのもあってか、攻める熊本、守る仙台というのがより鮮明になっていきます。
熊本は最後に道脇まで投入して攻撃に出ますが、ロングボール一辺倒になってしまい、結局そのままタイムアップを迎えました。

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