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月の夜の共犯者 10.


くそっこんなつもりじゃなかった。

家に帰るとボストンバック片手に出掛けようとする馨と遭遇した。

「お前そんな格好でどこ行くんだ?」
その日は例の都市開発の件で、しこたま呑んだあと夜の2時を回って帰ってきた。

「あ…お帰りなさい。ちょっとコンビニでも行こうかなって。晃も疲れたでしょ。こっちに来て…」

そうして促されるままベッドに向かった。

「コンビニぃ…?そんなん明日でいいだろ?
今日はもう俺の傍にいろよ…」

「そうだね、うん晃が眠るまでここにいるね。
晃酔ってるみたいだから、これ飲んで?」
そうして渡された水を一口でゴクゴクと飲み切った。

途端に急に眠くなる。

「おやすみ晃…ゆっくり休んでね」

あ…これはまずい、そう思うより先に強烈な眠気に見舞われ、意識が朦朧となった。

起きたときには、すでにそこには馨の姿はなかった。

「おい、馨、馨どこだっ」

日曜日だというのに、あたりの気配はシンとしていて物音一つしない。

仕方ないのでとりあえずテレビでもつけると、

「速報です!速報です!株式会社△□が賄賂を送り、株式会社○○コーポレーションとの取引を不正に行っていたことが分かりました。

株式会社△□は、医療機器を主に製造、販売している会社ですが、△□は他にも不正なルートを介し業績を伸ばしていたとの話しもあり、営業機密侵害で警察の捜査がはいっているとのことです。また営業部長の家には家宅捜索が入っているとの情報もあり詳しい状況は確認中とのことです…」

と慌ただしくリポーターが、全容を説明しようとしている姿が目に入った。

「な…なんだこれは…」

それは紛れもなく俺が働いてる会社の前の光景だった。

ヤバイ、本能的にそう感じデータを抜き出したUSBを探したが元あった場所にそれはなかった。

部屋じゅうをひっくり返してもどこにもない。

なんなんだよ、これは!!

「馨!馨!!おい居ないのか!!」

そのとき、ガチャリと扉が開きそこに居たのは
馨ではなく…警察の姿だった。

「坂城晃 営業執行妨害で家宅捜査をする」

やばい…パソコンにはまだ消し切れてないデーターが…

その瞬間、あまりのことに喉の奥がひゅうと鳴った。





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