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「ハケンアニメ!!」辻村深月

映画化された作品にどう接するか?
難しい問題。
すでに原作を読んでいた場合、原作の雰囲気を壊さないか、原作の雰囲気をそのまま映像化できているか、半ばやきもき半ばワクワクした思いで挑むことになる。
問題は原作を読んでおらず、かつ映画が評価されている場合だ。
どっちを先に味わうかは重要な問題だ。
映画を先に見て、次に原作を読むとどうしても登場人物の顔が役者の顔に変換されてしまう。
イメージが固定化されてしまう。
良いとこと言えば、映像で現されているものの背景を深堀できるところ。
気づきが楽しい体験になる。
ストーリーはどうだろう。
実は個人的にはストーリー改編はあまり嫌ではない。
雰囲気が大事、雰囲気さえあっていればストーリーに相違があっても許容できるが、ストーリーが完全に一緒でも雰囲気が違うとなんか嫌だ。
どっちが後でも、後に味わったものに違和感を感じてしまうから。
つまりどっちが先だろうが、雰囲気さえ同じなら相乗効果もあり、その作品が大好きになるのかもしれない。

本作は映画化され、評価されている作品。
どっちを先に味わうか、本当に悩んだ。
結果映画を先に見ることになったのだが、小説と醸し出す雰囲気は一緒だったから、小説・映画と何周もする大好き作品になった。
すごい良い体験。
今、出先でこの文章を書いているのだが、帰って映画か小説をまた味わいたくなっている。
DVD買おう。

小説は何人かの視点で描かれる。
一人はヒット作を生み出す、新進気鋭のアニメ監督。
イケメンで、作品も素晴らしい。
彼と彼をサポートするプロデューサーの女性が描かれる。
ヒット作品を期待される天才の心中はいかに。

もう一人は新人監督。
スタッフ、声優、プロデューサー、そして良い作品を作りたいという思い、それらとどう向き合うか。

最後にどちらからも評価される神作画の女性アニメーター、地域振興の為にアニメとタイアップしようとする、でまアニメに疎い若い市職員との異文化?交流も描かれる。

お仕事ものなのだが、業界の特徴なのかどことなく部活・青春ものに似ていて、すごい清々しさを感じるのだ。

映画はこの章立てを混ぜて交互に描いていて、アニメの最終回に向けてぐっと盛り上げている。
これもまたいい味を出している。

どっちも同じ雰囲気でとても良いのだ。

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