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一年半待て (短編小説)

自分と我が子を守るために、呑んだくれのDV夫を殺した女・さと子。婦人評論家・高森たき子や同情した女性たちの嘆願書が功を奏し、「懲役3年 執行猶予2年」の判決を受ける。しかし、その裏にあった真実は...!という話。

文庫本29ページの短編。前半12ページで事件の詳細をきっちりと解説し、後半17ページでその真相を説明し、ラスト2行で全てを覆す。これぞ清張ミステリーの基本形といえる作品だろう。

読者を納得させ、気持ちよく導いた後、それが全て虚構だったと突き落とす作戦。悔しいというより寧ろ爽快な、してやられた感でスッキリする不思議さが清張作品の魅力だと思い知らされた。

ネタばれしたくないので、この辺でまとめておきたいが、どうしても記しておきたいことがある。

まさに穀潰しな夫に搾取されながら、二人の子どもの為に必死で働くさと子の姿。昭和32年発表= 60年も昔の作品なのに、現代の働くお母さんにも通じる描写が目を引いた。「そうだよな、そんな事されたら殺したくなるよね」と、女性なら皆そう思うだろう。だから真相が判っても、さと子を悪くは思えない。ラスト2行で、より一層さと子を愛おしく思う女性は多いのではないだろうか。

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