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DESIGN of Bottling the VINEYARD vol.1

"Bottling the VINEYARD = 葡萄畑をそのまま瓶詰めする"をコンセプトにしたワインプロジェクトでは、これまでに多くの銘柄・ヴィンテージをリリースしてきました。
独自路線をいくエチケットデザインについて紹介する機会がなかったので、当時の「コンセプトノート ver.2021.3.9(*)」より抜粋して、まとめておきたいと思います。

(*) その当時、コロナ禍で勉強会兼交流会が開催できないモヤモヤを原動力に作成したものでした。
その年その年で生産現場で起こる様々なできごと・ドラマ・ストーリー、たまにトラブル、総じて言えば "諸事情(笑)" によって、ワインが生まれ出るものですから、すべてを網羅したものではありません。
記録というより絵日記みたいなもんですので、お気軽にご覧になってくださいませ。


ONE-TENTH 2836-83VINEYARD / MASCUT BAILEY-A

山形県南陽市赤湯字十分一山一2836-83 / マスカットベーリーA

Design Concept
じゃないよと 言えば言うほど布袋かな
畑を詰める序章(プロローグ) なり

プロジェクトの旗印ともいうべき、大沼 延男さんのマスカットベーリーA。赤湯十分一山の畑で収穫した葡萄をにこやかに眺める姿は七福神の一人 布袋様に似ていたことに由来。
「布袋じゃないよ、延男だよ」のコピーは、いつしか「布袋じゃないよ」に収斂されていき、気がつけば「じゃないよ」と否定すればするほど布袋に近づいていくパラドックスが何とも愛おしい。

ONE-TENTH 2658-1 VINEYARD / 'OLD' MASCUT BAILEY-A

山形県南陽市赤湯字十分一ノ一2658-1 / '古木' マスカットベーリーA

Design Concept
いつだれが… 明かせぬ謎に ときめいて
静かなる樹に 酔わん今宵も

紫金園に現存するものでは最高樹齢を誇るマスカットベーリーAの樹。その樹から収穫される葡萄だけで醸造したのがこのワインだ。老木への負荷を抑えるため一新梢に一房と収量を抑えており、産地赤湯の伝統を象徴する樹として知られている。
結局のところ、いつだれが植えたものなのかは正確な記録がなく迷宮入りとなったが、そのもどかしさこそが空想の余地であり浪漫の源泉でもある。

KAWA-DOI 3822-1 VINEYARD / NIAGARA 

山形県南陽市川樋字稲場山3822-1 / ナイアガラ

Design Concept
ゴッドテイル 成就の折は 目を入れて
遊び心も 神ガカッテイル

赤湯葡萄の生き字引、神尾 伸一さん栽培のナイアガラ。デザインモチーフはダルマ、神尾さん由来のふさふさ眉毛、あえて輪郭は描かない。
ダルマである以上、これにはちょっとした遊び心が仕込まれている。お腹のスペースには願い事をどうぞ。成就したときには目入れをして、キリッと冷やして飲んでもらおうというものだ。
’神ガガッテイル’ にも栽培者 神尾さんの ’神’ をかけてくるあたり、しつこい 笑
なお、ワインそのものは辛口で非常にスッキリしています。

ONE-TENTH 2836-83 VINEYARD / 'HAKURYU-DRY' MASCUT BAILEY-A

山形県南陽市赤湯字十分一山一2836-83 / '白竜ドライ' マスカットベーリーA

Design Concept
'アマローネ'… 余すとこなく 造ろうね!?
龍のうねりに 美曲を描き

大沼延男さんのマスカットベーリーAを収穫後に白竜湖からの上昇気流で自然乾燥させ、セミドライとなった葡萄で醸造したもの。いわば赤湯版アマローネともいうべきか。
このときの経過はまた別の機会に御紹介します。

ONE-TENTH 2836-106 VINEYARD / 'LATE-HARVEST' STEUBEN

山形県南陽市赤湯字十分一山一2836-106 / '遅摘み'スチューベン

Design Concept
夕日背に 十字を組んで 立ち向かう
帰ってきたぞ 躍動(ムーヴ)止まらん

栽培者の神尾 幹夫さんは退職を機に故郷 赤湯に戻り、家業の葡萄栽培の継承者となった。
醸造を担う須藤ぶどう酒の四代目 須藤 孝一さん(*神尾 幹夫さんとは同級生)によれば、「幹夫くんの小さいころのニックネームは"おたまちゃん"。目くりくりっとしてで、"おたまじゃくし"みでぇだったがらよ!」とのこと。
ここから導かれたテーマは「帰ってきた おたまじゃくし」。面影は残るものの、今や立派な大人(会社では偉かったらしい!)であるので、モチーフは目のくりくりっとしたカエルになった。
故郷の産業の危機を救うべく帰ってきた経過を「帰ってきたウルトラマン」へのオマージュとしてイメージを重ね合わせ、腕は十字に組んでもらっている。(・・・光線は出ません)

KANEZAWA MAMPEI 509 VINEYARD / 'DOGGED' KOSHU

山形県南陽市金沢字万平山509 / '頑なに' 甲州

Design Concept
頑なに 守り続けた 意地がある
送り届けん ヒバの葉を添え

金沢は同じ赤湯エリアの中でも特異な葡萄栽培の伝統をもつ地域だ。とりわけ「甲州種」の栽培については全国的にも稀有な歴史があり、栽培者 新関 隆司さんは頑なに金沢産甲州を守り抜いてきた。
(私が祖母から聞いた話ですが)その昔、収穫された甲州は木箱に収納し、防虫のためにヒバの葉っぱが一緒に入れられていた。木箱ごと雪の中で保存しておいて「お正月に食べだな、懐かしいごどなぁ」とのこと。
歴史と伝統、文化と産業、その継承・・・ぐるぐるイメージを廻した挙句は「ヒバの葉を添える」という伝統作法をそのまま表現することとした。

MADZUZAWA-MYBR 22-1 VINEYARD / SAN QUE HADSU

山形県南陽市松沢字宮原22-1 / さんきゅうはづ(マスカットベーリーA)

Design Concept
騎士は待つ ざわめく街の その奥で
赤湯の誇り 御旗に掲げ

赤湯の市街地から東へ進む。赤湯の最奥地といういうべきか、お隣高畠町との境界あたりにその畑はある。ここにも赤湯の葡萄産業を支える生産者がいる、山崎 秀一だ。
地理的な要素もあって、デザインのテーマは「ガーディアンナイト(守護の騎士)」である。カキカキと角ばったタッチは「基本に忠実・仕事はきっちり」という葡萄栽培者の為人に由来するものだ。
御旗に掲げた "赤湯プライド" に呼応して、銘柄の名称にも「MASCUT BAILEY-A」ではなく「SAN QUE HADSU(さんきゅうはづ)」を採用している。

次回 vol.2 もお楽しみに!

当時を思い返しながら、書き始めると長くなりますね。
生産年ごとのあれこれまで含めたらいよいよ際限なくなりそうですが、つまるところワインってそういうものかもしれません。

この続きは 次回 vol.2 をまとめるときに御紹介したいと思います。
ご覧いただきありがとうございました。

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