おちもり

松屋派でアラサーのOL。ちょっぴりエッチです。

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「育ちの悪い人」だけが知っていること

 花の蕾がほころび始めた頃、私は私の出自について差別的な発言を受けた。「育ちが悪い」のに、ごく普通の出で立ちをしているのが不味かったらしい。記憶する限りでは成人してから初めてのことで、年齢相応の経験を積み、日々襞を折るように厚みを増してきた私自身の総体を、根本から薙ぎ倒すほどの衝撃があった。  自身に差別や偏見に晒されやすい属性があるのは、物心ついた頃から自覚していた。「属性」とは家族構成に関することで、自分たちは至極真っ当だと思いこんでいる親戚筋から攻撃されたり憂いたりさ

    • Chut! INTIMATESの思い出

       ランジェリーブランド「Chut! INTIMATES」が今月末でブランドを終了する。昨年の秋頃に第一報を耳にして「そんな!これから、どうしたらいいの?」と動揺したファンは、きっと私だけではないだろう。唯一無二の魅力があるブランドで、長年の愛用者も多かったに違いない。ここ5年くらい、私のインナーワードローブはChut! の下着(ブラショーツ以外のインナーも含む)の独占状態にあった。  23歳で親元を離れて一番うれしかったのは、下着を自由に選べるようになったことだ。街のランジ

      • 2023年、30代の上京物語

         2023年は激動の年だった。仕事の都合で数年住んだ田舎町から脱出し、都会で新生活を始めた。転居してから10ヶ月近く経過したため今更の感はあるが、このことを中心に1年を振り返って書き留めておく。なお、私の現住所は1都3県の3県のうちの1県であり、東京都内ではない。しかし、東京都心が通勤圏生活圏に含まれるようになったなら、それは「上京」と呼んでも差し支えないのではないか。実際、東京ドイツ村よりはだいぶ東京寄りである。というわけで、キャッチーさを優先してこのタイトルを採用した。

        • YOASOBIが嫌いでしんどい

           タイトルのとおり、YOASOBIが嫌いで嫌いでたまらなくなった。「アイドル」の冒頭の「デン!」を耳にするだけで身の毛がよだつので、もう後戻りできないレベルの異常アンチである。  なぜ今更、と私自身も疑問に思う。Apple Musicのプレイリストに彼らの楽曲が現れても平然と聴き流していたし、過去2回の紅白歌合戦出場時もわりと楽しく視聴した覚えがある。強いて挙げるなら「夜に駆ける」よりは、ずっと真夜中でいいのに。の「秒針を噛む」の方が好きだなあと思ったことがあるくらいで、や

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          帰省のこと

           下りの新幹線は10分遅れていた。私は当日でも余裕で指定席が取れる上り列車を待ちながら、そのアナウンスを聞く。自販機で買った温かいお茶は、手に取ったそばから冷めていった。  満席の車内を何時間も耐え忍んで帰省をする乗客のうち、だいたい何割が久しぶりの家族団らんを心待ちにしているのだろう、と想像する。地方の小さな町にある最寄り駅のロータリーにも迎えの車が列をなしていて、30分無料の送迎用駐車場は埋まりかけていた。いつまでも変わらない山野と緩やかに綻びゆく集落が佇む故郷は、親元

          帰省のこと

          おいしいランチを食べよう

           久しぶりに「おいしいランチを食べよう」と思い立った。ずっと心にゆとりがなかったので、店員相手の事務的な会話すら苦痛に感じたり、料理が出てくるまでの待ち時間をもったいながったりしていた。必要最低限の外食作法に則ることすら億劫になっていた私は、ここ数週間前に自身の状況に好転のきざしを見出してから、多少復調しつつあった。  向かった先は豊富なランチメニューを売りにしているカフェである。開放的な雰囲気で、大体はママ友、とラベリングできそうな女性同士のグループ客ばかりだ。ここの「カ

          おいしいランチを食べよう

          出会い系掲示板でスケベできなかった話

           失恋の傷は、「時間」か「新しい恋」が癒やしてくれるらしい。松屋のごろごろ煮込みチキンカレーに食指が動かなくなるほど落ち込んだ私は、何日も洗っていないシーツの上で「失恋 立ち直り方」などと検索し続けていた。コピーペーストが積み重なった夥しいウェブサイト群の中に、ただ一つの救いの言葉を求めた。  毎日毎日朝起きた瞬間から茫然と頭が働かず、出勤しても顔面蒼白でモニターの光を浴びるばかりでいたら、ついに上司から「おちもりさんは休日も仕事のことばかり考えているのではないですか。潰れ

          出会い系掲示板でスケベできなかった話

          寂寥だけが道づれ

           だいぶ手痛い失恋をした。失恋の理由は前記事の内容と不可分なので、きっと時間の問題だろうと高を括ってはいたが、燦々と輝く愛おしい日々がもう二度と手の中に舞い戻ってくることはないと分かったら、口惜しくてたまらなくなった。  恋が叶わない寂しさ、悲しさ、悔しさの程度は年を取るごとに増していくように思う。30を過ぎてからそのステージが一段上がった。心の成熟する速度は人それぞれなのだろうが、心を外側から牽引する肉体と社会は、お前の都合なんか知るか、と年齢にふさわしい在り方を要求して

          寂寥だけが道づれ

          孤独につける薬(金沢遠征記)

           保険適用の低用量ピルを処方してもらって、自分よりも明らかに若い患者を尻目に、清潔なクリニックを後にする。入口には一年ほど前から「新型コロナウイルス感染症対策のため、同伴の方の同席はご遠慮ください」の貼り紙がされていて、ここが未来ある女性のための医療機関であることをまざまざと思い知らされる。薬さえあれば日常生活に差し支えない程度の症状とはいえ、男性社会で壮年期を生き抜くうえでこの病気は重い足枷となる。降りられるものならこの戦いを降りたい。閉経なんて、案外あっという間かもしれな

          孤独につける薬(金沢遠征記)

          30歳。ひとりで生きられそう?

           私は単にふられつつあるのではないでしょうか。なけなしの慕情で「好きだよ」とメッセージを送っても「俺も好きだよ」とは返ってこない。そもそもしばらく前から、会う約束自体、私のほうから声をかけない限り成立しない状態にあった。これが潮時なのは誰の目にも明らかである。もう婚活なんてしない。どうしようもない私に天使は降りてこない。良くも悪くも彼のおかげで、色々とようやく諦めがついた。恋はしない派(セックスはしたい派)。マイペースに、マイペアーズ。多くの学びをありがとうございました。

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          私はタツローでレトリィバァで、ちょっとオードリー・タン

           ことしのゴールデンウィークは、入社5年目にして初めて4連休を獲得した。色々とやりたいことはあったが、カレンダー上の休日と自分自身の休日がこんなにも長く重なるのは珍しいので、4日間のほとんどを彼氏と過ごすと決めた。遠出はできないにしても、近場でゆっくり過ごせばきっと充実した休暇になるだろう。そう考えていた。  連休の中日に、服が欲しいと言う彼に連れ添って、地域内ではもっとも広いショッピングモールへ出かけた。ところが彼は自身の買うべき紳士服よりも婦人服に興味を示し、私の体に当

          私はタツローでレトリィバァで、ちょっとオードリー・タン

          塾の先生

           小学校4年から高校3年の途中まで通った学習塾は、15階建てのマンションの一室にあった。玄関を入ってすぐ右側にある6畳ほどの洋間に、長机とパイプ椅子と本棚が置かれ、ホワイトボードが壁にかけてあるだけの簡素な教室だった。平日の夕方5時からと、7時半からの2つの時間枠で、小中学生の補習から大学受験対策まで、幅広い指導がそつなく行われていた。  今思い返せば驚くべきことだが、これらすべての指導をひとりの先生が担当しており、教室はこの先生の居宅内に設けられたものであった。先生は東日本

          塾の先生

          ペアーズ活動記③退会

           交際相手ができたので、光の速さでペアーズを退会した。その夜は歯を磨くのもままならぬ酩酊ぶりであったが、ペアーズの退会方法を検索して、着実に実行する知性だけは残っていた。  交際が決まってからの私は浮かれモードの只中にあり、ロマンティックな経緯を詳らかに語りたい気分を持て余している。だが、第三者にとってのそれは有害コンテンツ以外の何物でもないので、ぐっと堪えてうろ覚えの戦績を以下に記す。  上記数値の客観的な多寡については知る由もないが、私にとって魅力的な男性は、想像してい

          ペアーズ活動記③退会

          ペアーズ活動記②そのぬくもりに用がある

           仕事で課されるよりもヘビーな書類を休みの日に書いていたせいで、この9月はだいぶ忙しかった。そんな中でランナーズ・ハイ気味に実現させたアポ(男性との面会)は3件。それぞれの所感を簡単に列記する。 ①Aさん  Aさんは、メッセージへのレスポンスが異常に速かった年下の男性である。メッセージとサブ写真から、かなり近所に住んでいることが判明したため、こちらから夕食兼お茶に誘った。容姿の印象は写真よりも遥かに良かったが、のっけから話が止まらないマシンガントーカーで、私は始終目を回して

          ペアーズ活動記②そのぬくもりに用がある

          ペアーズ活動記①ヤリモクとの遭遇、会社の先輩に垢バレ編

           8月下旬にペアーズを始めてみたところ、思いがけず面白い出来事にばかり遭遇するので、筆を取ることにした。ちゃんと出会えている同年代リアル友人の皆さんが使っているペアーズと私が使っているそれは、はたして本当に同じアプリなのだろうか? この記事を書いている段階で既に挫折しそうだが、一応は新たな展開に期待して、タイトルに番号を振っておく。  この私が「なんとなく婚活してみようかな」と思ったきっかけはコロナ禍である。2020年9月7日現在、ここクソ田舎では、これといった正当な理由な

          ペアーズ活動記①ヤリモクとの遭遇、会社の先輩に垢バレ編

          マー油ラーメンの店

           身勝手な客のお茶出しを命じられたので、一服盛ってやろうと思いついた。(所属集団の中で一番)若い女だからという理由でお茶出しを命じる奴は、基本的には若い女を蔑んでいるくせに、若い女のかよわさを信じ切っている。給湯室の棚を一応は物色したものの、亜ヒ酸もトリカブトもタリウムも見当たらなかった。身勝手な客は私が出した茶碗に一度も口をつけなかった。  話を聞き終えて、身勝手な客の邪悪さに改めて怒りをおぼえた。そして、コイツを手に掛けられず、仕事もうまく行かなくて私生活も腐っている私

          マー油ラーメンの店