見出し画像

第3節 横浜F・マリノスvs川崎フロンターレ 2019.03.10(完全マリノス視点)

三好は契約上、川崎フロンターレ戦には出場できず、高野は全治8か月の怪我で欠場。川崎も大島僚太が急遽欠場、ACLで連戦中という事情もあり小林悠と中村憲剛はベンチスタート。ガチンコ対決は、互いに優勝争いをしているだろう第33節まで楽しみにしておくことにしよう。

■前半序盤の川崎守備

ガンバ大阪やベガルタ仙台が、マリノスの2CBに持たせてくれたのとは違い、開始早々ダミアンと知念は、パスコースを切りながらガシガシプレスをかけて来る。川崎CFがマリノスCB〜GKまで追っていけば、喜田の背後にはCHが迫る。特に失点シーンはアンカーにパスが出るのを「待ってました!」と言わんばかりに守田、田中、登里が一斉に詰めてきた。

最初のレイヤー~第2レイヤー(レイヤーについてはこちら)でマリノス4+GKに対して川崎は6で数的不利。こうやって見てみると、パスミスしていなくてもかなり危うかったことが分かる。本来ならば、広瀬が第2レイヤーに残るか、大津が降りてくるところだが、意図的にリスクをとって数的不利を受け入れているのだろうか。失点後も2トップの前プレスに苦しむが、10分過ぎあたりから喜田がCB間に降りるようになり、時間帯もあってか川崎2トップもあまり深追いはして来なくなった。

■突破口は畠中槙之輔

7分20秒。
レイヤースキップパス未遂。少し長かった。

①飯倉→畠中へ
②SH家長を釣り出す
③家長裏のスペースへ通すが、SB馬渡がカバー

10分50秒。
畠中で家長を釣り出し、喜田とティーラトンの動きで崩しかけた。

①チアゴにパス後2トップ間に走る喜田
②チアゴ→畠中へ
③SH家長を釣り出す
 (田中がワイドをカバー→CH間が広がる)
④降りてくるティーラトンへパス
 喜田はDH間へ移動
⑤ティーラトンの落としをCH間の喜田へ

19分15秒。
レイヤースキップパスで決定機。

①ティーラトン→畠中へ
②SH家長を釣り出す
③SB馬渡はマルコスJrをカバー
 天野はSB裏へ走る
④畠中のレイヤースキップパス

40分50秒のシーンも、これと全く同じ要領でSB裏のスペースに走り込む天野にレイヤースキップパスを通す。

意図的なのか何なのか、喜田の右脇に誰も降りてこないので、序盤の突破口はだいたい畠中となる(CFを喜田やティーラトンでピン留めして畠中へ→家長を釣り出して裏のスペースを使うパターン)。守備面でも要所要所で跳ね返してくれる畠中槙之輔の質的優位万歳である。マリノスへ来てくれて本当にありがとう

◾️開かないチャンネル

困ったことに川崎の守備は非常にコンパクトで、なかなかチャンネル(CB〜SB間)やハーフスペースを開けてくれなかった。SBを釣り上げても全体がボールサイドに寄っており、かつ川崎CHやCBは開いたチャンネルをケアする意識も高い(11秒40秒~)ので、有用なスペースが空かない。26分30秒〜のシーンのように、SB車屋とSH登里が相互にスペースを補完するシーンも。

開門できたシーンもあった。9分、広瀬がCB谷口を釣り出してハーフスペース開門。しかしそこに走り込む青い選手は誰もいない。せっかく第2レイヤーの人員を削って第3レイヤーを厚くしているのだから、大津はSH登里の背後を回り開門されたハーフスペースへ突撃して欲しかった。

マルコスJrの同点弾は、仲川がチャンネルを強引に突破、強引に折り返した結果だ。ポジティブに捉えるならば、王者川崎相手にマリノスの誇る質的優位が十分に通用したと言える。

◾️4-1-4-1守備の欠点

4-1-4-1守備の欠点は、アンカー脇のスペースを使われること。

20分20秒のシーンは、そのアンカー脇で知念が受けたことにより畠中が釣り出されてしまい、まんまとCB裏のスペースを家長に使われてしまった。この泣き所を知っているのならば、喜田には躊躇なくCB裏のカバーに入って欲しかったと考えてしまうのは無茶な要求だろうか。飯倉のビッグセーブがなければ窮地に陥っていた。

◾️後半序盤の川崎守備

後半に入ってから、川崎2トップの守備意識が変わったのか、簡単に飯倉→喜田へボール入るようになる。

あえてアンカーへのパスコースを残しボールを誘導、喜田に入ったところをCHが狩る狙い?ともかくこれはチャンスと言わんばかりに飯倉は躊躇なく中央へボールを送り、喜田はターンで前を向く。特に56分30秒の2人のプレーは圧巻で、まさにBrave & Challenging〜勇猛果敢〜だ。

◾️ダイアゴナル・ラン(斜め走り)

サイドを崩してGK〜CB間にグラウンダーのクロスを放り込み、CF〜逆サイドのWGで仕留めるのは昨季の得意パターンだったが、今年は外→中に入って行く動きでゴールを狙うパターンも多い。その名もダイアゴナル・ラン(斜め走り)。

これはルヴァン杯の大津のゴールだが、川崎戦でもダイアゴナル・ランは多く見られた。54分の広瀬、76分の天野、80分30秒のティーラトン。

①誰がどのタイミングで斜めに走り出すのか分からないので、相手の対応が後手に回る
②逆サイドから斜めに中央へ侵入するので、相手の背後を取りやすい(マークを外しやすい)

などのメリットがあるのではないかと勝手に思っている。

◾️小林悠投入で変化した川崎守備

65分に家長→小林悠に交代したあたりから、2トップ+SH小林も前プレスに出る4-3-3守備と撤退時の4-4-2守備を使い分けるようになる。時計の針が進むほどに川崎守備は前傾姿勢になっていったが、ここで慌てて機能不全に陥らないのが今年のマリノス。前線3枚プレスに対し最終ライン1枚落とし=3人で対応、川崎2列目の脇(特に小林悠の裏)のスペースを有効に使い、ボールを前線に運んでみせた。

扇原が上がって右IHのポジションに納まるシーンもあったりと、この交代はアンカーポジションに入る選手を特定させたくない意図があったのかもしれない。ゴールこそならなかったが、変化する守備に即座に対応した今年のマリノスは、やはり一味違う。

◾️決めきる力

86分30秒、右のトライアングルでSBを釣り出し、SB裏のスペースに走り込んだ広瀬→遠藤渓太は非常に惜しい決定機だった。これ以外にも一瞬のモタつきや連携のニアミスで逸した決定機は少なくなく、開幕2戦と同じくやはり課題は決定力だと考える。ただ昨季までと違い、狙いを持って臨めているコーナーキックは好材料で、セットプレーで拾える勝ち点が今後も増えていくのではないかと密かに期待している。

◾️まとめ(お気持ち)

個人的には、引き分けにふさわしい好ゲームだと感じた。川崎にはリーグ戦直近3試合は内容で圧倒されていただけに、(川崎はベストメンバーではないとは言え)ここまでやれたのは素直に嬉しかった。大津は、前半こそ空いたスペースに走り込む仲川に気付かなかったり(13分50秒)、気負いが感じられるようなポジショニングだったが、38分30秒に登里を交わしたターンは素晴らしかったし、62分20秒〜64分30秒には持ち前の守備力を活かし再三に渡って川崎の攻撃の芽を摘み取っていた。三好にはなれないのだから、己の長所を活かしながら攻撃面でのバージョンアップを目指せばいい。ティーラトンもこなれてきた後半の方が良かったと思うし、59分20秒のエグめの縦パスや上述のダイアゴナル・ランなど見せ場もあり、場数を踏めばもっとフィットしてくれるだろう。今季リーグ戦初スタメンで川崎相手にここまでやれたことに関しては、自信を持っていい。このチームが来週はどんな伸び代を見せてくれるのか、非常に楽しみである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?