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第4節 大分トリニータvs横浜F・マリノス 2019.03.17(完全マリノス視点)

はいどうも。スタメンはこれ。

■ポジショナル放置プレー

開始50秒、マリノスは日本代表に選出された畠中槙之輔に試練を与える。

ポジショナル放置プレーである。「畠中、お前日本代表なんだろ?それくらい自分で打開しろや!」と言わんばかりのドSっぷり。もはや横浜S・マリノスではないか。川崎戦の失点シーン然り、最近のマリノスはビルドアップの局面で人員を削ぎ落とす傾向にある。「前線は数的優位作りで忙しいから、ビルドアップはGK+4人で何とかしてくれ!じゃ、あとよろしく!」的なアティテュードは、さながらブラック企業だ。ともかく、このとっかかりで大分に「早速プレスがハマって日本代表CBを追い詰めたぜ!これ、やれるんじゃね?」という印象を与えてしまった。

■大分の守備

大分は守備時5-3-2で、マリノスは主に2トップ〜2列目脇を狙う。ティーラトンがインサイドにがっつり絞らず、2トップ~2列目脇で受けようとするアティテュードも見られた。2トップ~2列目脇にボールが入ると、2列目がスライド+WBが寄せる+最終ラインがスライドして(分かりやすく4バック化と表現することも)スペースを埋める。簡単にはスペースが開かない設計になっており、マリノスはこの連動した守備にかなり苦しめられ、まさにこの図の通り袋小路に追い詰められることが多々あった。記憶が確かなら、年末年始あたりにマンチェスターシティと対峙したセインツが、途中からこのような5-3-2守備に切り替えてシティが一時攻めあぐねていたような、いなかったような。

右WB松本は古巣相手で気合が入っているのか、マリノス陣内の深いところまで出てきてビルドアップを阻害。特に天野にはしつこく寄せて前を向かせない。アンカー監視役のCH前田の守備時のポジショニングも素晴らしく、喜田もなかなか前を向けない。大分の連動した守備に加え、この2人のアグレッシブな守備意識がマリノスを一層苦しめた。

■ポジショナル質屋

3分50秒。チアゴから2トップ脇のティーラトンにボールが入るが、ライン間に誰もおらず逆サイドからの出張もないため人手不足。大分としても守りやすい。開始早々のポジショナル放置プレーの反省からか、天野のポジショニングはビルドアップの出口を意識しすぎてしまったのかもしれない。


5分50秒。マルコスがライン間で受け、HV岩田を釣り上げたシーン。WB松本は天野に背を向けているが、天野は松本裏、もしくは岩田裏に走り出さなかった。

「流動的なポジショニングはいいけど、そういえば質的優位ってどうなってるの?」と今一度考え直したくなったシーンだ。質的優位を考えれば、ライン間のハーフスペースで受けるのは天野の方がいいだろうし、ワイドはスピードのあるマルコスJrの方がいいだろう。大分の守備は「こう来たらこう!」とある程度決め打ちしており、マリノスの流動的なポジショニングに釣られる様子はほとんどない。ということは、流動的なポジショニングの目的である数的優位と位置的優位を作り出せていない。つまり「各々の長所を活かせないポジショニングで相手にハンデを与えてみようぜ!」というただのドM行為になっているのだ。横浜M・マリノスの誕生である。略して横浜MM。みなとみらいか!

例えるなら、100円の価値がある質的優位を30円で質に入れ(質だけに)、それぞれ15円分ずつ数的優位と位置的優位を買い増したイメージ。ちょっと自分でも何を言っているのかよく分からない。


流動的なポジショニングで偽りだらけの横浜M・マリノスの図。「居酒屋びるどあっぷ」は深刻な人手不足のため、制服の違うキッチンスタッフもホールスタッフに混ざって配膳に参加している。

とはいえ(?)、偽SBといわれるアンカー脇のポジショニングや、アンカー脇に降りていた三好のところで設計通りにボールを回収できていた。


逆に1失点目は、ボールロスト時に天野とティーラトンがワイドに開いておりアンカー脇はがら空き、一番危険な中央にパスを通されてしまったことが起点となった。このあたりのさじ加減は、このサッカーの永遠の課題なのかもしれない。

■大分に与えた自信

マリノスは思うように試合を運べない焦りからか、不要なファールを連発。

7分20秒、GK高木からの高精度フィードが左WB高山に入り、ファーストタッチとスピードで広瀬は置き去りにされてしまう。そのままいけば「残念、そこはチアゴマルチンスさん」の場面だったが、慌てた広瀬はキムタクの名台詞ばりに高山を掴んでしまいイエローカード。


12分30秒、完全に狙われているアンカーへ勇猛果敢にパスを出した日本代表・畠中。喜田は2CB+GKへ戻すパスコースを消されており、「待ってました!」とばかりに背後で待ち構えていたアンカー監視役のCH前田に引っ掛けられる。慌てた喜田は日大アメフト部ばりのタックルを藤本にお見舞いしイエローカード。

CHティティパンと共にティーラトンがインサイドに入り、広がった2列目の脇に降りてくる天野を待てなかったか。これもポジショナル放置プレーの影響か、畠中らしくないプレー選択だった。

開始15分くらいまでの慌てるマリノスを見て、「対策が効いているので、気を抜かなければやれる!」と自信を深めたのではないだろうか。以降も大分の思惑通りに試合が進んでいく。

■奪取はできるが...

大分が繋いでくる時、奪取はできていた。特に喜田のボール奪取能力が素晴らしく、アンカー周辺で結構狩れる。アンカー脇にボールが入ってもCBが寄せて摘み取りきる。アンカー脇を有効活用され家長の抜け出しを許した川崎戦とは違い、ここでは個で勝ることができた。しかし大分が迷いなく仕掛けてくる「ハイラインの裏に縦ポン鬼ごっこ大作戦」には、マリノス2CBは終始手を焼くことになる(畠中の出張時はチアゴがワンオペで対応)。

■空けたスペースが使えない

「ポジショナル質屋」の項で挙げた5分50秒のシーンもそうだったが、あまり隙のない大分守備をやっとこさ動かして空けたスペースも、人手不足やトライアングルのバランスの悪さなどで使えないことが多かった。

WBとHVが仲川に釣られて空いたスペースが使えない。赤矢印は、こう動けばよかったんじゃないか?と個人的に考えた素人の浅知恵。でも前節までは、阿吽(と書いてズッ友と読む)の呼吸で「空けたスペースに誰かが入る」連動した動きができていたような。


天野のダイアゴナルランでHVを釣りエジガル前のスペースをこじ開けたが、活用できず。


相手守備をボールサイドに寄せたところで広瀬がサイドチェンジ→畠中→マルコスJrの流れは良い感じだったが、WB松本を釣って空けた裏のスペースを活用できない。


飯倉から縦に素晴らしいレイヤースキップパスが通ってもこれである。


トライアングルのバランスはマルコスJrの時より良さげだが、遠藤渓太が釣ったWB+HV裏のスペースを活用できない。

ここらで過去の栄光と見比べてみる。

前プレに来ないので押し込めていることも大きいだろう。選手間の距離も近く、掻き立てられる畠中のイマジネーション。


トライアングルのバランスとは、ピッチに対して3辺全てが程よく角度がついている(平行でない)+内角がざっくり90度を超えない形状の維持が望ましいと勝手に考えている。理由は、何となくそうなってるときに効果的なパスが出やすそうに見えるから。ちなみにこの後、トライアングルの底に位置する高野はハーフスペースを駆け抜ける。(※過去記事参照)


良い例。トライアングルの形が整ったところで崩しのギアが入り、形状を維持し回転させながら崩す。程よい弾力、程よい大きさ、角度、形、色、全てが完璧。

昔の△自慢はこれくらいにしておこう。

■妄想を膨らませる

「ビルドアップ時に相手2トップ〜2列目脇を使う意識」+「パスやドリブルを仕掛けるスペースを狭めないようボールサイドに寄せない意識」
→ピッチに広がりすぎて各々が孤立
①選手間の距離が遠い為パスが強めでトラップも大きめ
→相手の寄せ、スライドが間に合う
②選手間の距離が遠い為逆サイドから
→数的同数以上の局面を作れない
 (相手はスライドし頭数でスペースを潰しているので尚更)

もしこの妄想通りで、ビルドアップ隊に数的リスクをとらせているにも関わらず前線がこの有様ならば、極めて非効率な攻めとなってしまっている。


それならば、2列目〜最終ラインのスライドを逆手に取ったサイドチェンジを多用するなど、横に揺さぶる展開がもっと欲しいところ。失敗したがイメージに近かったのは三好のこれ。

CB経由のU字型サイドチェンジは見られたが、それでは相手のスライドが間に合ってしまう。ペップ・グアルディオラも嫌うティキタカ(意味のないパス回し)だ。

■まとめ

①質的優位を位置的優位/数的優位に等価未満で交換しない
②自分達が動くことが目的ではなく、あくまで相手を動かすことが目的

アジアカップ+怪我明け合流後3週間にも満たないティーラトンの連携面が改善し戦術理解が深まれば、チームとして良くなっていくのは間違いない。代表戦を挟んでの鳥栖戦に期待したい。

最後は日本代表・畠中槙之輔のレイヤースキップパス集(第4節)で締めます。
(※レイヤーについてはこちら)

それでは、日本代表戦をお楽しみください。
さよなら、さよなら、さよなら。

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