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夜店

ここからが異世界だよとアセチレン銀貨銅貨の区別もつかず



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子供の頃住んでいた地域は夏の間だけ、1日、11日、21日と1のつく日に少し離れた広場に夜店が立った。

十数個の店が向き合った筋が二つはあったように思う。


兄と一緒ならと家を出して貰えた時は、兄の同級生がずっと側を離れずに夜店を回ってくれた覚えがある。

いつもは持てない100円玉を何枚かを入れた財布。
オレンジ色の灯りの下では、100円の銀貨と10円の銅貨が色では見分けられなくて。

友達同士で行ってもいいと言われたのは、高学年になってから。

私がずっと夜店と呼んでいたものは屋台で、神社やお寺の門前には昼間にも立つというのを随分大きくなってから知った。

オレンジ色の灯りのない空間は、あっけらかんとしていて、私には全くの別物に思える。

屋台と夜店は違うよなって。

巻き上がる砂埃の中、焼け焦げた醤油やソース、毒々しい色をした甘い食べ物、明日の朝にはゴミになってしまう何かしらのプラスチック製品。

街灯もない国道の先に広がる薄ぼんやりしたオレンジ色の異世界。

テキヤという言葉も聞かなくなった。
何が正しくて何が正しくないのかなんていう小難しい話ではなくて。

俄か屋台の焼きそばや綿菓子には、敵わない味があった。

これで飯を食ってる という覚悟というか…
うまく言えないけど。

体裁が、見た目が似ていればOKなわけじやない。

で、あの灯りは、アセチレンであってるのかな?



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