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Dani Californiaと絶望ビリーの共通点・相違点

前者はRed Hot Chili Peppers(以下、レッチリ)の曲であり、後者はマキシマムザホルモン(以下、ホルモン)の曲である。関係なさそうで実はデスノート関連の曲であり、しかもミュージックビデオの構成が似ている。それだけに相違点が際立つという内容。

バンド:レッチリとホルモンの接点

どちらのバンドもジャンルで括ると「ミクスチャー」だと言えてしまう。様々な音楽の「ごった煮」くらいの意味なので、それぞれに音楽性は違い、もはやジャンルを指す言葉としては機能していない。

ただ、ホルモンのベーシストである上ちゃんによる上裸でのスラップ奏法はレッチリのフリーから影響が色濃く、それがホルモンの個性にまで影響していることは間違いない。2009年の1月、神と崇めるフリーとの遭遇を果たしたことが日記で綴られている。
http://www.55mth.com/ryotoday/index.php?n=20090123

あの神とついに会えたそうです!
レッドホットチリペッパーズのフリーと上ちゃん
すげーー!!!
てかフリーめっちゃジジイなってる(笑)

※この記事では引用元URLを示し、作法に則って引用している。一応。

楽曲:Dani Californiaと絶望ビリーの共通点

今回、ピックアップした楽曲同士は、どちらもデスノートの曲という共通点を持つ。

レッチリはもともと9thアルバム「Stadium Arcadium」用に作っていた「Dani California」を、2006年の実写版映画「デスノート」の主題歌に提供した。プロデューサーがロスまで飛んで頑張った様子が記事に綴られている。

一方の「絶望ビリー」は、2007年の4thアルバム「ぶっ生き返す」に収録されており、歌詞の内容からも明らかにデスノートをテーマにしている。そしてこれが、アニメ「デスノート」のエンディングに採用されている。

Dani California

そんなレッチリ「Dani California」のミュージックビデオから。

レッチリのメンバーが様々なバンドに扮して演奏する。知恵袋を漁ると元ネタが列挙されていた。

エルビス・プレスリー
ビートルズ
バディ・ホリー
ザ・ゾンビーズ
ミスフィッツ
プリンス
パーラメント
ファンカデリック
デヴィッド・ボウイ
マーク・ボラン
セックス・ピストルズ
モトリー・クルー
ニルヴァーナ

他にも2:19マイクスタンドのスカーフなんかはエアロスミスに思える。いずれにせよ、漠然とした「この時代のこのジャンル」ではなく、知ってる人には特定のバンドが思い浮かぶくらいの再現である。コケにしているのか紙一重ながら、振る舞い・小道具・カメラワークに至るまで真似るのはリスペクトなしにできない。

そして、最高潮に高まったところで、いかにもレッチリらしいステレオタイプなレッチリを自らが演じる。「待ってましたー!」という演出だ。過去の偉大なバンドを温故知新して今のレッチリがあるというメッセージに感じられた。そうでなきゃ、アンソニーが自伝で自殺のことをショックだと言及していたカートコバーンの真似なんて出来る筈がない。それに、上ちゃんがフリーを崇めたように、フリーだってブーツィーコリンズ(パーラメント)を崇めながら星眼鏡している。

正直、アルバム「Stadium Arcadium」が出た2006年当時に聞いて、あまりピンとこなかった。ギタリストであるフルシアンテ色が強くてレッチリらしさを感じないという批判もあった。...というか正直に告白すると、当時インパクトある歪み系ばかり追っていて、レッチリの凄さに気付いたのは後追いになる。

その後の十数年は脱退したフルシアンテを焦がれる事になり、トリビュートでライヴ出演する機会(トップ画像のベーシストは私)があったり、2019年のサマソニで拝んだりして、改めて聞き込むとあれもこれもレッチリだったんだと感じる。

絶望ビリー

一方の「絶望ビリー」のミュージックビデオはこちら(公式がなかったので拝借)で、「Dani California」との共通点・相違点がそれぞれある。

邦楽シーンを象徴するようなバンドやミュージシャンが代わる代わる曲を演奏する点や、後半に本人が出てくる点において、レッチリの「Dani California」へのオマージュだと受け取れる。

ただ、ホルモン自身の変装ではない点と、特定のアーティストではなく、邦楽シーンを象徴したステレオタイプである点が異なる。誰なのか解き明かそうとしてくれている記事もあった。おそらくホルモンと交友関係だろうけれど、それが誰なのかはミュージックビデオにとって本質的ではなさそうだ。

【判明した出演者】
・ビジュアル系のバンド・・・PARFAIT (複数のサイトで確認。たぶん合ってる)
・アイドル系の女の子・・・辰巳 奈都子
・ヒップホップ系の二人組・・・アンディとジョージ☆(というらしい。真偽不明)
・ギターを弾いて歌っている女性・・・KIKU(THE SWEET TRIPというバンドのvo/g)

ミュージックビデオの世界観をデスノートから拝借していて、前半いろんなアーティストがパフォーマンスしていたのが、1:05あたりからデスノートに名前を書く描写がカットインして、1:52あたりからアーティストたちが絶命しはじめる。名前を書いた40秒後に心臓発作がおこるデスノート作中のルールを、ミュージックビデオの時間軸で再現しているのは芸が細かい。

屍から便所サンダルをはいたマキシマムザ亮君へと映像が移り、後半はホルモンが演奏する。上ちゃんの代名詞とも言えるスラップが炸裂しないところも「Dani California」(というか「By The Way」あたりから)との共通点として挙げられる。それでも、アグレッシヴさとキャッチーさを融合させたホルモンらしさは前面に出ている。

レッチリとデスノートの両方をなぞる時点で情報量が多いところ、さらにこの楽曲独自の主張として腐った邦楽シーンに一石を投じる。その意味では、温故知新な「Dani California」とは正反対になっている。

シーンの否定とは言っても、レッチリやTOOLへのリスペクトは前面に押し出しているし、否定すること自体が今やセックスピストルズのオマージュになってしまう。洋楽邦楽という切り口は不本意だろうけれど、映画「グローバルメタル」で人類学者のサムダン先生が「外から見ればV系もメタルの一種なのに、日本のメタラーはV系に厳しい」と言い当てたことを思い出す。

まとめ:芋づる式に広がるスキ

陰謀論っぽいこじつけもあるけれど、共通点と相違点をまとめると以下の通りになる。一見関係ない2バンドによる2曲に着目して、共通点や相違点を探すといろんな対比が見えてきて面白かった。

<共通点>
・デスノートで使用された曲
・様々なジャンルを象徴する演奏シーンが切り替わる
・後半ではいかにも本人らしい本人が登場
・ベーシストの得意技であるスラップ奏法は封印

<相違点>
・デスノートと独立して作られたか、曲に埋め込まれているか
・特定のアーティストを真似るか、漠然としたジャンルを指すか
・先人へのリスペクトか、音楽シーンの否定か

「こんな記事、誰が読むねん」と言う内容ながら、下調べをしているとスキが再燃することに気付く。スキなことをnoteに書くと、スキを増幅させる効果があるんだ。

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