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好きな本のデザインについて

Twitterで「#7日間ブックカバーチャレンジ」というタグを見つけた。名前の通り好きな本の画像を1日1枚、計7日間投稿しようという楽しそうな内容であった。私もやってみよう!と思ったが、「毎日SNSに画像を投稿する」という行為が急に億劫に思えてきた。医者から飲み切りですよと渡された薬を飲み切れたことがない私にそんなマメな真似ができるわけない。というか7冊紹介するのを一気にやれば結局同じでは?と元も子もない発想になったため、今回は好きな本の装丁について7冊、サクサクと紹介していきたい。

乙一『失はれる物語』

デザインは帆足英里子さん。出版は角川文庫。本を書いた人ではなく、本を作った人のことを考えるきっかけになった作品だ。乙一は勿論言うまでもなく大好き。

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五線譜の上にタイトルロゴが載り、ところどころに水滴が落とされ、ロゴが滲んだデザイン。私が所持している文庫版はハードカバーと表紙のデザインが同じもので、これはこれでとても美しいのだけど、ハードカバーは目次にも五線譜が印刷されていたりとより凝ったデザインになっていたので、いつか手に入れたいと思っている。

綾辻行人『暗闇の囁き』

色々な出版社から何度も改訂版が出ているけれど、私が好きなのは1994年に祥伝社から出たもの。表紙のイラストはきたのじゅんこさん。

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きたのじゅんこさんは水彩色鉛筆を使用して、天使など幻想的な作品を描くイラストレーターだ。本の内容のおどろおどろしさと表紙の透明感のミスマッチさが堪らない。この本にこのイラストを当てようと言い出した人に7億円をあげたい。本当にどなたなんだ。こういうミスマッチさは、何となく殺戮シーンでクラシックを流すのと似たような匂いを感じる。

西澤保彦『いつかふたりは二匹』

イラストはトリイツカサキノさん、ブックデザインは祖父江慎さん、出版は講談社。ただただにゃんこがかわいい。かわいいねえ。人はかわいいものを前にすると「かわいい」以外の言葉を失う。

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猫を前にして「かわいい」以外の言葉を発するなんて余りに蛇足だけど、これは講談社ミステリーランドという書籍レーベルの中の1冊だ。「かつて子どもだったあなたと少年少女のための――」というコンセプトで出版されたこのシリーズは、かつて子どもであった私の母親に刺さり、当時少女全盛期であった私にお勧めされたのであった。見事にコンセプトを体現した家庭である。そしてこのシリーズをいたくお気に召した私は、そのまま母親からぶん奪った。少女は強かなのだ。

全冊ハードカバー・箱入り・クロス装の作り手の気合が大変感じられるこのシリーズは、コレクター魂をこれでもかと刺激する。絶版になってしまっているため見つけるのも一苦労だが、じわじわと買い揃えているため、3年以内にはなんとかコンプリートしたい。

オルダス・ハクスリー『すばらしい新世界』

早川書房より2017年に発行された新訳版。訳は大森望さん、デザインは水戸部功さん。水戸部さんは多くの本を手掛けている方のため、本屋で見かけたことのある方も少なくないと思う。最近の有名作だと遠野遥『破局』が該当する。

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基本的に文字だけのシンプルな装丁が多い。私はデザインのデの字も知らないど素人なのだけど、文字だけでここまでインパクトを与えられるのはやっぱり素晴らしいと思う。SFやディストピアにイラストがつくと、それがイメージの膨らみに繋がることもあるが、かえって邪魔になることが私にとっては多いので、こういうシンプルでかっこいい装丁がもっと増えてほしい。

谷崎潤一郎『蓼喰う虫』

新潮文庫の谷崎作品といえば、日本画家である加山又造さんのデザインを使用したこの表紙である。『蓼喰う虫』以外も新潮文庫でいえば全てこのデザインのため、1番好きな本を選んだ。

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いや写真を撮るのが本当に下手だな。

私は所謂文豪と呼ばれる人の作品については、岩波文庫を買うことが比較的多いのだけど、谷崎に関しては新潮文庫が大半を占めている。多くの出版社が谷崎作品を売り出す中、新潮文庫の差別化しようと言う企業努力が気に入った。差別化しようとしてもたまに漫画家とコラボした表紙などを見かけるとげんなりしてしまう。それが悪いと言いたいのではなく、私にとっては世界観を壊されたと感じるのだ。その点この加山又造さんの作品の雰囲気と谷崎の耽美な世界観がとても合っているため、ここでも7億円を贈呈したいと思う。私本当に上から目線で何様なんだろう。

氷室冴子『シンデレラ迷宮』

1994年に集英社から発行された方について。これも絶版なので手に入ったのはほぼ奇跡。

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この本を選んだ理由は至ってシンプル、このイラストが大好き。なんだけれど私の検索能力が低いこともあり、この本のイラストと装丁を担当したのが「GEN’S WORKSHOP」という組織?ということしかいまいちよくわからない。作者のあとがきを見るに演劇関係の集団のようなんだけれど…。何か知っている方は良かったら教えてください。

恩田陸『薔薇の中の蛇』

講談社より出版されているシリーズ本で、このシリーズは全て北見隆さんがイラストを担当している。久しぶりにこのシリーズが発売されたことが嬉しくて帯がついたまま撮影してしまった。

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清々しいほど性格の悪いヒロイン・理瀬が登場するこちらはゴシックミステリとなっている。装丁する方もそのジャンルを意識して作成したんじゃないかと、タイトル周りの模様等から私は勝手に思っている。妙に目が死んでおり、首が奇妙に長い人物のイラストはホラーみを感じるが、不気味さの中に美しさが光る作品の良さを引き立てていると思うので、再度7億円を贈呈する。

余談だが理瀬の性格があまりに邪悪な件について、恩田陸がバーネット『秘密の花園』を読んで「これくらいヒロインの性格が悪くてもオッケーなのか」と納得したというインタビューを読んで腑に落ちた。いやオッケーなのかな。

おわり

たまにホラー小説で表紙がおどろおどろしすぎて部屋に置いておくのが怖くて買えないことがある。幼女だから。ところでマジモンの幼女だった頃、寝室にあった「日本探偵小説全集」のギョロ目の人形の背表紙は完全にトラウマである。作品の雰囲気を壊さないことは何より大事だが、ホラーに限ってはもう少し能天気なひよことかのイラストのものを出してくれれば良いのに。実現すればそれはそれで文句を垂れ流すと思うけど。



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