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踊る前にやるべき事

踊る事を始めて28年が経ち、もうすぐ30年。もちろん僕より長く踊ってらっしゃる方は大勢いるし、深く踊ってらっしゃる方も大勢いる事でしょう。
その方々の作った道を歩くのも踊り人生の歩み方ですが、誰もがそれを出来るわけもありませんし、せっかくだから大きく道を踏み外すのも面白いのではと思えるようになったのでこんな事を書いています。

■踊る前にやるべき事

自分が踊る事でこの社会にいる事に意味を求めようとか、認めてもらいたいとか、踊る事で多くの欲求が出てくるのは僕にとっては当然の事であり、現在もこれまでも、そしてこれからも向き合うべき感情の一つですね。
あくまではこれは個人的な思考であり、そうでなくとも踊りを楽しめる方も大勢います。
僕の『踊る』はあなたにとって何なのかに思考を巡らせながら読んで頂けたら嬉しいです。
踊る前にやるべきことは、自分と踊りが交わった時の事をひたすら思い出す事だとおもっています。そこが自分がいた踊のない社会と踊の交わったタイミングであり、踊りが僕に浸食した瞬間なんですね。
で、いつだったのかと思い出してみるのですが、やはりしっかりは覚えていないんですね。
ホームページでのプロフィールに記載しいる事は嘘ではないのですが、そのさらに奥に潜む踊りとの出会いがあるはずなんです。

熊谷拓明(Kumagai Hiroaki)
踊る「熊谷拓明」カンパニー主宰
チャップリンとイッセー尾形をこよなく愛する子供だった。週末には母親の派手なカーディガンを羽織り、リビングで祖父母にワンマンショーを繰り広げた幼少期を経て、15才で札幌ダンススタジオマインドにて恩師となる宏瀬賢二に出会う。実は安室奈美恵のコンサートにも出たし、ラスベガスでシルクドソレイユの舞台に850回出演した日々もある。
帰国してから創り始めた「ダンス劇」に誰よりも熱中し、踊る「熊谷拓明」カンパニーの全ての作品の作.演出.振付を行う。

踊る「熊谷拓明」カンパニーHPより。

■進みながら思い返す。

生きていますし、これからも踊りますから進む事は大切。
進むために戻って思考する事も必要で、何があったろう…
小学2年生の頃、お楽しみ回で戦隊ヒーローショーのマネごとのような事をやらせてもらった事があった。恥ずかしげもなく僕が主役、敵役を友だちがやってくれておそらく10分くらいのショー。
不思議と楽しさは覚えておらず、恥ずかしかった事を思い出す。
女の子との精神年齢差が圧倒的にひらいて来るこの時期に、お祭りで買ったヒーローのお面を被って、敵役の友達と即席のタテを繰り広げる中、お面の覗き穴から見える同級生の女の子の顔は引きつっていた。
なんの為にそこに立ち、どんな話の流れでそのショーが行われたのか、記憶はないが自分が望んだ事は確かな事であった。

■踊りに出会う寸前を探る

札幌で熊谷家の長男として産まれ、祖父母の家が近かったせいもあり溺愛されて育てられた記憶がある。
物心ついた頃、父親が会社から独立、
デザイン事務所を立ち上げる。
次第に社員の方が増え、母方の祖父母と母の姉との6人で住む家が建ち、父の事務所も併設され母は父の会社で働き始めた。
妹も産まれ、気付けば大人達の注目は僕ではなくそれぞれの人生になっていく事を子供ながらにきっと感じていたであろう。
幼稚園にいく事を強く拒み、小学校に行くまでは一人で妄想の中で生きている男の子だった。産まれた時のように大人にかまってほしくなると、一人時間に練習した歌や、作り話を披露するようになり。やはり祖父母は沢山の愛と拍手を与えてくれた。
仕事で疲れた母は何処か冷めたように僕のパフォーマンスを眺めていた記憶があり、これは僕が舞台に立つようになってからも変らない。小学校に入学してからもなかなか心が小学校に通わず、家で一人で遊び、時には妹を妄想に付き合わせ、祖父母の前でのパフォーマンスは続いた。そんな少年に母はテレビを録画したイッセー尾形の一人芝居や、古舘伊知郎のトーキングブルース、チャプリンの名作達の映像を与え仕事に向かった。一人テレビにかじりつき、汗だくで衣装を着換え様々な人になるイッセー尾形に心奪われ、汗だくでとてつもない滑舌で世間を風刺する古舘伊知郎に惚れて、言葉を使わずに身体全部で哀しいチャプリンに涙した。彼らがとてもとても羨ましかった。家族以外の大人達がこんな彼らに拍手を送っている事が羨ましかった。
家族でも、親戚でも、父の会社の社員の方でもない、何処にいるかわからない大人に僕もかまってほしかった。そんな少年が小学校3年生になり、父親がデザインの観点から観ておきたかった劇団四季のキャッツを一緒に観る。

熊谷辞典より。

■斜め45度の現実逃避

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