【楽曲紹介】俺にも歌わせろ

バンドの楽曲の中で、普段リードボーカルを担当していないバンドメンバーがリードボーカルをとる曲ってありますよね。
あれ、意外とファンの間では人気曲になったりするんですよね。
あれ、なんなんですかね。

というわけで、普段リードボーカルを担当していないメンバーがリードボーカルをとった曲を紹介します。
私の知る限りの曲の中から挙げていきますので、他にオススメがあったら教えていただけると嬉しいです。

なお、同じテーマの記事を他にもいくつか見つけましたが、被りがないように選曲してみました(他の記事を書かれている方ほど曲を知らないので被っていないだけ、ということもあるのですが)。


1.Yellow Submarine / The Beatles

初っ端からこれかよ!と思われた方。
お気持ちは分かります。
ただ、ツッコミの才能がありません。
他方、私には有名過ぎるこの曲の良さを改めてちゃんと伝えるだけの文才がありません。
よって、私の駄文は省略。
1つだけ言っておくとこの曲のリードボーカルはジョン・レノンでもポール・マッカートニーでもジョージ・ハリスンでもなく、リンゴ・スターです。

シンプルな曲ですが、じんわりと温かく楽しい気持ちになる、とても好きな曲です。


2.すてきなモリー / 毛皮のマリーズ

2011年に解散したバンド・毛皮のマリーズの楽曲。メジャーデビューアルバム『毛皮のマリーズ』に収録。

普段リードボーカルは志磨遼平さんですが、この曲はベースの栗本ヒロコさんがリードボーカルを担当。
大変失礼な言い方で申し訳ありませんが、栗本さんの歌、全然上手くはないんですけど不思議な魅力があるんですよね。
メロディ自体もそこまで起伏が激しいわけではないですが、栗本さんはそれ以上に淡々と歌われている印象。

歌詞は遊び人の男に騙された純朴な女性を描いたもので、「春を売った覚えなどないのに アレが全く来やしないわ」と結構な内容を言っています。
しかし、単調な歌い方とのコントラストと、ドラムのドタバタ感(この表現が適切かは分かりませんが。)によって、聞きやすいポップスになっていると感じました。

また、サビ(?)の部分、「ほどけた髪や折れたヒールも気にせず嵐の中を走り汽車に飛び乗る」という情景も、ドラマや映画のワンシーン、しかも緊張感のあるクライマックスのような場面です。
この部分についても、栗本さんの淡々とした歌によって、この情景の薄っぺらさ、この女性が自分に酔ってこういう行動に出てしまっていること、が強調され、女性の惨めさが演出されているように感じます。

作詞・作曲の志磨遼平さんによれば、当初は木村カエラさんが歌うパワーポップのイメージだったようですが、栗本さんの声質がイメージに合わず、プラン変更となったようです(※1)。

個人的にはこういう仕上がりになってかえって良かったんじゃないかと思います。
こちらも大好きな1曲。

※1:https://amp.natalie.mu/music/news/30476


3.声 / SCANDAL

SCANDALの4thオリジナル・アルバム『Queens are trumps -切り札はクイーン-』に収録されている楽曲。
SCANDALは比較的どのメンバーもボーカルを取る、The Beatlesやユニコーンのようなバンドですが、リードボーカルが多いのはHarunaさんだと思います。
その次くらいにTomomiさんがリードボーカルの曲や、2人のツインボーカル曲が多い印象(調べたわけではないので、間違ってたらすみません。)。
他方、この曲のリードボーカルはギターのMamiさんが担当されています。
作詞・作曲はSUPER BEAVERの柳沢亮太さん。

Mamiさんリードボーカルの曲は他にもいくつかありますが、やはり1番に挙がるのは『声』なんじゃないかと思います。

Mamiさんの声、個人的にめちゃくちゃ好きなんですよね。
女性ではあるんですが、少年のような声というんですかね。
若干がなりの入った硬めの声だと思いますが、程よく艶がある感じがめちゃくちゃカッコいい・・・。

何を隠そう私がSCANDALを好きになったのはこの曲がきっかけです。友人に見せてもらった10周年記念ライブのDVDで、この曲が演奏されていて無事に打ち抜かれました。

歌詞の面では、青過ぎる空、物質的に飽和した環境、いつも通りに振舞う自分の行動などの、日常性・何の問題もない自分の外部との対比により、欠乏感・欠落感を拭えない自分の内部が描かれています。
最終的には、その欠乏感・欠落感も受け入れて、昨日までの繰り返しのように思える「今日」に期待して歩いていく、と決意したことが語られています。

ちなみに、別の方の記事で、別れた恋人を想う歌とする解釈を見ました(※2)。
もっとも、私は、ラスサビの1まわし目の内容(特に「『わかるよ』って『嘘でしょ?』ってはぐらかして」の部分)が引っかかっていて、そういう歌だと解釈すると整合的に読めないように感じています。
この点はもう少し考えてみたいと思います。

※2:https://otokake.com/matome/i0veWc


4.Where did it all go wrong? / Oasis

はい。「ここに来てまたオウエイスィスかよ」と。
気持ちは分かります。でもツッコミの才能はないです。
あと「Don’t look back in anger」ではないので許してください。
ノエルがリードボーカルの曲もそれなりにあるので、この記事の主旨に沿っているか微妙ですが、良しとしましょう。

大学は出ていますが英語は苦手なので、歌詞の意味に関しては他の方の和訳をご参照ください。私が1番しっくり来たのはこちら(勝手に引用してすみません。)。

タイトルから明らかですが、過去を後悔している歌です。構成・表現も結構シンプル。

粘度の高いリアムの歌唱と異なり、ノエルの声や歌い方は力強い芯の周りに柔らかいものを纏わせている感じがします。
「Don’t look back in anger」もこの曲もそうですが、ノエルのこの声で、真っ直ぐ飛ばす感じのハイトーン部分の歌い方がとても好きです。

この曲のような、過去を後悔するダウナーな曲とも絶妙にマッチするんですよね。
私はOasisをしっかり追っていたわけではないのですが、おそらく日本では、この曲はファン以外にはあまり知られていないのではないでしょうか。
ぜひ聴いてほしい1曲だったので選曲。


5.Ben & Robin / DENIMS

大阪のインディーズバンド・DENIMSの1stフルアルバム『DENIMS』に収録されている楽曲。
普段リードボーカルは釜中健吾(かまなか けんご)さんですが、この曲はリードギターの岡本悠亮(おかもと ゆうすけ)さんがリードボーカルを担当。さらに作詞・作曲も岡本さんがされています。

ここに挙げた中だと一番知名度が低いかもしれませんが、本当に良い曲(&良いバンド&良いアルバム)です。
2010年代のベストソングを10曲挙げろと言われたら、私はこの曲を挙げるかもしれません。残り9曲は選出未了。

釜中さんの声は、若干ルーズさがある反面、素朴さと軽快さも併せ持つ特徴的な声なのですが、この曲を歌われている岡本さんの声は、より響きが豊かで、人肌のような温度感を感じます。

この曲の歌詞では、ある恋が終わってしまったときの「僕」の後悔や自責の念が描かれているのですが、各ブロックの最後が「つまんない映画だな」あるいは「つまんない」という言葉で締められています。
これは終わってしまった自分の恋を映画に例えている描写ですが、その恋が「つまらないものだった」とすることで、「終わってしまったことについて自分に非はない」と、自分を擁護している、あるいは自分から目を背けているようにも感じました。

もちろん「僕」としては、「肝心な場面になって火がつかない」「古い映画で使ってた錆びた銀のライター」のように、自分の不甲斐なさ・至らなさや、それによって恋が終わってしまったことを十分に認識しています。
「映画のように何度も巻き戻せないさ」と語るほど、恋を終わらせてしまったことの、取り返しのつかなさ・ままならなさを理解しています。

他方で、「僕らにはエンドロールも待ってはいないさ」とも語られています。
映画のエンドロールは、物語が終わったことを示すとともに、観客にその余韻を味わわせ、徐々に日常の世界へ戻す機能も有しているように思いますが、そんなエンドロールもない映画、突然終わり、もはや映画とさえ言えない代物のように、この恋が(例え自分のせいであるとしても)「僕」としては満足のいかない・後味の悪い・苛立ちを隠せないものであったことが窺えます。

自分の悪いところを十分に理解しているからこそ、そこから目を背けてしまうのが人間の性ではないかと思います。
そんな矛盾・葛藤や人間味が「つまんない映画だな」というシンプルな一言に凝縮されていて、それが岡本さんの人肌の温度感で歌われているからこそ、現実に生きている1人の人間の、リアリティのある言葉として届いてくるのではないかと思います。

ちなみに、この曲はシンプルなロックバラード的な楽曲(?)ですが、DENIMSの楽曲はソウル・ファンク等のブラック・ミュージック要素の強い曲が多く、とてもかっこいいので是非聴いてみてください!(宣伝)


今回は番外編はありません!
それでは。

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